蝶人物見遊山記 第257回
ワキ方、囃子方、狂言方の3役の若手の養成を行っている国立能楽堂が主催する第9期・第10期研修生の発表会に行ってまいりました。
演目は舞囃子の「松虫」「龍田」「海士」、狂言の「昆布売」、そして能「猩々」という盛沢山なプログラムでした。
まず金春流の「松虫」では、大鼓の音がちと喧しく、全体のバランスを乱していたようです。能楽には指揮者もコンサートマスターもいないので、こういう点は自分の耳で調整しないと、他の演者に迷惑をかけることになってしまいます。
喜多流の「龍田」では、シテの塩津圭介選手の舞が絶品。さすが父哲生師の薫陶を受けただけあってそれは見事なものでした。
観世流の「海士」では、笛の高村裕選手の演奏が耳に残っています。
狂言では、「武士ファースト」の時代にあって、その手前勝手なプライドを、小浜の昆布売りがコテンパンに逆ねじを食わせるという異色の作品「昆布売」を、上杉啓太、野村万之丞のご両人が、丁々発止と楽しく演じていました。
意外だったのはトリに置かれたメーンエベントの宝生流の「猩々」です。
まあどうしたことか、終始盛り上がりに欠け、しゃぼん玉が音もなく弾けるようにしょぼんと終わってしまったことですが、その他のプログラムはいつものように楽しめました。
能楽では鼓の演者が声を出す鼓の音より大きな声で 蝶人