照る日曇る日第1001回
堂々たる人生という副題がついているが、谷崎は文藝に対しても女性に対しても、人生の悦楽に対しても、他者との人間関係においてもまことに堂々とした79年の生涯を歩みきった男だったと納得させてくれる充実した評伝である。
いろいろな点で啓蒙されるが、ことに3度目の妻、松子に対してのように隷属したという神話は松子の都合のよいでっち上げであり、谷崎本人は妻となった女の凡庸さに愛想を尽かしていたという指摘はさもありなんと頷ける。
本書を読んでもよく分かるように、作家の人となりを知るためには書簡の解読が、大きな役割を果たす。
ところで私が持っている昭和43年刊行の旧全集の最終巻では、700通を越える書簡が掲載され読者の便に供しているのだが、今年刊行された全集では、本書で期待されていた谷崎の数多くの未発表書簡はもちろん、そもそも断簡を除いてまとまった書簡などまったく収録されなかった。
書簡はおろか主著の源氏物語の翻訳さえ収録しない最新版谷崎全集は、彼らが謳う「決定版」どころか、「中央公論社創業130周年」を記念するにまったくふさわしくない内容と言わざるを得ない。
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