あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

白井聰・望月衣塑子対談集「日本解体論」を読んで

2024-03-16 08:51:27 | Weblog

白井聰・望月衣塑子対談集「日本解体論」を読んで

 

照る日曇る日 第2027回 

 

いよいよ悪名高き帝国を解体する作戦に入ったのか、と胸を膨らませたのだが、あに諮らんや、腐敗と堕落の極に達した帝国の現状を嘆き、暗黒の未来を嘆く憤慨と絶望の書であった。

 

けれども、今や中途半端な右翼紙に堕した本体から、このようにまっとうな知識人による、まともな書籍を出せる新聞社は、右翼とファシスト全盛のこんにち、まことに貴重な存在とはいえるだろう。

 

面白かったのは20年前にロシアに留学していたという白井選手のロシア談義で、一時は闇タクの運転手をしていたプーチンが、なぜ権力中枢に呼ばれたか、とか、ソ連崩壊の経済危機を救ったからこそプーチンは支持されているとか、ロシアの現有戦力はたいしたものではない、とかの具体的な指摘は興味深い。

 

春闘とは資本の大判振る舞いか果報を寝て待つ組合ダラ幹 蝶人

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青木由弥子著「伊東静雄―戦時下の抒情」を読んで

2024-03-15 10:48:26 | Weblog

 

照る日曇る日 第2026回 

 

伊東静雄は我が国を代表する抒情詩人で、生前「わが人に与ふる哀歌」「夏花」「春のいそぎ」「反響」の4冊の詩集を刊行したが、惜しいかな47歳の若さで亡くなってしまった。

 

彼は明治39年生まれだが、同年生まれの有名人には、詩人の永瀬清子、作家の坂口安吾やベケット、俳優の杉村春子、出版人の古田晃、舞踏家の大野一雄、実業家のオナシス、政治家の西園寺公一などがいるので、それを思って、「なんとか2つでも3つでも長生きしてもらいたかったなあ」、としばし慨嘆したことだった。

 

でも私にとって伊東静雄は、青春時代にちらりと袖振りあった路傍の縁者にすぎず、彼の代表作である「わがひとに與ふる哀歌」の冒頭の「太陽は美しく輝き/あるひは 太陽の美しく輝くことを希ひ」や、「曠野の歌」の「わが死せむ美しき日のために/連嶺の夢想よ!汝が白雪を/消さずあれ」とか、「水中花」の末尾の「すべてのものは吾にむかひて/死ねといふ、/わが水無月のなどかくはうつくしき。」、「なかぞらのいづこより」の冒頭の「なかぞらのいづこより吹くきくる風ならむ/わが家の屋根もひかりをらむ」、「送別」の「うつくしきうた 残しつつ/南をさしてゆきにけるかな」などの名作の、ほんの一節に接しただけで、「嗚呼、なんてカッコいいんだろう!」と感嘆していただけの軽佻浮薄な読者だった。

 

本書は私が初めて読んだ、伊東静雄の人と作品にがっぷり四つに取り組んだ作品論&評伝であり、そのお陰で彼の妻君を含めた女性との付き合い方や、戦争詩の問題点、同時代の保田輿重郎、薄田善明、中原中也、立原道造などの文学者との交流について多くを知ることができて感謝している。

 

それにしても自分なりの疾風怒濤の時代に、伊東静雄と出会った感触を今にして振り返るなら、あれらの詩句は、日本語で書かれた黙示録であり、雅歌であり、箴言であったと思う。

 

彼はバイブルを愛読していたというが、彼がダビデの22篇に倣って、

「わが神わが神なんぞ我をすてたまふや/何なれば遠く離れて我をすくわずわが歎きのこえをきき給はざるか/ああわが神われ昼よはばれども汝こたへたまわず/夜よはばれどもわれ平安をえず」

という詩編を綴ったとして、私たちは驚かないだろう。

 

誰にせよ至福の時はあるものよ大谷夫妻よ今を楽しめ 蝶人

 

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西暦2024年弥生蝶人映画劇場 その3

2024-03-13 15:25:54 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3559~63

 

1)トム・シャドヤック監督の「パッチ・アダムス」

実在の医師の「人に優しいケア」のあり方をロビン・ウィリアムズが1998年に好演。

 

2)「チャタレイ夫人の恋人」

2015年の英国BBC製作映画で、なかなか見応えがある。

 

3)マイケル・パウエル監督の「黒水仙」

デボラカー主演の1947年の修道女物語。修道院が物凄く辺鄙なアルプスの麓にあるので驚く。

 

4)ルネ・クレール監督の「ル・ミリオン」

宝くじに当たった貧乏画家をめぐる1931年の面白おかしいお仏蘭西コメディ映画。

 

5)ティモシー・リン・ヴィ監督の「エディ・レッドメイン アンダーテイカー」

エディ・レッドメイン、フォレスト・ウィテカー、ボビー・シュワルツ、ジェシカ・ビールの競演による2009年の人世色々映画。

 

  2度3度制限時間を前にしてステップを踏む熱海富士が好き 蝶人

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその6

2024-03-12 10:01:33 | Weblog

「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその6

 

遥かな昔、遠い所で 第123回

第6話 弟の更生 その2

 

さて私の弟は、メジロ獲りが上手で、メジロを売って儲けた十銭だかの金を、後生大事にこの時の京都へ持っていったものだ。

弟はこのチリメン問屋に三、四年くらいいたと思うが、「アメリカに行きたい」と言って、英語の独習などをやっていたが、ついに主家にひまを貰い、神戸に行って奉公した。

渡米の機会を狙っていたものらしい。

 

それから朝鮮の仁川に行こうと密航を企てたのだが、発見され、仁川で降ろされた、ということだった。仁川では、日本人の店に勤めて、なかなか重用されていたようだが、その後徴兵検査で内地に帰り、福知山の20連隊に入営した。

 

明治四十四年に退営後、福知山の長町筋に家を買い、嫁も貰ってなかなか盛大にメリヤス雑貨の卸問屋をやっていたが、その資金などをどうしたものかは分からない。

その頃の私の家は、相変わらず貧乏だったはずだが、父はトコトンまで貧乏するかと思うと、不意にまた儲けて盛り返し、七転び八起きしたもんだから、あるいは調子の好い時、弟に相当の資金を与えたのかもしれない。

 

ところが弟は女房運が悪く、初めの嫁は離縁し、二度目の嫁には病死され、それに腐ってひどい道楽者になり、芸者の総揚げなどという身分不相応の大大尽遊びなどをやって、とうとう福知山で食いつぶしてしまい、京都へ出て西陣の松尾という大きなメリヤス問屋の番頭に住みこみ、そこで好成績をあげて主家に信頼され、間もなく自立して同商売の店を持ち、なかなか好いところまでやっていたのであるが、またもや酒食に身を持ち崩し、手形の不渡りなどで度々窮地に陥り、そのたびに私のところへ無心にきた。

 

その都度私には内々で、妻がだいぶ貢いだものだが、結局京都の店は持ち切れず、東京に逃げ、ここでも一応成功していた風だが、大正十二年の大震災で焼け出され、一時は人力車夫までやったようだ。

 

それから大阪に帰り、親戚をたよって、今度はお家芸の下駄屋の夜店を出し、少し儲かったので、手慣れたメリヤス雑貨にかわり、ここで嫁を貰って、今度は堅気になるかと思ったら、また性懲りもなく道楽をはじめ、商売もめちゃめちゃになり、手形の不渡りなどでだいぶ好くないことをやったとみえて、警察から綾部の私の家へ弟のことを尋ねてきたりして、ひどく心配したものだ。

 

その時父の病が篤く、電報で知らせたのだが、なかなか帰ってこない。

ようやく帰ってきて臨終に間に合ったが、これがまた隠岐から帰った時の父同様、着の身着のままのみすぼらしい姿だった。

後で聞けば帰ろうにも旅費の工面がつかず、河内の方まで行って、友だちに帯を借り、これを質に入れて旅費を作って帰ってきたということだった。

 

葬式の時は、幸い私が夏と冬のモーニングを作っていたから、夏の分を弟に着せ、ちょうど四月の花時分だったので、どうにか恰好がついたのであった。

 

ニッポンも文化放送も一つ穴フジサンケイの右翼メディアよ 蝶人

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西暦2024年弥生蝶人映画劇場 その2

2024-03-11 09:49:24 | Weblog

西暦2024年弥生蝶人映画劇場 その2

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3554~58

 

1)ペラ・コーゲルマン監督の「アニアーラ」

汚染された地球を逃れて火星へ移住する8千人を乗せた宇宙船が事故で遭難し、こと座方向へ迷走する中で起こる2018年の悲喜こもごもSF。

 

2)パスカル・ボルドー監督の「ラスト・クライム」

ジャン・レノ主演の2018年の親子チームによる現金強奪コメディだが、あまり面白くはない。

 

3)チャン・イーモウ監督の「活きる」

1994年の中国映画。1940年代から現代にいたる或る家族の暮らしと政治と人間模様を鮮やかに切り取る手腕は見事。「影絵人形芝居」が重要な役割を果たしている。

 

4)チャン・イーモウ監督の「英雄」

秦の始皇帝とその暗殺者を描いた2003年の歴史ドラマなり。

 

5)チャン・イーモウ監督の「サンザシの樹の下で」

文化大革命の下放で知り合い愛し合うようになった2010年の純愛映画。されど白血病で男を死なせるとはなあ。

 

理想などこの際明後日に置いといてよりましな党に一票入れよう 蝶人

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「祖父佐々木小太郎半生記」~佐々木小太郎古稀記念口述・村島渚編記「身の上ばなし」よりその6

2024-03-10 13:08:32 | Weblog

 

遥かな昔、遠い所で 第122回

第6話 弟の更生 その1

 

私には金三郎という、たった一人の弟があった。この弟が十三、私が十七の時、忘れられぬ思い出話がある。

 

その時、私は蚕糸講習所を卒業したばかり、弟はまだ小学校在学中だったが、家は貧窮のどん底に落ちてしまったので、弟は学校をやめさせて京都へ奉公に出すことにし、私が連れて行った。

 

京都へ着くと、丹波宿の十二屋に落ち着いてから、程遠からぬ東洞院佛光寺の下村という縮緬屋に弟を連れていき、私はその夜十二屋に泊まり、朝発って帰ろうとすると、弟が帰って来て「もう奉公には行かん。兄さんと一緒に綾部へ帰る」というのだ。

 

私はそれをいろいろとなだめすかして、主家下村へ連れていき、家の人にもよく頼んで、逃げるようにしていったん十二屋へ戻ったが、何だか弟が後を追ってくるような気がするので、それをかわすつもりで、知りもしない違った道を北へ向かって走っていくと、大変な人混みの中へ出てしまった。

 

それは北野の天神さんの千年祭の万燈会のにぎわいだったのだが、少しブラブラして道を尋ねて桂へ出、丹波街道を園部へ向かって歩いた。

 

私は家を出る時、少しばかりの旅費しか貰わなんだので、一文の無駄遣いをしたわけでもないのに、この時財布に十二銭しかなく、これでは昼飯を食ったら今夜の泊まり銭がなくなるので、昼抜きのまま、とうとう園部にたどり着いて、来がけにも泊まったかいち屋という宿屋に泊まった。

 

十二銭では、まともな泊まり方はできない。

私は、「胃病だから晩飯は食べない」と言って直ちに床に入って寝た。

裏を流れている川の瀬音が、昼飯も晩飯も食べないスキハラにひびいいて、なかなか寝付かれなかったその夜の情けなさが、今も忘れられぬ。

 

朝は宿屋がお粥を炊いて、梅干を添えて出してくれた。

それを残らず食べて宿賃十銭を払うとあとは二銭。宿屋が新しいわらじを出してくれたのを、「そこまで出ると下駄を預けてあるから」と言って裸足で宿を出、道々落ちわらじを拾って、はいては歩いた。

 

昼頃になると、朝のお粥腹がペコペコに減ってきたので、いろいろ考えた挙句、寂しい村のある百姓家に入り、「昼飯を食べ損なって困っているから、何か食べさせてください」と頼むと、米粒の見えないような大麦飯にタクワン漬を副えて出してくれた。

 

私はそれを食べ、最後の二銭をお礼に置いて、一文無しになって明け方川合の大原に着いた。大原には貧しからぬ父の生家がある。そこで出してもらったお節句の菱餅をイロリで焼く間ももどかしく、まるで狐つきのように貪り食い、そのまま道端で寝込んでしまった。

 

憲法の九条を胸に抱きしめてこの世の坂をゆるゆる下る 蝶人

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ジークムント・フロイト著「精神分析入門講義 上」を読んで

2024-03-09 14:15:10 | Weblog

ジークムント・フロイト著「精神分析入門講義 上」を読んで

 

照る日曇る日 第2025回 

 

久し振りに超苦手なフロイトを読んでみる。

 

精神医学の世界は、身体医学に基づく正統精神医学と、心の世界に拠る力動精神医学に二分されるそうだが、どうやら後者の元祖がフロイト選手らしい。

 

本書は、私のように精神医学の西も東も分からない初心者を対象に行われた講演会の講義録なのだが、外面はいかにも優しそうだが、読んでいくと、すぐに西か東か、嘘か眞かよく分からない物言いにぶつかって、はてさてどうしたものか、といつもの判断停止の状態に陥ってしまう。

 

それで今回は第一部の「失錯行為」をパスして、何十年も毎晩睡眠を中断して記録している夢日記の実績?を踏まえて、第二部の「夢」の巻から読み出したのよ。

 

ところが第5講で「私たちは夢とは睡眠を妨げる刺激への反応である」となかなか渋い結論を宣言しながら、第6講では素知らぬ顔をして「私たちは夢は身体的な現象ではなく、心的な現象である」と勝手に仮定し、以下はこの仮定を勝手に既成事実であるかのようにあれこれ楽しく話を転がしていく。これがフロイト選手のいつもの手口だ。

 

けれども私の乏しい経験では、夢は心的現象である以前に身体的現象で、例えば前立腺肥大症に加えて頻尿で一晩に3、4回トイレに行かざるを得ない私が見る夢は、膀胱が尿を溜め込んでいく分量に応じてその内容が変化していくことをこの身で知っているし、83歳まで長生きしたフロイトだって思い知らされた違いない。

 

フロイト選手はウィーンの裕福なクライアントに夢判断に基づくあれやこれやのカウンセリングを施したが、その大半が非科学的で的外れな診断であることは、例えば安田徳太郎が訳した角川文庫版「精神分析入門」の解説を読めば分かるだろう。

 

じゃによって、私としては、読んで無類に面白いけれど、学者としては羊頭狗肉、三百代言、曲学阿世の徒であるフロイト選手の夢占いよりも、「夢は第2の人世」であると断じたおふらんすの詩人のほうに軍配を上げたくなるのである。

 

男根をえいやっとちょん切りカストラート天使の声を獲得したり 蝶人

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吉本隆明著「フランシス子」を読んで 

2024-03-08 13:49:45 | Weblog

照る日曇る日 第2024回 

 

著者のおそらく生前最後の作品で、フランシス子という名の愛猫の思い出から始まり、村上一郎、親鸞、ホトトギスの話などが夢遊病者のうわごとか、彼岸と此岸を往還する未来の予言者の託宣のようにとぎれとぎれに放射される、どことなく不可思議な本である。

 

名猫を飼うと、その猫がまるで「合わせ鏡」のような自分の分身になってしまうらしいが、私は犬しか飼ったことがないので、その感覚は分からないし、あまり分かりたいとも思わない。

 

京に戻る前の親鸞が、房総半島の先端に行き、外房と内房のふたつの海流があわさって渦潮になっているところを見た、という話は初めて聞いた。

 

ホトトギスも妙な話で、長い間その鳴き声を聞いたことがなかったので、「ホトトギスは実在しない」と決めこんでいたのだが、生涯の最後になって初めて聞いたので、「すごいなあ。いやあ、はじめてだなあ。ホトトギスはいるんだね」というところで本書は終わっている。

 

そういう不思議な本ではあるが、長女ハルノ宵子のあとがきと、巻頭を飾っている著者の笑顔の写真に心が洗われる遺著である。

 

憎たらしきは台湾リスとガビチョウよ在来種をみなジェノサイドする 蝶人

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ハルノ宵子著「隆明だもの」を読んで

2024-03-07 14:25:23 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第2023回 

 

現在晶文社から刊行されている「吉本隆明全集」の月報で連載されていた長女宵子さんのエッセイを1冊にまとめたもので、一番の身内ならではの情報や鋭い観察が満載されている。

 

吉本夫妻はずっと鴛鴦のように円満と勝手に考えていたのだが、離婚寸前の大喧嘩もあったらしい。まあそれは、どこの夫婦でもある噺といえばそれまでだが。

 

創作を絶って家庭の妻になった伴侶だったが、晩年になって2つの句集を世に出したところ、夫のほうでは見向きもしなかった。でもある日、同人誌の作品を目にした夫が「フウン、お母ちゃんもいっぱしの俳人になったじゃないか」といった瞬間、彼女の顔がパッと輝いた。

 

でも、生涯のリベンジを果たしたその日を境に、「彼女の中で何かが壊れていった」、とみる作者の眼は、恐ろしいまでに研ぎ澄まされている。

 

1996年の溺死寸前事件のあと、隆明老人は次第に精彩を欠くようになる。

ボケが進んで身内にまで「共産党のシンパ」なるレッテルを張る妄想が頻発し、家の中を這って歩くようになり、ある日、自死を覚悟で玄関を出る。

 

そんな老いさらばえた父親の姿を、淡々と書き連ねる作者は、表現者として凄いと思うが、もっと凄いのは、彼女が漫画家としての洋々たる未来をかなぐり棄てて、敢然と両親の介護を引き受けた、親譲りの義侠の精神だと思うのである。

 

巻末では、母親からにじみ出す「圧」の猛烈な強烈さについて、姉妹がこもごも語っていて興味深いが、家から一目散に逃げだした妹の吉本ばななに比べて、逃げるに逃げられず、堪えに耐えた、本書の作者である姉は偉いなあ、とまた思うのである。

 

憎たらしきは中国製テレビ「ハイセンス」主電源を切るスイッチがない 蝶人

 

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西暦2024年弥生蝶人映画劇場 その1

2024-03-06 09:59:58 | Weblog

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3549~53

 

1)アンドレ・テシネ監督の「愛しすぎた男」

カトリーヌ・ドヌーヴ主演のニースのカジノを舞台にした2014年の犯罪映画。

 

2)ヴァロ・トゥームラ監督の「妄想」

2016年の訳が分からないエストニア製の妄想映画ずら。

 

 

3)アリ・アスター監督の「ミッドサマー」

お気楽学生たちがスエーデン研修旅行に行き新興宗教団体に殺される2019年の気狂い映画。

 

キム・ソンジェ監督の「国選弁護人ユン・ジンウォン」

実話に基づきユン・ジサンが主演する2015年韓国の法廷闘争映画。

 

4)パク・インジェ監督の「ザ・メイヤー」

ソウル市長選挙をめぐって繰り広げられるチェ・ミンシク主演2017年の韓国の政治的暗闘映画。

 

5)マックス・ノセック監督の「犯罪王ディリンジャー」

最後は哀しいご存じディリンジャーの1945年の自伝映画。

 

「あらあんた近頃シニョレに似てきたね」とドルレアックの轆轤首がいう 蝶人

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家族の会話~親子の対話 その105

2024-03-05 13:14:47 | Weblog

2023年12月

 

お父さん、録画してくれた?

したよ。バッチリ録画したよ。

ハ、ハイ。

 

オクラ、にゅるにゅるですお。

そうだね、にゅるにゅるだね。

 

ちなみに、ってなに?

じっさいのところ、よ。

アベヒロシ、ちなみに、っていいましたよ。

 

お母さん、今年年越しそば食べますよ。

食べましょうね。

 

コウ君、今年なにどしだったっけ?

ウサギですお。

来年は、なに年?

クマ年ですお。

クマ年かあ!

 

お母さん、ほんまにって、なに?

ほんとうに、のことよ。

 

お母さん、寝てくださいね。

分かりました。

 

お母さん、良くなってね。

だいぶ良くなりましたよ。

 

お父さん、録画した?

したよ。

DVDにしてくださいね。

するよ。

 

イエヤス、国のことでしょう?

そうね、国のことをやったのね。

 

ぼくマツモトジュン、すきですお。

そうなんだ。

 

コウ君と床屋へ行けば昼寝するここは安心できる場所なんだ 蝶人

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夢は第2の人世である 第134回

2024-03-04 09:56:06 | Weblog

 

西暦2023年霜月蝶人酔生夢死夢百夜

 

2023年11月

 

大恩ある大親分を逃亡させるどころか、おらっち自身が逮捕されてしまうという最悪の事態に陥り、おらっち激しく後悔したのだが、後の祭りだった。11/1

 

EUDころ60を丘の上から犯久で落下させ、イタリア平にケアとうさせたのよ。11/2

 

イスラエルのミサイルが飛んできて、あたいの家を家族丸ごと爆破したが、あたいだけは生き残って、瓦礫の山の底から這い出てきたのよ。11/3

 

「さあ、これがトヨタの最新力作だあ」というて、ハイブリッド車を薦められたが、それが今や世界の最前線にある電気自動車からいかに時代遅れの代物であるかが、てんで分っていないようだった。11/4

 

今夜のコンサートが終了したあと、解散する人の流れが分かったので、明日は各種演奏会のチラシを満載したキオスクを、要所要所に配置しようと思った。11/5

 

世界中の山々を征服したそのアルピニストは、帰国するとタデシナ高原の麓に隠遁し、ついに征服できなかった若い娘と暮らしているそうだ。11/6

 

なんせ右翼放送局の肝入りでできた映画なので、スクリーンのところどころでその肝を見せつけると、観客衆は、そのエグイ醜さと悪臭に、思わずのけぞるのだった。11/7

 

上司がねえ、まっことくだらんことばっかりいいくさるので、ドタマにきたおらっちは、そいつをぶっ殺してしもうたが、あまりいい気持にはなれんかったずら。11/8

 

「こんにちは、イデです!」という野太い声がしたので、「え、あのイデ君が我が家に顔を出したのかあ」と驚いて、階段を駆け下りて玄関口をのぞいてみたのだが、イデ君の影も形も見えなかった。11/9

 

おらっちが、車に乗せられて警察へ向かう途中、対向車に乗っていた黒犬が、窓から窓へ飛び移って、おらっちの顔を、ペロペロ舐めまくるので参ったずら。11/10

 

昼飯を息子と一緒に食べようとソバ屋で1時間近く待っていたが、まだ順番が来ない。ふと思い出したのは、息子はソバなんか好きでもないし、もしかすると出されても食べないかもしれない。最初から豚カツ屋に行けばよかったと激しく悔んでいる。11/11

 

その人と話していると、その人も、この世ではもう二度と私と会うことはないだろう、と思いながら話していることが分って、なんだか悲しくなってしまった。11/12

 

アメリカ移民300ドルが終わると、自動的にチンと日付が変わって、音メタ的に大音量の太鼓が鳴る、というさいしんしきシステムだった。11/13

 

グリュミオーとハスキルがモザールの後期ソナタを演奏するというので、久し振りにサントリーホールにいったら、カザルス、コルトー、フルトヴェングラー、ワルター、クレンペラー、新しいところではグールドやクライバーまで聴衆席に収まりかえっていたので驚いた。11/14

 

不人気の異次元内閣が、とんぷく薬局のお薬手帳で、ポイントが溜まると、全員アロハでハワイ旅行に行けるようにしたので、とんぷく薬局だけは、大繁盛だ。11/15

 

おらっちは「3月6日の武装蜂起は占い師が験が悪いというから、4月1日にしよう」と説いたのだが、仲間たちは「いやそれは4月バカみたいだから断固3・6にする」と言い張って決行したところ、案の定失敗に終わったのよ。11/16

 

脳味噌の塩梅が悪いので、いつもの脳外科にいったら早速いつものように開頭して「こいつのせいでアセラル効果が減退したんでしょう。全部切除しときましたから、すぐに良くなるでしょう」と明言したのだが、半年経っても良くならないのはなぜだろう。11/17

 

山陰本線の綾部駅を降りると、タクシーが停まっていなかったので、駅前から西町商店街を通って、西本町25番地の「てらこ」下駄屋に着いたが、誰もいなかった。11/18

 

カーペンターズから招かれ、楽隊かと思って加盟したら、これが大工の組合で、壊れた煉瓦塀の体積を計算することが、中学時代と同様全く出来ないおのれに気づいて、「やっぱし駄目なんだあ」と絶望して、カーペンターズを辞めたのよ。11/19

 

紅楼夢に出てくるような、女のような、男のような、子どものような、チャイナドレスを着た纏足娘を、踏んだり蹴ったりして、いたぶっていたら、急に吐き気がして、やめざるを得なくなった。11/20

 

ここは南米のどこかなのだが、大平原に無数の灰色の鳥が歩き回っているようだが、おらっちはその名を知らないし、知りたくもないずら。11/21

 

横長のテーブルの真ん中に座らされて食事をしている。右には大好きな女の子がいるのだが、左は大嫌いな上司だ。ステーキを喰っている最中に、お腹が痛くなってきたので、早くトイレに行きたいと思うのだが、まっこと難儀なことになったずら。11/21

 

「コハコナラズ」という言葉が乱発されるのだが、その意味が分らないので迷惑だ。「子は子ならず」だろうか? 「孤は孤ならず」だろうか? それとも「こはこならず!」なのだろうか?11/22

 

鎌倉に早く帰りつかなければならないので、気ばかり焦る。見知らぬ駅に、平戸橋行とかいうバスが停まっていたので、思い切って乗ってみたのだが、運転手も乗客もいないので、どっち方面に行くのか、さっぱり分からない。11/23

 

我が軍営を視察に訪れたパナナン大将は、まっさきに便所の中に入ってのだが、その汚らしさに鼻をつまみながら、「トイレをきれにしない軍隊が、敵に勝ったためしはない!」と、大声で訓示を垂れ始めたのでした。11/24

 

玄関で話声が聞こえるので、急いで2階から降りてみると、丸坊図のジョージの後ろ姿がちらっと見えたので、「ジョージ、ジョージ!」と叫んだのだが、気づかずに行ってしまった。残念なことをした。11/25

 

ある夏の日の朝、突然、あらゆる交通機関が停まってしまった。

大勢の人が職場へ行こうとしても、電車もバスもタクシーも動いていないのでどうしようもない。その結果、国民の大半が丸一日自宅待機の状態になってしまったが、このことについて当局からの発表は何もなくマスコミも何も伝えない。11/26

 

人々は疑心暗鬼に駆られながら眠れない夜をすごしたのだが、夜が明け、翌朝になっても事態は何も変わらず、電車もバスもタクシーもまったく動いていない。11/26

 

ここ首都圏から少し離れた海辺の旅館では、朝から宿泊客たちが大広間に集まって、三々五々ああでもないこうでもない、と口々に自分の意見を述べるのだが、相変わらず確かな情報はどこにもない。

 

旅籠のおかみの老婆が、勘定場から出てきて、最新の国連情報を披露したが、その中にも今回の事件に触れた発表は何もなかった。

 

すると、なぜかおらっちの弟の善チャンが出てきて、母の愛子さんから聞いた話を始めたので、何か重大発表かと思ったみんなが耳を澄ませると、案に相違してこんな昔話だった。

今からおおよそ半世紀前の昔、夏場は臨海学校だったその旅籠に連れてきた中津川のおばさんは、まだ幼かった愛子さんに「早寝早起きせんといかんで」と言い含めたそうだ。11/25

 

あたしは海風の中に塩のにおいを感じた。うず高く積まれた塩浜の丘の上に立つと、空の上に2つの鯱鉾が浮かんでいたが、それがバッハの2挺のヴァイオリンのための協奏曲を演奏しているのだった。11/26

 

昨日はクロネコヤマトの人に助けてもらったのだが、今朝はそのクロネコの車が別のクロネコの車とバス停の傍で衝突していて、昨日の親切な運転手が車の下敷きになって血塗れで苦しんでいるので、おらっちはなんとか恩返しをしようとケータイを取り出したが救急車の番号が分らないのだ。11/27

 

リーマンたちは、みながみな別人AIを所有していて、午後5時に退社すると、それから後はその別人AIが残業したり、有楽町のガード下でいっぱいやったり、AI同士で新年会や忘年会に出たりするのだった。11/28

 

昔の映画をみていたら、銅山が出てきたので、「あ、銅山だあ!」と叫んだら、「違う、象だ、だ。象山だ」というて佐久間象山が現れた。11/29

 

昼過ぎにみすぼらしい男の子が迷いこんできたので、仲良く一緒にマツボックリ遊びしたのだが、「キミ、どこから来たの?」と訊ねると、「御成から」という。彼の父親がモーリタニアの女性と再婚して、3人で死んでいると言うので、家まで送っていくことにした。11/30

 

頼まれた原稿に、どうも現世秩序と権門の禁威に触れる文言があったようで、編集者が気にしているようだが、それらの空気に忖度して、早手回しに原文の修正や削除を申し出ようとするおのれの醜さを恥じて、じっと沈黙しているところだ。11/30

 

―NHK「ブラタモリ・京都東寺編」をみて

平安の京の西寺の講堂のタモリの手に乗る瓦礫の朱のいろ 蝶人

 

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すべての言葉は通り過ぎてゆく第125回

2024-03-03 08:43:30 | Weblog

すべての言葉は通り過ぎてゆく第125回

 

西暦2024年如月蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第423回

 

裏金を貰った連中が、依然として偉そうな顔をして国民の代表者を僭称しているようだが、ケイサツは死んだキリシマ選手に夢中で、なんでこおゆう犯罪者どもを即牢屋にぶち込まないんだろうね。2/1

 

秀作、傑作ばかりの詩集や短歌集ほどつまらないものはない。例えば中原中也や正岡子規の全集には習作、駄作の類がどっさり含まれているからこそ、我々は心安らかに手に取ることができるのだ。2/2

 

私の632ページもある詩歌全集を、隅から隅まで全部読んだというお便りを、2名の方から頂いた。よって以て瞑すべし。瞑すべし。2/3

 

昨日のイラン戦は明らかに「戦略ゼロの日本チーム」の順当負け。後半から守備陣を全とっかえしていれば、負けなかったかもしれなかったが、かといって点が獲れたとも思えない。2/4

 

私のように広告畑でコピーライターをやった人間が、芸術文化について何か書こうとすると、どうしても商業的な臭みのする軽薄な文章になってしまうのは哀しい性とでもいうべき哉。2/5

 

前橋でできたことがなんで京都でできない? そもそも立憲がジミンではなく共産党と組んでいたら、京都市長選でも勝てたのではないだろうか。2/6

 

厚労省は、障害福祉に携わる人々の賃金を、24年度に2.5%(月7500円)、25年度に2%(月6千円)アップすることを目指すんだと。んで、全産業平均より6万円以上低い格差は、どんだけ是正されるんかいな。2/7

 

「万葉集」の大きな魅力は、混沌の魅力だ。全体の統合力が弱いだけに部分部分が力を持ち、部分と部分が時に整合的に、時に不整合に、場合によっては真っ向から対立しつつ結びつくのが面白く感じられる。長谷川宏「日本精神史」2/8

 

日産はキムタクを使って「やっちゃえNISSAN」なるキャンペーンをまだやっているようだが、いい加減にしたらどうか。そこそもこれは阿呆莫迦コピーライターが、ジャニー喜多川の口癖だった「ユー、やっちゃいなよ」から引用した阿呆莫迦キャッチフレーズなのだから。2/9

 

哀悼、小澤征爾命終88歳。彼がブザンソンで優勝して、トロント響、サンフランシスコ響で武満などを振っていた頃の音楽がいちばん良かった。2/10

 

小澤征爾を悼む村上春樹の文章。医者に止められているのに小澤が大食して斃れたり、ウィーンの街角で辻音楽師といつまでもだべっている姿に、自由気儘に音楽を奏でたい子供のような魂を見出だす作家の眼の確かさを感じる。2/11

 

見ることは思考をもするが、感覚器官の眼としては何の空想力も持たず、ただ事物の形象を網膜に映すだけなのである。意志なくして見れば何も見えないし、意識を持って見れば何かが見える。それを夥しい映像文化の中における個々の現実性の追求の過程で思考したいと私は思っている。鴫剛(「みづゑ」1974年)2/12

 

この節は母体の出生前検査が盛大に行われ、生まれてくる子供にダウン症などの障害があると診断された場合、生まれる前に堕胎してしまうことが多いそうだ。立派な殺人である。2/13

 

ゆえに私なら子供を天与の存在とみなし、多少の障害があっても甘受して育てようと決意するだろう。ではもし胎児が、ふためとみられぬ化け物のような姿かたちで、通常の人間なら備えている心や知性や精神を持たない、いわば「非人間的な人間」だったらどうだろうか?2/14

 

それをしも「天与の恵」と嘉して受け止め、顔色一つ変えずに生ましめるか?と問われたら、「いやあさすがにそこまでは」と大いにひるんで、生まれてきた命に涙を呑んで引導を渡すに違いない。2/15

 

人間の「爬虫類の脳」が、勝手に命を選別し、この世の都合に適合できる価値ある命だけを残して、それが不可能と考えられる無価値な命を抹殺する優性思想の母体が、ここである。古今東西、誰にでもある優性思想の最新版である。2/16

 

我々はこの優性思想というやつに、表向きでは大反対をして頭の中から追い出そうとするのだが、うまくいったためしがない。よしんば頭の中で陶冶してやっと外に追い出しても、そいつは本能の奥底にがん細胞のように沁みついているので、絶対に摘出できないのである。2/17

 

できることといえば、それはそういうものだと諦めて、それと全面的には戦おうとせず、まるごと受け入れるしかない。頭ではお経のように絶対反対を唱えつつ、決して賛成する訳ではないが、またもっともらしく公言する訳でもないが、万やむを得ず、最小範囲で受け入れるしかない。2/18

 

今やウクライナでもガザでも、戦争はミサイルや無人機やドローンで戦われている。人殺しの手段が人造機械だからというて、殺人行為が帳消しになるわけがないが、殺戮現場に身を晒さないことが、幽かな免罪符になっているのだろう。2/19

 

「私には、日常的な現実を、写真的視角という限定の中で捉えたいという欲求と、物質的には写真ではない写真もどきを造りたい希望や、写真が絵になり、絵が写真になりという行為の連続で、見る行為の曖昧さを作品にしたいという思惟性がある」鴫剛(「みづゑ」1974年)2/20

 

「写実主義が、理想主義のアンチテーゼになり得たのは、観念的理想に対する強い抵抗の意志が存在した時代であったように、スーパー・リアリズムも、“拡散されない” 間は、リアリティを持つかも知れない。」鴫剛(「みづゑ」1974年)2/21

 

「現代美術のリアリズムは、自然も、第2の自然(人工物・映像)も含めた環境の中での、実存を確認することにあるのではないか。精神自体は、内的事実に存在する。個々の精神が現実に係わり、現実は、新しい存在を提示するだろう」鴫剛(「みづゑ」1974年)2/22

 

「ここ数年、写真から絵画に、絵画から写真へという反転作業を続けていますが、私にとってこの徒労ともいえる行為は、トロンプ・ルイユ(騙し絵)への興味ではなく、「なぜこのようなものを改めて描くのか?」という反問にあります」鴫剛「美術手帖」(1975年5月号) 2/23

 

「現代の都市生活にあって、それがいかに空虚なものであれ、個人においては、日常的な心情は確実に存在します。私はそんな現実を、冷静な眼で、ひとつの意志として描きたいし、ひとつの批判として痕跡を消したい」鴫剛「美術手帖」(1975年5月号) 2/24

 

「写真そのままに描く努力も、またその展開も結局は枠組みの中だけのことで虚しい行為ではないかという問いは、問いそのもの自体で必要な答えを共有しているけれど、十分とは言えない。それは概念の問題のみで、拠って出ずる量や側面、質の獲得、関係の意味や肉付け、資格の多様性を無視しているからです」鴫剛「美術手帖」(1975年5月号) 2/25

 

1994年からの選挙制度では得票数と議席数が比例していない。前回の総選挙では自民党は小選挙区で5割未満、比例区では3割台の得票率で「絶対安定多数」を確保した。大政党には得票数以上、中小政党には過小な議席を与える最悪の選挙制度になっている。上脇博之2/26

 

(承前)「現代社会は、余りにも多くの幻想、幻像を持っており、個人の存在は、空疎な空しい行為の内に無化しているのではないか、どこにその実体があるのか、という反問こそが用意されなければならないと思います」鴫剛「美術手帖」(1975年5月号) 2/27

 

昔一度だけ聴いたことのあるCDを、久し振りにプレーヤーに乗せているのだが、音飛びや演奏停止の多いこと。ほとんどがワーナー盤の箱買いであるが3枚に1枚くらいの割合で拭いても取れない傷がある。もうCDなんか(買えないし)買わない。2/28

 

女子サッカーの北朝鮮戦は好試合だったが、前半に北朝鮮が蹴ったボールが、ゴールラインを割ったように見えた。主審はビデオで確認すべきではなかったのか。2/29

 

50歳になりし息子の行く末を案じて祈る桃の節句に 蝶人

 

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なにゆえに第115回~西暦2024年如月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2024-03-02 09:02:24 | Weblog

 

ある晴れた日に 第719回

 

なにゆえに読み切れぬほど買い込んだこの世でダメならあの世で読もうと

 

なにゆえに「なりわい回復」を叫んでる「なりわい=政治ゴロ」の2世議員が

 

なにゆえに殺されたら殺し返す終止符のない殺戮ゲーム

 

なにゆえに内閣支持率が上昇するキシダがなにかいいことしました?

 

なにゆえに降り出した雪が止んじまうどうせ降るなら死ぬほど降れよ

 

なにゆえに自民と立憲が共闘する味噌と糞を一緒にするな

 

なにゆえに前橋で勝って京都で負けた裏金大好き犯罪政党に

 

なにゆえに「旨い旨い!」と喚いてる満点レストランの阿呆莫迦大輔

 

なにゆえに断固時事を歌わない処女の大事な処女膜みたいに

 

アホダラ教のお守りみたくそれが最後の矜持みたいに

 

なにゆえに「覚えていない」を繰り返すそれが立派な所業のように

 

なにゆえにオザワもハルキも仕事した夜明け前こそ創造の時

 

なにゆえに今日は旗日と分かるのか奇特な一戸が国旗を掲げる

 

なにゆえに土日に会社で残業をする育児や家事から逃れるために

 

なにゆえにおじさんおばさんが眠っている義父と義母のお墓の傍に

 

なにゆえに軍事費をGDPの2%に増やすんだそれはNTOだけの取り決め

 

なにゆえにアワリヌイ氏を殺してしまう暗殺専科の元KGB

 

なにゆえにラファを殲滅せんとするイスラエルはこそ人類の敵

 

なにゆえにまたもや人を呪ってる昔はこれで人を殺した

 

なにゆえに人に頼むは心苦しいぜんぶ自分でやったほうがいい

 

なにゆえに能登ウクライナハマスを支援する親鸞なら止めろというかも

 

なにゆえに子ども増税に杞憂するそんなことより軍事費減らせ

 

なにゆえにたらば書房を訪ねるの余の大全集を売っているので

 

なにゆえに「句点は良くない」といいつのるやたら句点を付けてきたのに。

 

なにゆえに平野か伊藤を出さなんだまだまだ未熟な張本ではなく

 

なにゆえに株価が連日高騰するそのうちにまた暴落するさ

 

なにゆえに2月のカレンダーを3月にする前倒し魔の我が家の自閉児

 

なにゆえに野菜炒めも作れないマージャンばっかりやっていたので

 

なにゆえに政倫審に押し掛けるレームダックなドナルドダック

 

    裏金と保身にかまける米国の犬ジミントウは即解散せよ 蝶人

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西暦2024年如月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2024-03-01 10:13:47 | Weblog

 

ある雨の日に 第1回

 

指導力なき宰相がかって出る前代未聞の猿芝居を見よ

 

「飢餓海峡、面白いです」てふメールあり「飢餓陣営」てふ雑誌を読んだ友

 

なけなしの貯金がどんどん消えていく年金だけでは食べられなくて

 

円安でインバウンドとやらが押し掛ける私は君らを歓迎できない

 

プーチンに夫を殺されし妻ユリア「激しく闘う」と宣言したり

 

プーチンがキムに贈りし高級車んなもんおらっち欲しくはないぞ

 

「脳詩」消え「臓詩」栄えて肉躍る詩歌の時代そこまで来ておる

 

海山が鳥や獣が人間が世界と共に壊れゆくなり

 

読みたいなそのうち読もうと思う本みな読んでいる目黒実氏

 

国会でヤイノヤイノとせつかれてうすうす思い出す父母未生以前 

 

最果ての海辺に原発を造らせなかった珠洲の民草 

 

能登地震不幸中の幸いは珠洲原発を阻止した民草

 

年取りて平地に乱を起す者源三位頼政ドナルド・トランプ

 

呪うしか我には出来ぬラファの民を殺戮せんと迫るシオンを

 

祈るしか我には出来ぬイスラエル ラファの民草殺すなかれ 

 

都市部でも雪だ雪だと騒いだが過ぎてしまえば暖冬だった

 

じゃったじゃったじゃったわいらあそんな人世じゃった

 

ガザの人ラファの人には何もせず裏金作りに励む政治家

 

知的障害の知的が気になるもしかして知的な障害者なのかと

 

楽しみは月に2回のエッセイだMon Oncleがfacebookに書く

 

「黄昏のビギン」に送られ黄泉の世へ憲法原理主義者巽光良

 

「お父さんが2人もいる!」と叫んでた巽クンちに泊った翌朝

 

その昔一夜の宿を借りた友憲法原理主義者巽知良

 

中国に買収されて買いやすくなったかヴォルヴォ街で増殖 

 

食草がなければ蝶は生きられないハンノキ植えよカンアオイ増やせ

 

妖艶な年増が男に媚びを売るSNSの「リールとショート動画」

 

昼飯に焼き芋メザシを喰う我はいわゆるひとりのルンペンプロレタリアート

 

なりわいだああなりわいだなりわいだ政治屋2世や3世がなりわい回復を叫ぶ国会

 

東京駅の乗降客を避けながらの視線浴び雑踏を淡々と主人の先を行く盲導犬あり

 

東京駅の雑踏の中に首もたげ主人を導く盲導犬あり

 

東京駅ラシュアワーに頭上げ主人を率いレトリバー行く

 

「新しい戦前」がほんとにやって来た「新しい資本主義」の代わりに

 

わたくしの知らぬ国ドイツの田舎まで往復したる1冊の本 蝶人

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