The Real Royal Albert Hall 1966 Concert! / Bob Dylan (2016)
ディラン(Bob Dylan)66年のイギリスはロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音が単独で発売。タイトルに”Real”とあるのは、かつて海賊盤初期の頃に”Royal Albert Hall”の名で盤が広く出回ったのだが、実際に収録されていたのはマンチェスター公演の音源だったため。しかも1998年、オフィシャル・ブートレグ・シリーズではそのマンチェスター公演を発売する際に、わざわざ”ロイヤル・アルバート・ホール”と題して悪ノリしたため、こちらが本当の”ロイヤル・アルバート・ホール”ですよという意味での”Real”。1966年の豪英仏米と回ったツアーは「The 1966 Live Recordings」というタイトルで36枚組(!)のボックス・セットが発売されたため、22公演もの音源を聴くことが出来るが、そちらにはこのロイヤル・アルバート・ホール公演は収録されておらず、正真正銘の初登場となる。
1966年の公演はどれも前半がアコースティック、後半がエレクトリックという構成。”フォークの神様”として神格化されていたディランがプラグド・インしたもんだから、フォーク原理主義者の怒りを買い、ブーイングや罵声が飛び交ったという曰く付きのツアーだ。実際に聴いてみると観客の反応はそこまで酷くないように思うが、ディランがステージ上から何度も投げやりに反論したりするところをみると相当堪えていたのだろう。
まず、前半のアコースティック演奏。もちろんディラン1人でフォーク・ギターとハーモニカのみの演奏だが、これが凄まじい。ものすごい緊張感の中、1人で演っているとは思えない音の厚みがあり、時折ブロウされるハーモニカは火を噴くよう。ディランのヴォーカルもひと言ひと言に力が入って凄い…。どの曲も名演と言っていい素晴らしい演奏だ。痺れるなァ。そして後半は問題のエレクトリック。バックの演奏はもちろんホークス(The Hawks)。つまり後のザ・バンド(The Band)。ただしドラムはリヴォン・ヘルム(Levon Helm)ではなくミッキー・ジョーンズ(Mickey Jones)。演奏が始まると荒々しく、パンキッシュと言っていいくらいの激しい演奏。エレクトリックな爆音に慣れていないフォーク・ミュージックを期待していた聴衆が腰を抜かすのも無理はない。全体としてはブートになった有名なマンチェスター公演より出来がいい気がする。確かめるために久しぶりに「The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The "Royal Albert Hall" Concert」も引っ張り出してこよう。
amazonにて購入(¥1,078)
- Label : Columbia /legacy
- ASIN : B07DR9VRTS
- Disc : 2
>ワゴンセールで海賊版CD
一時は完全に非オフィシャルのブートやパイレート盤が一般書店にまで沢山出回りましたよね。
自分はストーンズでそういうのを買い漁ったことがありました。結局、ベターな(正規?)ブートを
買い直しましたが。
>オフィシャル・ブートレグ・シリーズ
私はとっくに挫折してしまいました。最初は出るたびに「スゲーな」と感動して
購入していたのですが、当初控えめだった枚数も出るたびにどんどん増え、2枚が3枚に、
3枚が6枚に、6枚が18枚に、18枚が36枚にと、もうついていけません(苦笑)。
もちろん感動も薄まってしまって、どのタイトルも一番枚数の少ない品を、しかも後から
中古で購入するに留まっています…。
でもこの作品は久々に痺れました。
>海賊盤初期の頃に”Royal Albert Hall”の名
ぼくも昔、駅のコンコースにあったワゴンセールで海賊版CD買ったな。その後のオフィシャル・ブートレグ・シリーズで。
抜け目ないディランは、コアなファン向に36枚組(!)のボックス・セットでツケを払わせた後、50年間も騙され続けていた正調版ロイヤル・アルバート・ホール・コンサートが今回の単独リリース。
ディランはさすが。悔しいが素晴らしい演奏なんだネ。