
食べながらしゃべると口の中を噛む。
そもそも、口の中に物を入れたまましゃべると中の物が飛んで汚い。
だから、そもそもそういったことはしてはならない。これは、普通のエチケットだ。
ところが、しばらく前から食事中に下唇の裏をしょっちゅう噛むようになった。ノルウェーでの学会に行く前からだったので、かれこれ半年。
食事中に噛むことが多かったので、食べながらしゃべっているのがよくないのだろうと思っていたのだが、ただたんに喋りながらでもよく噛むようになってしまった。
噛むところにちょっとした盛り上がりを感じるようになった。
当初は、口内炎がひどくなったのだろうと思い薬を塗ったりしたのだが効果なし。
あきらめて、放っておいたら、だんだんそこの部分が膨れてきた。
もうどうにも我慢ならない、どうしようと思っていたある日、病理に粘液嚢胞という病気の標本が出てきた。
ああ、私のもこれだ!と思って、歯科の先生に相談した。
「この前、先生が出された嚢胞、私もそうではないかと思うんですが…」
「そうですね、では今度とりましょう」
1週間後、歯科の先生に取ってもらった。
局麻して、取って、3針ほど縫っていただいた。時間にして15分ほど。
久しぶりに味わう患者さんの気分。
取った組織を(標本にして)見たら、嚢胞はもうなくなっていて、硬くなった線維性結合織だけ。診断はハズレではなかったと思うのだが、病変そのものが消えてしまっていたので、ちょっと拍子抜け。

今のところ、ちょっとした縫いあとを感じるだけで、再発はない。やっぱり取ってよかったのだろう。

