感染症に対する十分な知識も、麻酔技術もない、近代医学の黎明期に活躍した医師の伝記。
彼のまいた種が今日の医学発展に寄与したことは間違いないだろう。
しかしながら、解剖学にしても、外科学にしても当時勃興期であり、多くの先達がすでにいたということも書かれている。見方を変えれば、ハンターは図抜けた実行力と手先の器用さを併せ持った優秀な解剖医、外科医であっただけで、医学発展のブースターにしか過ぎなかったともいえる。
また、現代医学を推進する上で避けて通ることのできない問題の一つである科学倫理の問題がすでにあったということも興味深い。
いつの時代も、人は死と対峙しながら生きている。
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医学関係者のみならず、科学者、さらには知的探究心をもったすべての人が知るべき、混沌とした科学の黎明期の巨人(あくまでも比喩的な意味ですw)の伝記。解剖学者が臨床医として活躍し、さらには解剖学者から(検死を通して)病理医として医療を向上させ、医学教育も行う。研究、臨床、教育という、現代医学の根幹を成す3本柱を明確にうちたてたという点で、現代を生きる私たちは、感謝してしきれない。病理医である私も、一医学徒として残りの人生で何をなし得るか、今一度考えてみたい。
読了日:8月22日 著者:ウェンディムーア
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