私の前後5歳(45歳から55歳)ぐらいの先生と別々の機会に勉強だの研究だののことを話していたら、それぞれの先生が、
「一度にいろいろなことができなくなってきちゃったのよね。年のせいかしら」
と、異口同音に嘆いていた。
その前にも似たようなことを誰かから聞いたことがあった。
私も聞いていてなんとなくわかるような気がした。
でも、本当にそうか。あれこれ考えてみた。
実際は違うと思った。
私の専門臓器についてだけ考えてみても、病理学的形態学的レベルから遺伝子レベルまで、多岐にわたって研究されている。それぞれから派生するものを考えたら気が遠くなるほどである。
結局のところ、深くやればやるほど道は遠くなる。だが、それこそがオンリーワンになることである。
あれもこれも、など土台無理な話なのだ。
だから、その先生たちにも、それぞれ、
「そうですよね。でも、先生がその道を深く極めるからこそ大変なのであって、あれもこれもなんて、やっていられませんよ」
と言おうと思う。
これは決してお世辞ではない。