病理医の仕事が、世間一般にはまだまだ知られていないということを思い知らされ、ずいぶん落ち込んだけど、そんな必要などなかったのだと考えた。
私が今やらなくてはいけないことは、他人から見られた自分の境遇が、自分が思っていたのと違ったからといって落ち込むことではない。するべきことは、日々質の高い病理診断をすること、わかっていないことを私なりに研究していくこと、そして後進を育てること。
まだまだ知らない病気は多い。たとえそれが希少疾患だとしても、その病気に苦しむ人が一人でもいたら、その人の役に立つ仕事をする。
わからないことがあったら、その本体を知る努力をする。
そして、今年で55。もう現役として残されている時間はほとんどない。少しでも私の知っていること、それがたとえ微々たるものであっても、価値のあるものであれば後輩に伝える。病理の知名度が低くて後に続く人間が少ないということは、そのためにはマイナス要因だけど、現実は現実として受け入れるしかない。何か別の方法を考えよう。
だから、私の仕事(病理診断)が世の中でそれほど知られていないからといって、そのことでいちいち落ち込んでいるわけにはいかないのだ。自分の一生を賭けると誓ったこの仕事について、プライドが傷ついたとか、医師免許が必要な仕事なのか?というようなおかしな疑問を持つ必要など無い。そういうことはしょせん取るに足らない瑣末なことなのだ。必要なのはプライドでは無い、自分がなすべきすることをなすことだ。
私がやらなくてはいけないことが何かを考え、仲間と一緒に前に進もう。
笑顔も忘れずに