きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

タックスヘイブン 実像と対策① 税逃れ本丸 多国籍企業

2013-08-13 15:18:08 | 経済・産業・中小企業対策など
タックスヘイブン 実像と対策① 税逃れ本丸 多国籍企業

タックスヘイブン(租税回避地)は法人税や金融取引にかかる税金などが著しく低かったり、無税の国・地域です。ここを利用した多国籍企業による税逃れが国際的に大きな問題になり、各国政府や国際機関が対策を検討しています。この間題を研究している政治経済研究所理事・合田寛(ごうだ・ひろし)さんの論考を3回にわたって連載します。

タックスヘイブンに関する国際的な関心が高まっています。7月19~20日モスクワで開かれた20力国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、いわゆる「税源浸食・利益移転(BEPS)」に歯止めをかける声明を発表しました。経済協力開発機構(OECD)もそのための15項目からなる行動計画を公表し、これを2年間かけて実現するプログラムを策定しました



1万8000社が籍を置くケイマン島のビル(西村央撮影)

●たたかい始まる
タックスヘイブンに対する取り組みはこれまでもありましたが、関心の対象はもっぱらケイマン島やバミューダ島などエキゾチックな南海の孤島であり、これらをブラックリストにのせることによって制裁を加えるという手法が主でした。
しかしこれらの南海の孤島にある小島のタックスヘイブンは独立して存在しているのではなく、ロンドン、ニューヨークなど世界の金融センターと密接なつながりを有しており、多国籍企業、メガバンクによって規制回避や税逃れのために利用されていることは周知の事実です。
この点で今度打ち出されたBEPS対策は、明確に多国籍企業に焦点を当てた対策であり、多国籍企業がタックスヘイブンに利益を人為的に移転することによって税を逃れているという事実認識をもとにしていることが、これまでの取り組みと異なるところです。タックスヘイブンから最も利益を得ているのは多国籍企業や超富裕者なので、やっと本丸を目指すたたかいが始まったといえるでしょう。

●「二重非課税」も
多国籍企業は世界各国に数多くの子会社を設置し、そのネットワークを利用して、各国であげた利益を低税率国、タックスヘイブンに移して税を逃れています。手法はいろいろありますが、知的財産権を低税率国の子会社に移し、その使用に対する特許使用料の形で利益を低税率国、タックスヘイブンに移す方法がその一つです。
移転価格を利用する方法もあります。たとえば高税率国にある子会社で原材料を仕入れ、それを低税率国にある子会社に格安で売るという帳簿上の操作をします。それによって高税率国における利益を小さく見せ、低税率国における利益を大きくすることができ、グループ全体として税負担を軽くすることができます「二重課税の排除」のための租税条約を悪用した「二重非課税」の例は最も悪質です。最近アメリカ議会上院で暴露されたアップル社の事例がそれです。アップル社はアメリカのカリフォルニア州に本拠を置く多国籍企業ですが、低税率国アイルランドに子会社を設立しています。アメリカは会社が設立された場所で課税する「居住地原則」の国なので、アイルランド子会社には課税できません。一方アイルランドの法律では経営・コントロールしている国が課税することになっているので、アメリカの本社から経営・コントロールされているアイルランドの子会社に課税できません。
そこでアップル社はどこからも課税されないという「聖杯」(英誌『エコノミスト』5月25日号)を手にすることができたのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月7日付掲載


いよいよ、南海の孤島だけでなく、その本丸である多国籍企業をターゲットにした動きが始まったのですね。実効あるものにしてほしいものです。
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