タックスヘイブン 実像と対策③ 立ち向かう政府・市民
政治経済研究所理事・合田さん
タックスヘイブン(租税回避地)と聞いて、まず目に浮かぶのは、ヤシの木が茂る海浜のリゾート地でしょう。代表的なタックスヘイブンとして知られるカリブ海のケイマン諸島には、6万社を上回る会社、500行を超える銀行、1万にも及ぶファンドが登録されており、正体不明のペーパーカンパニー、真の所有者が分からない信託や基金であふれています。

G20財務省・中央銀行総裁会議記者会見するグリア事務総長=7月19日、モスクワ(ロイター)
先進国に拠点
こうした仕組みは、「オーファン・ストラクチャー」(孤児組織)とも呼ばれていますが、本当は親がいないのではなく、すべて米英をはじめ主要先進国に拠点を持つ多国籍企業やメガバンク(巨大銀行)、超富裕者によって所有され、管理運営されているものです。
ケイマン諸島は、自治権を認められているとはいえ、イギリスの海外領土の一つであり、トップの総督はいまもイギリスの女王によって任命されています。法律や規制の制定も、事実上ロンドンのシティーの意のままです。シティーはイギリスの金融の中心地ですが、独自の行政機能を持ち、「国家の中の国家」と呼ばれ、政府の政策に対して強い影響力を有しています。
シティーがイギリスの影響の及ぶタックスヘイブンのネットワークの中心にあるように、アメリカも、ウォールストリートを核にして、本国のデラウェアなどの州をはじめとする同様のネットワークを有しています。多国籍企業が主導するグローバル化(地球規模化)の中で、タックスヘイブンはだれも手を付けることができないほど肥大化し、強固な存在になっているのです。まさにタックスヘイブンは現代グローバル資本主義の聖域といえるでしょう。
透明性の強化
タックスヘイブンは守秘法域とも呼ばれるように、それを支えているのは極度の秘密性です。したがってタックスヘイブンに立ち向かうには、第一に、透明性の強化が求められます。アメリカやヨーロッパで始められた銀行口座の自動情報交換制度を国際基準とするとともに、金融機関だけでなく、タックスヘイブンにある実体のないペーパーカンパニーや匿名の信託など、真の所有者を隠ぺいする仕組みを廃絶することが必要です。
第二に、多国籍企業が世界中で得た利益を低税率国や無税のタックスヘイブンに移して課税を免れる仕組みをなくすことです。そのためには、国際的な会計基準を改め、多国籍企業に国際的な統合財務情報とともに国別の財務情報を開示させなければなりません。それによって、実際に事業活動が行われた国で課税することができれば、途上国からの不法な資金流出を阻止することもできます。
今回提案された経済協力開発機構(OECD)の行動計画「税源侵食・利益移転(BEPS)」は、タックスヘイブンとたたかう上で重要な手がかりを含んでいます。一方、タックスヘイブンの「聖杯」を手放したくない多国籍企業は、改革を骨抜きにするためのロビー活動に必死です。
時は、今です。タックス・ジャスティス・ネットワークなどが世界的な市民運動を呼び掛けています。日本でも国際連帯税フォーラムが都内でシ一ンポジウムを開くなど、取り組みを強めようとしています。主要20力国・地域(G20)やOECD任せではなく、すべての国の政府と市民が立ち上がって、このグローバル資本主義の聖域に立ち向かうことが緊急に求められているのです。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月9日付掲載
タックスヘイブンによって納税を回避している多国籍企業。その被害にあっているのは、普通に納税している市民、そして税収によって国政を運営している国々(多国籍企業の親許である先進国も、途上国も)であるということです。
だから、政府と市民が手を携えて、資本主義の聖域に立ち向かおうとしているんです。
政治経済研究所理事・合田さん
タックスヘイブン(租税回避地)と聞いて、まず目に浮かぶのは、ヤシの木が茂る海浜のリゾート地でしょう。代表的なタックスヘイブンとして知られるカリブ海のケイマン諸島には、6万社を上回る会社、500行を超える銀行、1万にも及ぶファンドが登録されており、正体不明のペーパーカンパニー、真の所有者が分からない信託や基金であふれています。

G20財務省・中央銀行総裁会議記者会見するグリア事務総長=7月19日、モスクワ(ロイター)
先進国に拠点
こうした仕組みは、「オーファン・ストラクチャー」(孤児組織)とも呼ばれていますが、本当は親がいないのではなく、すべて米英をはじめ主要先進国に拠点を持つ多国籍企業やメガバンク(巨大銀行)、超富裕者によって所有され、管理運営されているものです。
ケイマン諸島は、自治権を認められているとはいえ、イギリスの海外領土の一つであり、トップの総督はいまもイギリスの女王によって任命されています。法律や規制の制定も、事実上ロンドンのシティーの意のままです。シティーはイギリスの金融の中心地ですが、独自の行政機能を持ち、「国家の中の国家」と呼ばれ、政府の政策に対して強い影響力を有しています。
シティーがイギリスの影響の及ぶタックスヘイブンのネットワークの中心にあるように、アメリカも、ウォールストリートを核にして、本国のデラウェアなどの州をはじめとする同様のネットワークを有しています。多国籍企業が主導するグローバル化(地球規模化)の中で、タックスヘイブンはだれも手を付けることができないほど肥大化し、強固な存在になっているのです。まさにタックスヘイブンは現代グローバル資本主義の聖域といえるでしょう。
透明性の強化
タックスヘイブンは守秘法域とも呼ばれるように、それを支えているのは極度の秘密性です。したがってタックスヘイブンに立ち向かうには、第一に、透明性の強化が求められます。アメリカやヨーロッパで始められた銀行口座の自動情報交換制度を国際基準とするとともに、金融機関だけでなく、タックスヘイブンにある実体のないペーパーカンパニーや匿名の信託など、真の所有者を隠ぺいする仕組みを廃絶することが必要です。
第二に、多国籍企業が世界中で得た利益を低税率国や無税のタックスヘイブンに移して課税を免れる仕組みをなくすことです。そのためには、国際的な会計基準を改め、多国籍企業に国際的な統合財務情報とともに国別の財務情報を開示させなければなりません。それによって、実際に事業活動が行われた国で課税することができれば、途上国からの不法な資金流出を阻止することもできます。
今回提案された経済協力開発機構(OECD)の行動計画「税源侵食・利益移転(BEPS)」は、タックスヘイブンとたたかう上で重要な手がかりを含んでいます。一方、タックスヘイブンの「聖杯」を手放したくない多国籍企業は、改革を骨抜きにするためのロビー活動に必死です。
時は、今です。タックス・ジャスティス・ネットワークなどが世界的な市民運動を呼び掛けています。日本でも国際連帯税フォーラムが都内でシ一ンポジウムを開くなど、取り組みを強めようとしています。主要20力国・地域(G20)やOECD任せではなく、すべての国の政府と市民が立ち上がって、このグローバル資本主義の聖域に立ち向かうことが緊急に求められているのです。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月9日付掲載
タックスヘイブンによって納税を回避している多国籍企業。その被害にあっているのは、普通に納税している市民、そして税収によって国政を運営している国々(多国籍企業の親許である先進国も、途上国も)であるということです。
だから、政府と市民が手を携えて、資本主義の聖域に立ち向かおうとしているんです。