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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

タックスヘイブン 実像と対策③ 立ち向かう政府・市民

2013-08-14 15:02:42 | 経済・産業・中小企業対策など
タックスヘイブン 実像と対策③ 立ち向かう政府・市民
政治経済研究所理事・合田さん


タックスヘイブン(租税回避地)と聞いて、まず目に浮かぶのは、ヤシの木が茂る海浜のリゾート地でしょう。代表的なタックスヘイブンとして知られるカリブ海のケイマン諸島には、6万社を上回る会社、500行を超える銀行、1万にも及ぶファンドが登録されており、正体不明のペーパーカンパニー、真の所有者が分からない信託や基金であふれています。


G20財務省・中央銀行総裁会議記者会見するグリア事務総長=7月19日、モスクワ(ロイター)

先進国に拠点
こうした仕組みは、「オーファン・ストラクチャー」(孤児組織)とも呼ばれていますが、本当は親がいないのではなく、すべて米英をはじめ主要先進国に拠点を持つ多国籍企業やメガバンク(巨大銀行)、超富裕者によって所有され、管理運営されているものです。
ケイマン諸島は、自治権を認められているとはいえ、イギリスの海外領土の一つであり、トップの総督はいまもイギリスの女王によって任命されています。法律や規制の制定も、事実上ロンドンのシティーの意のままです。シティーはイギリスの金融の中心地ですが、独自の行政機能を持ち、「国家の中の国家」と呼ばれ、政府の政策に対して強い影響力を有しています。
シティーがイギリスの影響の及ぶタックスヘイブンのネットワークの中心にあるように、アメリカも、ウォールストリートを核にして、本国のデラウェアなどの州をはじめとする同様のネットワークを有しています。多国籍企業が主導するグローバル化(地球規模化)の中で、タックスヘイブンはだれも手を付けることができないほど肥大化し、強固な存在になっているのです。まさにタックスヘイブンは現代グローバル資本主義の聖域といえるでしょう。

透明性の強化
タックスヘイブンは守秘法域とも呼ばれるように、それを支えているのは極度の秘密性です。したがってタックスヘイブンに立ち向かうには、第一に、透明性の強化が求められます。アメリカやヨーロッパで始められた銀行口座の自動情報交換制度を国際基準とするとともに、金融機関だけでなく、タックスヘイブンにある実体のないペーパーカンパニーや匿名の信託など、真の所有者を隠ぺいする仕組みを廃絶することが必要です。
第二に、多国籍企業が世界中で得た利益を低税率国や無税のタックスヘイブンに移して課税を免れる仕組みをなくすことです。そのためには、国際的な会計基準を改め、多国籍企業に国際的な統合財務情報とともに国別の財務情報を開示させなければなりません。それによって、実際に事業活動が行われた国で課税することができれば、途上国からの不法な資金流出を阻止することもできます。
今回提案された経済協力開発機構(OECD)の行動計画「税源侵食・利益移転(BEPS)」は、タックスヘイブンとたたかう上で重要な手がかりを含んでいます。一方、タックスヘイブンの「聖杯」を手放したくない多国籍企業は、改革を骨抜きにするためのロビー活動に必死です。
時は、今です。タックス・ジャスティス・ネットワークなどが世界的な市民運動を呼び掛けています。日本でも国際連帯税フォーラムが都内でシ一ンポジウムを開くなど、取り組みを強めようとしています。主要20力国・地域(G20)やOECD任せではなく、すべての国の政府と市民が立ち上がって、このグローバル資本主義の聖域に立ち向かうことが緊急に求められているのです。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月9日付掲載


タックスヘイブンによって納税を回避している多国籍企業。その被害にあっているのは、普通に納税している市民、そして税収によって国政を運営している国々(多国籍企業の親許である先進国も、途上国も)であるということです。
だから、政府と市民が手を携えて、資本主義の聖域に立ち向かおうとしているんです。

タックスヘイブン 実像と対策② 規制及ばぬ秘密の世界

2013-08-14 14:50:08 | 経済・産業・中小企業対策など
タックスヘイブン 実像と対策② 規制及ばぬ秘密の世界
政治経済研究所理事・合田さん


タックスヘイブン(租税回避地)の弊害は以前から指摘されていましたが、なぜいま世界の大きな問題として浮上してきたのでしょうか。その背景には、世界の経済と財政の深刻な危機があります。リーマン・ショック以来、世界経済は深刻な危機に陥り、いまだに出口を見いだすには至っていません。経済危機に伴って、一方では税収が減るとともに、他方で巨額の財政出動などの結果、各国は深刻な財政危機にあえいでいます。


多国籍企業の名が並ぶケイマン島のビルの入り口(西村央撮影)

納税者の怒り
財政危機に直面した主要国政府は、「緊縮政策」の名のもとに社会保障を削減する一方、間接税(付加価値税や消費税)を増税するなど、大衆負担で乗り切ろうとしてきました。ところが、それに対して国民の怒りが爆発し、各国で大規模なデモや集会が広がりました。
特に、イギリスではコーヒー販売で大きな利益を上げているスターバックスが長年の間、イギリス政府に納税していないという事実が明らかとなり、納税者の怒りが爆発しました。スターバックスだけではなく、ほとんどの多国籍企業が同様の課税逃れをしている事実が椙次いで暴露され、その怒りは世界中に広がり、経済協力開発機構(OECD)や20力国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などでも取り上げざるを得ない状況が生まれたのです。
タックスヘイブンを利用した税逃れは、所得と富の格差を世界的な規模で広げる役割を果たしています。
しかし、タックスヘイブンの弊害は、多国籍企業や超富裕者の税逃れだけではありません。タックスヘイブンは「守秘法域」ともよばれ、私たちが日々生活する社会とは隔絶された特別の地域です。民主的な規制の及ばない、閉ざされた秘密の世界です。多国籍企業やメガバンク(巨大銀行)は、タックスヘイブンに子会社を置くことによって、本国の規制を逃れ、自由に利益を追求し、投機をほしいままにできるのです。
世界の金融市場をかく乱し、今も日本の株価を乱高下させているヘッジファンドのほとんどは、タックスヘイブンで登記されています。リーマン・ショックの原因となった高リスクの金融商品の多くも、タックスヘイブンで生み出されました。こうして、タックスヘイブンは世界経済の危機と混乱の温床ともなっているのです。
タックスヘイブンでは取引の秘密が守られることから、犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床ともなっています。麻薬取引から人身売買にいたるあらゆる不法・違法な取引で得られた資金は、タックスヘイブンを経由して洗浄され、表に還流しています。昨年7月には、イギリスを代表するメガバンクHSBC銀行が麻薬取引資金のマネーロンダリングに長年かかわっていた事実が暴露されています。

途上国の富奪う
また、途上国からの不法な資金流出は、タックスヘイブンと深くかかわっています。途上国から不法に国外に流出する資金は、毎年1兆ドル近くにのぼり、先進国からの政府開発援助の額を上回っています。そのうちのかなりの部分は、多国籍企業による移転価格操作によってもたらされたものです。それによって、途上国はインフラ投資や貧困対策のための資金に不足をきたし、本来得るべき税収を失っています。それは貧困国をますます貧困にする結果をもたらしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月8日付掲載


多国籍企業は、本国でも、出先の途上国でも、本来払うべき税金を納めないといけませんね。タックスヘイブンという制度そのものを見直さなないといけません。