軍事依存経済 宇宙編⑩ 軍産複合体の自己運動
「日米宇宙協力の新しい時代の到来」
安倍政権の宇宙基本計画(2015年1月)はこう強調しました。
日本の宇宙政策を米国の軍事戦略の下に組み込む大転換を、国民に向かって宣言したのです。
自衛隊の活動に
同計画によれば、日米間で「新時代の到来」を確認したのは14年5月に開催された「日米両国政府の事務レベル協議において」でした。その直後、14年8月に防衛省が発表した「宇宙開発利用に関する基本方針」には、宇宙の軍事化政策が勢ぞろいしました。
自衛隊の任務の遂行のために、「地球上のあらゆる地域へのアクセスが可能な人工衛星の特性を活(い)かした宇宙空間の利用」を進めるというのです。利用方法は四つです。
一つ目は「人工衛星を用いた情報収集」です。「航空機や艦船などではアクセス困難な他国領域における軍事動向などの偵察」が可能だと説明し、他国の領域を盗み見る狙いをあけすけに示しました。
二つ目は衛星通信や衛星測位を利用した「地球上における活動の指揮統制・情報通信」です。日本が準天頂衛星を整備すれば、「日米協力の強化」など「安全保障に資する」と強調。国民生活の利便性向上を宣伝して開発してきた準天頂衛星を軍事利用し、米軍にも使わせる意図を明確化しました。すでに、新たな衛星3機の製造は三菱電機が502億円で受注しています。
また、整備を進めている初の防衛省保有の通信衛星について、16~17年に運用を始める計画も示しました。通信衛星2機を製造するのはNEC。地上施設の管理はNTTコミュニケーションズ、事業全般の管理はスカバーJSATが担います。契約金額は13年から31年までで1220億円にのぼります。
三つ目は「宇宙空間での弾道ミサイル攻撃への対応」です。ミサイルを探知する赤外線センサーを「先進光学衛星」に載せ、「宇宙空間での実証研究」を行います。弾道ミサイルの報復を受ける心配なく先制攻撃を行うために、米国が開発してきたミサイル防衛システムの一環です。
同センサーの研究開発は防衛省が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して進めており、15年度に48億円の予算を計上しました。
四つ目は「宇宙空間の安定確保」です。軍事衛星が「対衛星兵器」で攻撃される“宇宙戦争”を想定し、対応策を並べました。
こうした軍拡の必要性を導き出すために防衛省が使う枕ことばはいつも同じです。「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中」というものです。
米軍のイージス艦からミサイル防衛用の迎撃ミサイルを発射する日米共同試験(防衛省のホームページから)
持ちつ持たれつ
「軍事のための宇宙開発」を批判する名古屋大学の池内了名誉教授は、「戦争の危機をあおる勢力」への注意を呼びかけます。
「軍産複合体が自由と民主主義に危険をもたらしていると警告したのは米国のアイゼンハワー大統領でした。国の予算を軍事に回すため、軍産複合体は安全への恐怖をあおって世論や議会を誘導してきました」
軍需産業の発展によって軍事力を増す軍隊。軍需によって利益を得る軍需産業。両者を優遇する政府機関。3者が持ちつ持たれつの関係で結びついたのが軍産複合体です。
「平和になれば軍事費が削減され、軍産複合体は立ち行かなくなります。常に戦争を求めて自己運動を続ける存在なのです」
池内名誉教授は、宇宙の軍事利用や武器の輸出が解禁されたことにより、日本でも軍産複合体が成長し始めていると警告します。
「これらの政策自体、産軍官の結託によって進められました。軍事費の増額や武器輸出で軍需産業は大きな利益を得ます。官僚は天下りで軍需産業に雇用されます。政治家は軍需産業から献金を受けます。そして官僚と政治家が軍拡を進める、という循環が成立する危険があります」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月23日付掲載
「常に戦争を求めて自己運動を続ける存在」
まさに死の商人。軍産複合体は解体するしかないですね。
「日米宇宙協力の新しい時代の到来」
安倍政権の宇宙基本計画(2015年1月)はこう強調しました。
日本の宇宙政策を米国の軍事戦略の下に組み込む大転換を、国民に向かって宣言したのです。
自衛隊の活動に
同計画によれば、日米間で「新時代の到来」を確認したのは14年5月に開催された「日米両国政府の事務レベル協議において」でした。その直後、14年8月に防衛省が発表した「宇宙開発利用に関する基本方針」には、宇宙の軍事化政策が勢ぞろいしました。
自衛隊の任務の遂行のために、「地球上のあらゆる地域へのアクセスが可能な人工衛星の特性を活(い)かした宇宙空間の利用」を進めるというのです。利用方法は四つです。
一つ目は「人工衛星を用いた情報収集」です。「航空機や艦船などではアクセス困難な他国領域における軍事動向などの偵察」が可能だと説明し、他国の領域を盗み見る狙いをあけすけに示しました。
二つ目は衛星通信や衛星測位を利用した「地球上における活動の指揮統制・情報通信」です。日本が準天頂衛星を整備すれば、「日米協力の強化」など「安全保障に資する」と強調。国民生活の利便性向上を宣伝して開発してきた準天頂衛星を軍事利用し、米軍にも使わせる意図を明確化しました。すでに、新たな衛星3機の製造は三菱電機が502億円で受注しています。
また、整備を進めている初の防衛省保有の通信衛星について、16~17年に運用を始める計画も示しました。通信衛星2機を製造するのはNEC。地上施設の管理はNTTコミュニケーションズ、事業全般の管理はスカバーJSATが担います。契約金額は13年から31年までで1220億円にのぼります。
三つ目は「宇宙空間での弾道ミサイル攻撃への対応」です。ミサイルを探知する赤外線センサーを「先進光学衛星」に載せ、「宇宙空間での実証研究」を行います。弾道ミサイルの報復を受ける心配なく先制攻撃を行うために、米国が開発してきたミサイル防衛システムの一環です。
同センサーの研究開発は防衛省が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して進めており、15年度に48億円の予算を計上しました。
四つ目は「宇宙空間の安定確保」です。軍事衛星が「対衛星兵器」で攻撃される“宇宙戦争”を想定し、対応策を並べました。
こうした軍拡の必要性を導き出すために防衛省が使う枕ことばはいつも同じです。「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中」というものです。
米軍のイージス艦からミサイル防衛用の迎撃ミサイルを発射する日米共同試験(防衛省のホームページから)
持ちつ持たれつ
「軍事のための宇宙開発」を批判する名古屋大学の池内了名誉教授は、「戦争の危機をあおる勢力」への注意を呼びかけます。
「軍産複合体が自由と民主主義に危険をもたらしていると警告したのは米国のアイゼンハワー大統領でした。国の予算を軍事に回すため、軍産複合体は安全への恐怖をあおって世論や議会を誘導してきました」
軍需産業の発展によって軍事力を増す軍隊。軍需によって利益を得る軍需産業。両者を優遇する政府機関。3者が持ちつ持たれつの関係で結びついたのが軍産複合体です。
「平和になれば軍事費が削減され、軍産複合体は立ち行かなくなります。常に戦争を求めて自己運動を続ける存在なのです」
池内名誉教授は、宇宙の軍事利用や武器の輸出が解禁されたことにより、日本でも軍産複合体が成長し始めていると警告します。
「これらの政策自体、産軍官の結託によって進められました。軍事費の増額や武器輸出で軍需産業は大きな利益を得ます。官僚は天下りで軍需産業に雇用されます。政治家は軍需産業から献金を受けます。そして官僚と政治家が軍拡を進める、という循環が成立する危険があります」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月23日付掲載
「常に戦争を求めて自己運動を続ける存在」
まさに死の商人。軍産複合体は解体するしかないですね。