軍事依存経済 宇宙編② 民間人を殺すドローン
宇宙の軍事利用が世界に何をもたらすか。日本の軍事同盟国である米国が実例を示しています。
宇宙を利用した米国の戦争は近年、国際的な論争を呼び起こし、非難の的ともなっています。立命館大学の藤岡惇教授はそれを「新型戦争」と呼びます。
2014年3月11日、国連人権理事会で、無人機による民間人殺害の事例が報告されました(「テロ対策中の人権および基本的自由の保護に関する特別報告」)。
学校にミサイル
06年10月30日、精密誘導ミサイルが神学校を爆破しました。場所はパキスタンのバジャール部族特区。ミサイルを発射したのは米国の指揮下にある無人航空機(ドローン)とみられます。最大80人が即死。2人が重傷を負い、短時間のうちに病院で死にました。死者のうち69人は18歳以下の子どもであり、うち16人は13歳以下でした。目撃者によれば、犠牲者の大多数は神学校の生徒でした。戦闘と関係のない民間人だったのです。
09年6月23日、パキスタンの南ワジリスタンで営まれていた大規模な葬儀の会場を、精密誘導ミサイルが爆撃しました。攻撃したのは米国指揮下の無人機だとみられます。会葬者には反政府組織タリバンの活動家が含まれていた一方、かなりの数の民間人がいたと目撃者は証言しました。殺されたのは最大83人。10人の子どもと部族の長老4人が死にました。
11年10月31日、パキスタンの北ワジリスタンで精密誘導ミサイルが自動車と民家を爆撃し、4人を殺害しました。作戦を遂行したのは米国指揮下の無人機だとみられます。死者のうち2人はタリク・アジズとワヒード・ウラーという名の10代の若者と確認されました。所属するサッカーチームのメンバーと合流するために移動している最中に、攻撃を受けたのです。交友関係や活動に関する調査の結果は、2人が民間人だったことを強く示しています。他の2人の犠牲者の実像は不明です。
12年7月6日、パキスタンの北ワジリスタンにあるゾウィ・シッジ村を精密誘導ミサイルが爆撃しました。米国指揮下の無人機が発射したとみられます。最初のミサイルはテントに命中し、8人を殺しました。集まっていたのは一日の仕事を終えた労働者のグループでした。直後に2度目の攻撃がありました。合計18人が死亡し、22人が負傷しました。犠牲者の交友関係や活動に関する調査の結果は、殺された全員が民間人だったことを示しています。
以上はごく一部の事例です。
基地を離陸する米国の無人機プレデター(米空軍のホームページから)
7千人超す死者
英国のNPO「調査報道局」は米国の無人機攻撃の回数を集計しています。対象は02年以降、パキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリアで行われた攻撃です。
同団体が把握したものだけでも、無人機攻撃は最大1021回に及び、7538人が死亡しています。死者のうち、民間人は最大1369人、子どもは281人にのぼっています(9日現在)。
「米国の新型戦争は『宇宙を拠点にしたネットワーク中心型戦争』になっている」と藤岡教授は話します。
人工衛星編隊を使って戦力をネットワークでつないでいる、という意味です。一つの表れが、戦場から遠く離れた安全な施設に自国兵士を潜ませたまま、衛星を介して無人機やミサイルを操り、「標的」に選んだ人物を殺害する「ドローン戦争」です。
安倍晋三政権が15年1月9日に決定した「第3次宇宙基本計画」は、「米国の要求をそのまま書いたもの」だと藤岡教授は指摘します。
「米国の新型戦争システムを支えるために、日本の資源や技術を総動員する計画です」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月10日付掲載
個人所有のドローン。公共施設や行政施設に降り立ち、騒ぎを起こしています。
でも、それは可愛い方。
中東では、ドローンこと無人攻撃機で民間人が誤爆による犠牲になっています。
「精密誘導ミサイル」と言いながら、テロとは関係のない神学校を爆撃。何が「精密」かと疑われます。
宇宙の軍事利用が世界に何をもたらすか。日本の軍事同盟国である米国が実例を示しています。
宇宙を利用した米国の戦争は近年、国際的な論争を呼び起こし、非難の的ともなっています。立命館大学の藤岡惇教授はそれを「新型戦争」と呼びます。
2014年3月11日、国連人権理事会で、無人機による民間人殺害の事例が報告されました(「テロ対策中の人権および基本的自由の保護に関する特別報告」)。
学校にミサイル
06年10月30日、精密誘導ミサイルが神学校を爆破しました。場所はパキスタンのバジャール部族特区。ミサイルを発射したのは米国の指揮下にある無人航空機(ドローン)とみられます。最大80人が即死。2人が重傷を負い、短時間のうちに病院で死にました。死者のうち69人は18歳以下の子どもであり、うち16人は13歳以下でした。目撃者によれば、犠牲者の大多数は神学校の生徒でした。戦闘と関係のない民間人だったのです。
09年6月23日、パキスタンの南ワジリスタンで営まれていた大規模な葬儀の会場を、精密誘導ミサイルが爆撃しました。攻撃したのは米国指揮下の無人機だとみられます。会葬者には反政府組織タリバンの活動家が含まれていた一方、かなりの数の民間人がいたと目撃者は証言しました。殺されたのは最大83人。10人の子どもと部族の長老4人が死にました。
11年10月31日、パキスタンの北ワジリスタンで精密誘導ミサイルが自動車と民家を爆撃し、4人を殺害しました。作戦を遂行したのは米国指揮下の無人機だとみられます。死者のうち2人はタリク・アジズとワヒード・ウラーという名の10代の若者と確認されました。所属するサッカーチームのメンバーと合流するために移動している最中に、攻撃を受けたのです。交友関係や活動に関する調査の結果は、2人が民間人だったことを強く示しています。他の2人の犠牲者の実像は不明です。
12年7月6日、パキスタンの北ワジリスタンにあるゾウィ・シッジ村を精密誘導ミサイルが爆撃しました。米国指揮下の無人機が発射したとみられます。最初のミサイルはテントに命中し、8人を殺しました。集まっていたのは一日の仕事を終えた労働者のグループでした。直後に2度目の攻撃がありました。合計18人が死亡し、22人が負傷しました。犠牲者の交友関係や活動に関する調査の結果は、殺された全員が民間人だったことを示しています。
以上はごく一部の事例です。
基地を離陸する米国の無人機プレデター(米空軍のホームページから)
7千人超す死者
英国のNPO「調査報道局」は米国の無人機攻撃の回数を集計しています。対象は02年以降、パキスタン、アフガニスタン、イエメン、ソマリアで行われた攻撃です。
同団体が把握したものだけでも、無人機攻撃は最大1021回に及び、7538人が死亡しています。死者のうち、民間人は最大1369人、子どもは281人にのぼっています(9日現在)。
「米国の新型戦争は『宇宙を拠点にしたネットワーク中心型戦争』になっている」と藤岡教授は話します。
人工衛星編隊を使って戦力をネットワークでつないでいる、という意味です。一つの表れが、戦場から遠く離れた安全な施設に自国兵士を潜ませたまま、衛星を介して無人機やミサイルを操り、「標的」に選んだ人物を殺害する「ドローン戦争」です。
安倍晋三政権が15年1月9日に決定した「第3次宇宙基本計画」は、「米国の要求をそのまま書いたもの」だと藤岡教授は指摘します。
「米国の新型戦争システムを支えるために、日本の資源や技術を総動員する計画です」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月10日付掲載
個人所有のドローン。公共施設や行政施設に降り立ち、騒ぎを起こしています。
でも、それは可愛い方。
中東では、ドローンこと無人攻撃機で民間人が誤爆による犠牲になっています。
「精密誘導ミサイル」と言いながら、テロとは関係のない神学校を爆撃。何が「精密」かと疑われます。