沈むアベノミクス① マイナス成長 雇用破壊で消費低迷
日本経済の失速が鮮明になっています。安倍晋三政権の始動から3年。アベノミクスが内需を押しつぶしています。(佐久間亮、杉本恒如)
内閣府が15日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率1・4%のマイナス成長でした。最大の要因は、前期比0・8%減となった個人消費の大幅な落ち込みでした。
「(今年の冬が)暖かいことが非常に大きく影響して個人消費が下がった」(麻生太郎財務相)
暖冬に原因を求める政府に対し、エコノミストからは「暖冬は外出機会の増加につながるため、消費にとっては追い風になり得る要因でもある」(第一生命経済研究所15日付リポート)など疑問の声が上がっています。
消費税の増税で
同リポートは、今回のGDP速報の個人消費は、消費税を5%から8%へ引き上げた直後の13年4~6月期と比べても少ないと指摘。「消費税増税によって実質賃金の水準が下がり、その後の戻りも鈍いことに加え、節約志向の強さがいまだに解消されないことが影響している」と分析します。
消費税増税と実質賃金低下に原因を求めているのは、第一生命経済研究所だけではありません。ニッセイ基礎研究所16日付リポートは、「企業収益の改善や政府からの賃上げ要請を受けて久しぶりにベースアップを実施する企業が相次いだが、雇用の非正規化によって賃金水準の低い労働者が増えた」とし、「消費低迷の主因は実質雇用者所得の低迷にある」と結論づけています。
また、安倍政権が始動した12年10~12月期のGDPと今回の数字を比べると、個人消費が1・3%(約4兆円)、住宅投資が2・7%(約4000億円)も減少していることを指摘。「家計部門はアベノミクス始動後の経済成長に全く貢献していない」と3年間を総括しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/39/b512a933b346d42e91e3ed92d0309add.jpg)
商店街で買い物をする人=東京都内
大企業は大増益
事実、大企業の業績は大幅に改善しています。法人企業統計の直近データである15年7~9月期(8・8兆円)の経常利益を安倍政権が誕生する直前の12年7~9月期(6兆円)と比べると、5割近い大増益になっています。
一方、厚生労働省が16日発表した労働力調査詳細集計は、自民党政権による労働法制改悪によって正規雇用から非正規雇用への置き換えが進んでいることを明らかにしました。安倍政権の3年間(12年10~12月期から15年10~12月期)に正規雇用が23万人減り、非正規雇用が172万人も増えています。その結果、実質賃金指数(10年日100)は12年の99・2から15年速報の94・6と、4・6ポイントも減少しました。
賃金が上がらないところへ増税や社会保障改悪、物価上昇が追い討ちをかけています。勤労者世帯(2人以上世帯)の月額の実質可処分所得は1997年の47万9302円をピークに年々減り続け、15年には40万8649円と85年の41万3835円を下回る異常事態となっています。
内需が総崩れとなった今回のGDP速報で、企業の設備投資は前期比1・4%増と唯一の好材料となりました。しかし、大手民間シンクタンクのエコノミストは「老朽化した施設の更新投資が主で新設投資は少ない。長期的にもこの傾向は変わらない」と冷めた評価です。先行指標である機械受注が低調に推移していることなどから、前出のニッセイ基礎研究所のリポートも「景気のけん引役となるには力不足」と評価しています。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月25日付掲載
労働者の実質賃金が下がり、社会保障などの負担増で可処分所得が減っている。
消費が伸び悩んでいるのは当然の事。
大幅賃上げと、社会保障の連続改悪のストップを
日本経済の失速が鮮明になっています。安倍晋三政権の始動から3年。アベノミクスが内需を押しつぶしています。(佐久間亮、杉本恒如)
内閣府が15日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率1・4%のマイナス成長でした。最大の要因は、前期比0・8%減となった個人消費の大幅な落ち込みでした。
「(今年の冬が)暖かいことが非常に大きく影響して個人消費が下がった」(麻生太郎財務相)
暖冬に原因を求める政府に対し、エコノミストからは「暖冬は外出機会の増加につながるため、消費にとっては追い風になり得る要因でもある」(第一生命経済研究所15日付リポート)など疑問の声が上がっています。
消費税の増税で
同リポートは、今回のGDP速報の個人消費は、消費税を5%から8%へ引き上げた直後の13年4~6月期と比べても少ないと指摘。「消費税増税によって実質賃金の水準が下がり、その後の戻りも鈍いことに加え、節約志向の強さがいまだに解消されないことが影響している」と分析します。
消費税増税と実質賃金低下に原因を求めているのは、第一生命経済研究所だけではありません。ニッセイ基礎研究所16日付リポートは、「企業収益の改善や政府からの賃上げ要請を受けて久しぶりにベースアップを実施する企業が相次いだが、雇用の非正規化によって賃金水準の低い労働者が増えた」とし、「消費低迷の主因は実質雇用者所得の低迷にある」と結論づけています。
また、安倍政権が始動した12年10~12月期のGDPと今回の数字を比べると、個人消費が1・3%(約4兆円)、住宅投資が2・7%(約4000億円)も減少していることを指摘。「家計部門はアベノミクス始動後の経済成長に全く貢献していない」と3年間を総括しました。
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商店街で買い物をする人=東京都内
大企業は大増益
事実、大企業の業績は大幅に改善しています。法人企業統計の直近データである15年7~9月期(8・8兆円)の経常利益を安倍政権が誕生する直前の12年7~9月期(6兆円)と比べると、5割近い大増益になっています。
一方、厚生労働省が16日発表した労働力調査詳細集計は、自民党政権による労働法制改悪によって正規雇用から非正規雇用への置き換えが進んでいることを明らかにしました。安倍政権の3年間(12年10~12月期から15年10~12月期)に正規雇用が23万人減り、非正規雇用が172万人も増えています。その結果、実質賃金指数(10年日100)は12年の99・2から15年速報の94・6と、4・6ポイントも減少しました。
賃金が上がらないところへ増税や社会保障改悪、物価上昇が追い討ちをかけています。勤労者世帯(2人以上世帯)の月額の実質可処分所得は1997年の47万9302円をピークに年々減り続け、15年には40万8649円と85年の41万3835円を下回る異常事態となっています。
内需が総崩れとなった今回のGDP速報で、企業の設備投資は前期比1・4%増と唯一の好材料となりました。しかし、大手民間シンクタンクのエコノミストは「老朽化した施設の更新投資が主で新設投資は少ない。長期的にもこの傾向は変わらない」と冷めた評価です。先行指標である機械受注が低調に推移していることなどから、前出のニッセイ基礎研究所のリポートも「景気のけん引役となるには力不足」と評価しています。(つづく)(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年2月25日付掲載
労働者の実質賃金が下がり、社会保障などの負担増で可処分所得が減っている。
消費が伸び悩んでいるのは当然の事。
大幅賃上げと、社会保障の連続改悪のストップを