きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

酷暑の祭典 東京五輪・パラリンピック③ 事故対応 欧米との差 埋める好機に

2017-08-22 12:53:23 | スポーツ・運動について
酷暑の祭典 東京五輪・パラリンピック③ 事故対応 欧米との差 埋める好機に

「そもそも欧米と日本の安全対策には、雲泥の差があります」
熱中症などのスポーツ事故を防ぐ環境づくりに力を入れるスポーツセーフティージャパン代表理事の佐保豊さん(45)は、日本の現状を嘆きます。
米国でアスレチックトレーナー(AT)の資格を取得した佐保さん。海外のプロサッカークラブで、選手のけがの緊急対応や復帰までのトレーニング、障害を予防する環境づくりの専門家として奔走してきました。

なきに等しい
6年後、日本に戻って「ずさんな状況に愕然(がくぜん)とした」と話します。
「学校の部活からプロ野球、サッカーも含め安全対策がなきに等しい状況。この基準で東京五輪の準備をしたらどうなるのか」。強い危惧を抱いています。
欧米のスポーツ大会では、事故防止対策や事故が起きたときの対応が確立しています。医師の配置、救急車の確保も義務付けられています。一方、「日本ではまだ事故対応を考え始めた段階。五輪でどれだけの体制が整えられるか」。
2015年にラグビー・ワールドカップ(W杯)を開催したイングランド。同国では海外の医師による医療行為が法的に禁じられています。そこで法改正をし、大会中に海外のチームドクターが選手の医療行為をできるようにしました。
「日本はそこもグレー。19年のラグビーW杯でも五輪でもこれは絶対に必要です」と強調します。



2015年ラグビーW杯イングラド大会で日本選手のけがの状態をみるメディカルスタッフ(AFP時事)

米国の常識は
佐保さんが学んだ米国は、訴訟社会という側面はあるものの、選手の健康を第一にした運営が常識となっています。
多くのATがスポーツ現場に雇われ、全米大学体育協会(NCAA)もATがいないチームは安全確保が十分でないとして、大会に出場できません。公立高校の運動部には自治体が予算を出します。12年前は4割程度のATの配置率が現在は80%以上に広がっています。
またスポーツ事故はすべて報告義務があります。
「NCAAの各競技団体は毎年それらを分析し、傾向を探り、効果的な対策をたてます。それでスポーツのルールが変わることもあります」
たとえば一昨年、米国のサッカーでは10歳以下のヘディング禁止を打ち出しました。脳振とう防止のためです。脳振とうは検査の画像に写らないことが多く、時間が経って発症することもあり、スポーツ界で大きな問題となっています。同時にこのケースでは「ルール改正以上に、指導者や選手を含めた関係者に対する教育プログラムの徹底が改革のメインです」と佐保さんは語ります。
日本でも死亡・重度の障害は心臓疾患、頭部、さらには熱中症によるものが多くを占めます。しかし、その統計は不十分です。「日本はずっと正確な数さえつかめていない上、学校などは事故を隠そうとする。だから、いつまでたってもきちんと対策が立てられていません」
それだけに2020年は、海外の高い安全対策の基準を日本にもちこむ好機でもあります。
「スポーツは安全があって初めて成り立ちます。これをしっかり位置付ければ、日本のスポーツ界にとって一番のレガシー(遺産)になる」。佐保さんはそのために声をあげ続けるつもりです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月21日付掲載


スポーツは安全におこなってこそ、本来の力を発揮できるものです。東京五輪・パラリンピックを機に日本でも対策を強化してほしいものです。
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