これでわかる 安倍「働き方改革」③ 裁量労働制の拡大 営業職ただ働き広げる
安倍「働き方改革」では、仕事の進め方などを労働者の裁量に委ねる「裁量労働制」を、営業職などにも拡大することをねらっています。
裁量労働制は、仕事の仕方を労働者の裁量に委ねる必要がある業務が対象で、使用者が出退勤時間などについて具体的な指示をしない働き方です。
労働時間は、実際に働いた時間に関係なく労使で協定した時間を労働時間とみなします。労使協定で8時間と決めれば、実際は10時間働いても残業代は支払われません。長時間・サービス労働の温床になっていると指摘されてきました。
裁量労働制には、専門業務型(1988年導入)と、企画業務型(2000年導入)の2種類があります。
専門業務は、新商品の研究開発、情報システムの分析・設計など19業務。企画業務型は、企業の中枢部門で企画、立案、調査、分析の業務が対象です。
厚労省の調査(2013年)によると、裁量労働の労働者は、最長で12時間以上働く人がいる企業の割合が、専門業務型で53%、企画業務型で45%にのぼっており、長時間労働が助長されています。
ただし、裁量労働制で働く労働者の割合は専門業務型1・2%、企画業務型0・3%にとどまっているため、財界・大企業は規制緩和や対象拡大を求めてきました。
提案営業に導入
政府案では、企画業務型に対して、「課題解決型提案営業」と「実施状況の評価を行う業務」を加えます。
「提案営業」とは、過労自殺した電通の新人女性社員が担当していた業務です。商品やサービスを売るだけでなく、顧客の要望にあわせて商品・サービスを提供する業務です。いまや営業の多くはこうした提案営業の側面を抱えています。
これが裁量労働に加えられると、飛躍的に裁量労働で働く労働者が増えることになります。成果を求められるため、電通社員のように、月100時間をこえる長時間労働になっても自己責任にされてしまい、長時間・サービス残業に拍車をかけるのは必至です。
裁量労働制では、裁量もない業務にまで適用されていることが問題になっています。
厚労省の調査(同)によると、「一律の出退勤時刻がある」が専門業務型で42・3%、企画業務型で50・9%。ほぼ半数がタイムカードなどで労働時間の申告が義務付けられています。遅刻すると上司から注意されるなど厳しい管理下に置かれており、「裁量」などありません。
しかも、対象外の業務にまで導入されているのが実態です。
脱法導入許さず
損保最大手の損保ジャパン興亜では、対象業務になっていない支店や支社の一般営業職に導入。職員1万8千人のうち6374人が対象とされ、昨年4~8月の残業時間は、月20時間の「みなし時間」の2倍でした。
この脱法的やり方を労働者が告発し、日本共産党の小池晃参院議員が国会で取り上げたことで問題となり、同社は10月から一般営業職への拡大を撤回することになりました。
しかし、改悪案が通れば、こうした違法な働かせ方が合法化されることになります。裁量労働制は拡大せず、脱法的やり方などを許さないように厳しく規制することが必要となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月25日付掲載
裁量労働と言いながら、実際はノルマを求められているのが実態。
その裁量労働の適用範囲をひろげるなんてもってのほかですね。
安倍「働き方改革」では、仕事の進め方などを労働者の裁量に委ねる「裁量労働制」を、営業職などにも拡大することをねらっています。
裁量労働制は、仕事の仕方を労働者の裁量に委ねる必要がある業務が対象で、使用者が出退勤時間などについて具体的な指示をしない働き方です。
労働時間は、実際に働いた時間に関係なく労使で協定した時間を労働時間とみなします。労使協定で8時間と決めれば、実際は10時間働いても残業代は支払われません。長時間・サービス労働の温床になっていると指摘されてきました。
裁量労働制には、専門業務型(1988年導入)と、企画業務型(2000年導入)の2種類があります。
専門業務は、新商品の研究開発、情報システムの分析・設計など19業務。企画業務型は、企業の中枢部門で企画、立案、調査、分析の業務が対象です。
厚労省の調査(2013年)によると、裁量労働の労働者は、最長で12時間以上働く人がいる企業の割合が、専門業務型で53%、企画業務型で45%にのぼっており、長時間労働が助長されています。
ただし、裁量労働制で働く労働者の割合は専門業務型1・2%、企画業務型0・3%にとどまっているため、財界・大企業は規制緩和や対象拡大を求めてきました。
提案営業に導入
政府案では、企画業務型に対して、「課題解決型提案営業」と「実施状況の評価を行う業務」を加えます。
「提案営業」とは、過労自殺した電通の新人女性社員が担当していた業務です。商品やサービスを売るだけでなく、顧客の要望にあわせて商品・サービスを提供する業務です。いまや営業の多くはこうした提案営業の側面を抱えています。
これが裁量労働に加えられると、飛躍的に裁量労働で働く労働者が増えることになります。成果を求められるため、電通社員のように、月100時間をこえる長時間労働になっても自己責任にされてしまい、長時間・サービス残業に拍車をかけるのは必至です。
裁量労働制では、裁量もない業務にまで適用されていることが問題になっています。
厚労省の調査(同)によると、「一律の出退勤時刻がある」が専門業務型で42・3%、企画業務型で50・9%。ほぼ半数がタイムカードなどで労働時間の申告が義務付けられています。遅刻すると上司から注意されるなど厳しい管理下に置かれており、「裁量」などありません。
しかも、対象外の業務にまで導入されているのが実態です。
脱法導入許さず
損保最大手の損保ジャパン興亜では、対象業務になっていない支店や支社の一般営業職に導入。職員1万8千人のうち6374人が対象とされ、昨年4~8月の残業時間は、月20時間の「みなし時間」の2倍でした。
この脱法的やり方を労働者が告発し、日本共産党の小池晃参院議員が国会で取り上げたことで問題となり、同社は10月から一般営業職への拡大を撤回することになりました。
しかし、改悪案が通れば、こうした違法な働かせ方が合法化されることになります。裁量労働制は拡大せず、脱法的やり方などを許さないように厳しく規制することが必要となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月25日付掲載
裁量労働と言いながら、実際はノルマを求められているのが実態。
その裁量労働の適用範囲をひろげるなんてもってのほかですね。