これでわかる 安倍「働き方改革」④ 「同一労働同一賃金」 格差を温存・固定化
安倍晋三首相は「非正規という言葉を一掃する」「同一労働同一賃金を実現する」と繰り返してきました。
「同一労働同一賃金」とは、同じ価値を持つ労働をすれば、同じ賃金、同じ処遇をしなければならないという考え方です。
しかし、政府案では基本給や一時金(賞与)について、企業が判断する能力や業績、企業への貢献、人材活用の仕組みなどで「違いに応じた支給」をすればよいとしました。
格差を温存・固定化するものであり、「同一労働同一賃金」の名に値しません。
人材活用で差別
具体例を示した「ガイドライン(指針)案」では、「管理職コースの正社員の基本給が、同じ仕事をするパート社員より高い」とか、「目標達成の責任やペナルティーがないパート社員より、ペナルティーなどがある正社員の基本給が高い」というケースは問題とならないとしています。
賞与(ボーナス、一時金)についても、まったく支給しないのは問題だとするものの、「会社への貢献」に応じて格差をつけることを認めています。
通勤手当や食事手当など各種手当については同一・同率の支給とし、食堂など福利厚生施設についても同一の利用を求めています。
ただし、パート社員が採用された区域外へ転居した場合、通勤手当は採用区域内の分しか支給せず、正社員には全額支給しても問題ないとしています。
これでは勤務地変更がないパート・有期労働者の格差是正にはつながりません。ILO(国際労働機関)パート労働条約175号でこうした違いは認められておらず、世界的流れに逆行しています。
欧州で取り組まれている男女間の賃金差別の是正もまったく取り上げていません。
経団連は、企業が判断する「仕事・役割・貢献度」に応じて処遇すべきだと主張。正社員も非正規社員も企業の都合のいいように働かせる仕組みを求めてきました。こうした要求に沿う内容です。

■格差容認のガイドライン案
立証の責任なく
政府案では、企業に対して不合理な格差の立証責任を求めず、労働者に説明すればよいとしました。しかし、仕事などを評価するのは使用者です。労働者に立証責任を課したままでは、是正を求めることも困難になります。立証責任は企業側に義務付けるべきです。
郵政グループでは、約19万人もの非正規労働者の多くが正社員と同じ職務や責任を担って働いています。
しかし、非正規社員には年末・年始手当や住居手当、夜間手当もなく、夏季・年末手当は年間100万円近い格差があります。夏期・冬期休暇もなく、病気休暇も無給です。
労働者は不合理な格差だとして裁判で是正を求めています。ところが、会社側は「人材活用の仕組み」の違いを理由に正当化しています。政府案ではこうした格差にお墨付きを与えかねません。格差を固定化する「抜け穴」を許さず、雇用形態や性別などすべての差別を禁止し、同一労働同一賃金の実現につながる法改正が求められています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月26日付掲載
非正規で多くの労働者を安い賃金で雇い、正規労働者と同じ仕事をさせている郵政グループは有名。
巨大企業から正していくことが求められます。
安倍晋三首相は「非正規という言葉を一掃する」「同一労働同一賃金を実現する」と繰り返してきました。
「同一労働同一賃金」とは、同じ価値を持つ労働をすれば、同じ賃金、同じ処遇をしなければならないという考え方です。
しかし、政府案では基本給や一時金(賞与)について、企業が判断する能力や業績、企業への貢献、人材活用の仕組みなどで「違いに応じた支給」をすればよいとしました。
格差を温存・固定化するものであり、「同一労働同一賃金」の名に値しません。
人材活用で差別
具体例を示した「ガイドライン(指針)案」では、「管理職コースの正社員の基本給が、同じ仕事をするパート社員より高い」とか、「目標達成の責任やペナルティーがないパート社員より、ペナルティーなどがある正社員の基本給が高い」というケースは問題とならないとしています。
賞与(ボーナス、一時金)についても、まったく支給しないのは問題だとするものの、「会社への貢献」に応じて格差をつけることを認めています。
通勤手当や食事手当など各種手当については同一・同率の支給とし、食堂など福利厚生施設についても同一の利用を求めています。
ただし、パート社員が採用された区域外へ転居した場合、通勤手当は採用区域内の分しか支給せず、正社員には全額支給しても問題ないとしています。
これでは勤務地変更がないパート・有期労働者の格差是正にはつながりません。ILO(国際労働機関)パート労働条約175号でこうした違いは認められておらず、世界的流れに逆行しています。
欧州で取り組まれている男女間の賃金差別の是正もまったく取り上げていません。
経団連は、企業が判断する「仕事・役割・貢献度」に応じて処遇すべきだと主張。正社員も非正規社員も企業の都合のいいように働かせる仕組みを求めてきました。こうした要求に沿う内容です。

■格差容認のガイドライン案
待遇項目 | 主な内容 |
基本給 | 能力などに応じて格差 |
一時金 | 貢献などに応じて格差 |
役職手当 | 役職・責任に応じて格差 |
教育訓練 | 職務などに応じて格差 |
その他手当 | 通勤手当は採用区域内 |
福利厚生 | 食堂、休憩室は同一 |
立証の責任なく
政府案では、企業に対して不合理な格差の立証責任を求めず、労働者に説明すればよいとしました。しかし、仕事などを評価するのは使用者です。労働者に立証責任を課したままでは、是正を求めることも困難になります。立証責任は企業側に義務付けるべきです。
郵政グループでは、約19万人もの非正規労働者の多くが正社員と同じ職務や責任を担って働いています。
しかし、非正規社員には年末・年始手当や住居手当、夜間手当もなく、夏季・年末手当は年間100万円近い格差があります。夏期・冬期休暇もなく、病気休暇も無給です。
労働者は不合理な格差だとして裁判で是正を求めています。ところが、会社側は「人材活用の仕組み」の違いを理由に正当化しています。政府案ではこうした格差にお墨付きを与えかねません。格差を固定化する「抜け穴」を許さず、雇用形態や性別などすべての差別を禁止し、同一労働同一賃金の実現につながる法改正が求められています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月26日付掲載
非正規で多くの労働者を安い賃金で雇い、正規労働者と同じ仕事をさせている郵政グループは有名。
巨大企業から正していくことが求められます。