労働講座 きほんのき⑪ 年次有給休暇 取得 守られるべき権利
夏休みをとって家族でゆっくり過ごしたいと思っても、有給休暇(年休)が取れない、取りづらいというのが日本の労働者の悩みです。どうしてでしょうか。
日本では、6カ月継続勤務(出勤率8割)すると10日の有給休暇が取得できます。このあと勤続1年ごとに取得日数が増え、6年後に20日になって、それが上限です。パートでも、週1日勤務で6カ月後に1日の有給休暇が取れます。
長期バカンスで知られるフランスは、10日勤務すると有給休暇が30日です。そのうち2週間は連続で与えなければならないと法律で定めています。しかも取得率100%です。日本とは大違いですが、フランスが特別なのではありません。
ILO(国際労働機関)の有給休暇条約は、1年勤務した労働者に3週間の権利があり、そのうち2週間は連続にすると定めています(1970年採択、日本は未批准)。これが国際水準です。
これに比べて日本は日数で見劣りするうえに、取得率が5割以下です。民間企業の有給休暇は、2015年の付与日数が18・1日で、実際に取得したのは8・8日。取得率48・7%という低さです。(厚生労働省「就労条件総合調査」)

人員不足が障害
なぜ日本の労働者は有給休暇が取れないのか。労働政策研究・研修機構の意識調査によると、労働者の65・5%が取得に「ためらいを感じる」といい、その理由として「みんなに迷惑がかかる」というのが71・6%です。リストラで人員が減らされ、大量の仕事を少ない人数で長時間労働でこなしているため、休むと同僚にしわ寄せがいく実態を示しています。
インターネットプロバイダーの「ビッグローブ」が7月にまとめた調査では、取得できない理由で一番多い回答(複数回答)が「職場に休める空気がない」(33・6%)です。
「職場に休める空気がない」というのは、つまり企業側が「有給休暇を与えなければならない」(労働基準法39条)という義務を果たさず、与える努力を何もしていないことを示しています。
時効で消滅する
日本の有給休暇は、1年間繰り越すことができます。しかしそれで消化できなければ消滅する制度です。企業が何もせず知らん顔をしていれば時効で消えていくわけです。企業責任は問われません。これでは与える努力をしないのは当然です。
有給休暇が時効消滅する制度をもつ国が日本以外にあるのか、厚生労働省に問い合わせたところ、答えは「見当たらない」です。労働者の大事な権利が時効で消滅する制度は、明らかに異常です。有給休暇を消化せずに繰り越した場合は労働基準監督署への報告を企業に義務付けるなど何らかの規制措置を検討するべきです。
違法な欠勤扱い
さらに有給休暇の取得率が低い要因として、精勤・皆勤手当や賞与の算定で欠勤扱いする企業が少なくない問題があります。
いま精皆勤手当制度がある企業は29・3%、ほぼ3割です。支給額は月平均1万500円(2015年、厚生労働省調査)。有給休暇が欠勤扱いされてこれが支給されなくなったら労働者にとって損失です。
労働基準法には、有給休暇取得による賃金減額などの不利益扱いを禁止する規定があり(第136条)、それを周知する通達も出ています。しかし努力規定にとどまり、効力が弱いのが現実です。
さらに裁判では最高裁が、精勤手当の金額の大小で判断して、労働者の訴えを退ける判決を出しています(沼津交通事件、1993年6月25日)。
有給休暇の欠勤扱いはどんなケースでも違法だという明確な態度を政府が示して、根絶に当たるべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月22日付掲載
年休を取ろうと思っても、休みづらい環境。企業側が、人員確保や事業計画などで休める環境整備が求められます。
年休とると皆勤手当てを出さないなんてナンセンス。
夏休みをとって家族でゆっくり過ごしたいと思っても、有給休暇(年休)が取れない、取りづらいというのが日本の労働者の悩みです。どうしてでしょうか。
日本では、6カ月継続勤務(出勤率8割)すると10日の有給休暇が取得できます。このあと勤続1年ごとに取得日数が増え、6年後に20日になって、それが上限です。パートでも、週1日勤務で6カ月後に1日の有給休暇が取れます。
長期バカンスで知られるフランスは、10日勤務すると有給休暇が30日です。そのうち2週間は連続で与えなければならないと法律で定めています。しかも取得率100%です。日本とは大違いですが、フランスが特別なのではありません。
ILO(国際労働機関)の有給休暇条約は、1年勤務した労働者に3週間の権利があり、そのうち2週間は連続にすると定めています(1970年採択、日本は未批准)。これが国際水準です。
これに比べて日本は日数で見劣りするうえに、取得率が5割以下です。民間企業の有給休暇は、2015年の付与日数が18・1日で、実際に取得したのは8・8日。取得率48・7%という低さです。(厚生労働省「就労条件総合調査」)

人員不足が障害
なぜ日本の労働者は有給休暇が取れないのか。労働政策研究・研修機構の意識調査によると、労働者の65・5%が取得に「ためらいを感じる」といい、その理由として「みんなに迷惑がかかる」というのが71・6%です。リストラで人員が減らされ、大量の仕事を少ない人数で長時間労働でこなしているため、休むと同僚にしわ寄せがいく実態を示しています。
インターネットプロバイダーの「ビッグローブ」が7月にまとめた調査では、取得できない理由で一番多い回答(複数回答)が「職場に休める空気がない」(33・6%)です。
「職場に休める空気がない」というのは、つまり企業側が「有給休暇を与えなければならない」(労働基準法39条)という義務を果たさず、与える努力を何もしていないことを示しています。
時効で消滅する
日本の有給休暇は、1年間繰り越すことができます。しかしそれで消化できなければ消滅する制度です。企業が何もせず知らん顔をしていれば時効で消えていくわけです。企業責任は問われません。これでは与える努力をしないのは当然です。
有給休暇が時効消滅する制度をもつ国が日本以外にあるのか、厚生労働省に問い合わせたところ、答えは「見当たらない」です。労働者の大事な権利が時効で消滅する制度は、明らかに異常です。有給休暇を消化せずに繰り越した場合は労働基準監督署への報告を企業に義務付けるなど何らかの規制措置を検討するべきです。
違法な欠勤扱い
さらに有給休暇の取得率が低い要因として、精勤・皆勤手当や賞与の算定で欠勤扱いする企業が少なくない問題があります。
いま精皆勤手当制度がある企業は29・3%、ほぼ3割です。支給額は月平均1万500円(2015年、厚生労働省調査)。有給休暇が欠勤扱いされてこれが支給されなくなったら労働者にとって損失です。
労働基準法には、有給休暇取得による賃金減額などの不利益扱いを禁止する規定があり(第136条)、それを周知する通達も出ています。しかし努力規定にとどまり、効力が弱いのが現実です。
さらに裁判では最高裁が、精勤手当の金額の大小で判断して、労働者の訴えを退ける判決を出しています(沼津交通事件、1993年6月25日)。
有給休暇の欠勤扱いはどんなケースでも違法だという明確な態度を政府が示して、根絶に当たるべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月22日付掲載
年休を取ろうと思っても、休みづらい環境。企業側が、人員確保や事業計画などで休める環境整備が求められます。
年休とると皆勤手当てを出さないなんてナンセンス。