TPP11の危険 市民団体が指摘① 最悪の農産物輸入自由化
米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)を残り11カ国で交渉したTPP11はチリで8日に合意の署名式が予定されています。しかし、その内容は部分的にしか公表されていません。市民団体の共同組織「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が行った関係省庁ヒアリングで浮かびあがった問題点は―。
問題点の一つは、TPPの最悪の関税撤廃がTPP11に引き継がれ、日本の農業が大きな打撃をこうむることです。

TPP11の害悪をただす市民集会=2月7日、参院議員会館
害はTPP以上
TPP11は、多国籍企業本位のため、雇用悪化、地元優先発注の規制など多分野で問題がありますが、大きな打撃を受けるのは、カロリー自給率が38%に下落している農業分野です。
TPPは、すべての農林水産物が関税削減・撤卸廃の対象になります。国会決議で「除外または再協議」とした重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖)も、関税品目数で約3割の関税が撤廃されます。こうした最悪の農産物輸入自由化協定を、TPP11はすべて「組み込み」ました。
TPPから米国は離脱しましたが、安倍内閣が11カ国交渉で修正要求をしなかったため、「日本の農業に、元のTPPを上回る打撃を与える」との指摘が全国共同行動参加者から出されています。
牛肉・豚肉には、基準以上に輸入量が急増した場合には、元の関税に戻す「緊急輸入制限」(セーフガード)があります。しかし、米国が抜けたもとでは発動基準に達せず、実効性がないとみられています。
TPP11で「低関税の輸入枠」を設定した乳製品は、米国の離脱分の枠を減らすことなくニュージーランドやカナダ、豪州の輸出国が分け取りします。
米国はそれとは別枠で、現行の世界貿易機関(WTO)協定で従来通りの量を日本に輸出できるため、TPP以上の影響が懸念されているのです。
米国要求断れず
TPP11には、米国が復帰するか、米国が復帰せず、2国間交渉に移ったときは「協定の運用を見直す」との条項があります。
しかし、全国共同行動の人たちは、“日本が譲歩分を元に戻そうとしても他の国が応じる保証がない”と指摘し、「なんの気休めにもならない」と批判します。
農民運動全国連合会(農民連)の吉川利明事務局長はいいます。
「TPP11が米国のTPP復帰を見込む一方で、トランプ政権はTPP以上の譲歩を日本に求めてくるでしょう。安倍内閣が米国の要求を断れるとは思えません」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年3月7日付掲載
「TPP11」はアメリカが抜けたから安全になった、日本が主導権をとれるんじゃないかという幻想はダメってことですね。
ニュージーランドやカナダなどの農産物輸出国に主導権を握られてしまう。
米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)を残り11カ国で交渉したTPP11はチリで8日に合意の署名式が予定されています。しかし、その内容は部分的にしか公表されていません。市民団体の共同組織「TPPプラスを許さない!全国共同行動」が行った関係省庁ヒアリングで浮かびあがった問題点は―。
問題点の一つは、TPPの最悪の関税撤廃がTPP11に引き継がれ、日本の農業が大きな打撃をこうむることです。

TPP11の害悪をただす市民集会=2月7日、参院議員会館
害はTPP以上
TPP11は、多国籍企業本位のため、雇用悪化、地元優先発注の規制など多分野で問題がありますが、大きな打撃を受けるのは、カロリー自給率が38%に下落している農業分野です。
TPPは、すべての農林水産物が関税削減・撤卸廃の対象になります。国会決議で「除外または再協議」とした重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖)も、関税品目数で約3割の関税が撤廃されます。こうした最悪の農産物輸入自由化協定を、TPP11はすべて「組み込み」ました。
TPPから米国は離脱しましたが、安倍内閣が11カ国交渉で修正要求をしなかったため、「日本の農業に、元のTPPを上回る打撃を与える」との指摘が全国共同行動参加者から出されています。
牛肉・豚肉には、基準以上に輸入量が急増した場合には、元の関税に戻す「緊急輸入制限」(セーフガード)があります。しかし、米国が抜けたもとでは発動基準に達せず、実効性がないとみられています。
TPP11で「低関税の輸入枠」を設定した乳製品は、米国の離脱分の枠を減らすことなくニュージーランドやカナダ、豪州の輸出国が分け取りします。
米国はそれとは別枠で、現行の世界貿易機関(WTO)協定で従来通りの量を日本に輸出できるため、TPP以上の影響が懸念されているのです。
米国要求断れず
TPP11には、米国が復帰するか、米国が復帰せず、2国間交渉に移ったときは「協定の運用を見直す」との条項があります。
しかし、全国共同行動の人たちは、“日本が譲歩分を元に戻そうとしても他の国が応じる保証がない”と指摘し、「なんの気休めにもならない」と批判します。
農民運動全国連合会(農民連)の吉川利明事務局長はいいます。
「TPP11が米国のTPP復帰を見込む一方で、トランプ政権はTPP以上の譲歩を日本に求めてくるでしょう。安倍内閣が米国の要求を断れるとは思えません」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年3月7日付掲載
「TPP11」はアメリカが抜けたから安全になった、日本が主導権をとれるんじゃないかという幻想はダメってことですね。
ニュージーランドやカナダなどの農産物輸出国に主導権を握られてしまう。