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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

仮想通貨 金融化の申し子③ 行き着く先を暗示

2018-03-16 11:22:59 | 経済・産業・中小企業対策など
仮想通貨 金融化の申し子③ 行き着く先を暗示
中央大学名誉教授 高田太久吉さん

仮想通貨は、通貨でないとすれば、新しい資産なのでしょうか。

使用価値はなし
仮想通貨は、単に保有するだけでは所得を生みません。したがって、株式や債券などと同じ金融資産ではなく、言葉の正確な意味で架空資本でもありません。
その点では、土地や住宅などの不動産に似ています。しかし、土地や住宅は実在する財であり、所有者にとってさまざまな利用可能性(使用価値)があるだけではなく、利潤目的で運用(賃貸)することもできます。これに対して、仮想通貨には投機手段以外に、いかなる意味でも使用価値はありません。言ってみれば、カジノでやりとりされるチップのようなもの、ただし発行体の存在しないバーチャルな(架空の)チップです。
ところが、仮想通貨の取引・仲介業者は、仮想通貨に独自の使用価値を見いだしています。周知のように、現代の証券市場では、借り入れに必要な担保としてであれ、投機目的であれ、株式や債券を金融機関や投資家が貸借する取引がばく大な市場になっています。これにならって、金融業者は、仮想通貨を他の有価証券と同様に、手元資金のない投機家に、投機対象として貸し付けて利益を上げています。
また、現代の証券市場では、一定の証拠金を取引所に積めば、その何倍もの証券売買ができます。これと同様に、仮想通貨交換所は、一定の証拠金と引き換えに、その何倍もの仮想通貨取引を顧客にさせて、取引高をかさ上げし、手数料を稼いでいます。こうしたサービスを利用するのは、仮想通貨投機を専門にする多数のヘッジファンドです。
要するに、仮想通貨は、あたかも株式や社債と同じ有価証券であるかのごとく取り扱われており、その意味で仮想通貨市場は、「カジノ化」が進む現代の証券市場に限りなく近くなっています。
しかし、株式や債券は、発行体が存在し、発行体が所有者に将来の貨幣支払い(キャッシュフロー)を約束した契約を化体(かたい)(注1)しています。



記者会見で頭を下げるコインチェック社の社長(左)=3月8日、東京都内

価格変動を利用
これに対して、すでに述べたように、仮想通貨に発行体はなく、それ自体にはいかなる意味でも将来の所得は化体されていません。このような純粋に無価値な、サイバー空間につくられた「資産」が、株式や債券と同様に「価格」をもつ投機対象として取引される状況は、現代資本主義の金融化が行き着く先を暗示しているといえます。その意味でも、仮想通貨は金融化の申し子です。
ただし、念のために言えば、無価値な「資産」を対象とする投機取引のまん延は、仮想通貨の登場ではじめて生じたわけではありません。
資本による投機、つまり価格変動を利用したサヤ取り取引は本質的に、資産の使用価値(有用性)から遊離した利殖活動です。
古くから行われている商品先物取引は、将来の取引価格の確定という合理的目的と同時に、単なる値上がり益狙いという、商品の本来の使用価値とは無関係な投機目的で利用されてきました。例えば、1990年代の原油価格の値上がりをけん引した先物取引を主導したのは、大量の原油を必要とする精油会社や石油販売業者ではなく、米国の金融街、ウォール街の投資銀行でした。
現在の商品市場や証券市場で広く行われている差金決済(注2)は、投機資本にとっては、純粋にサヤ取りが目的であり、取引する商品や証券に対する実際の需要とはかかわりがありません。

(注1)抽象的な事柄を具体的な形のあるもので表すこと。特に、権利を有価証券の形で表すこと。
(注2)決済日に現物の受け渡しを行わず、価格変動から生じる売買差額の清算だけを行う先物取引。

(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年3月15日付掲載


仮想通貨は資産として機能していますが、株式や債券のように発行体は存在しない。
ビットコインやコインチェックは、仮想通貨の取引の場を提供しているだけで、発行体ではないのです。
「仮想通貨には投機手段以外に、いかなる意味でも使用価値はありません。言ってみれば、カジノでやりとりされるチップのようなもの、ただし発行体の存在しないバーチャルな(架空の)チップ」