白書が描く経済② エネルギー 価格高騰 一過性ではない
ロシアのウクライナ侵略を機に、エネルギー資源を他国に依存する日本の姿が浮き彫りとなりました。経済産業省「エネルギー白書」は、世界的にエネルギー需給が逼迫(ひっぱく)する中、国内のエネルギー価格の上昇はコ過性のものにとどまらない可能性」があると指摘します。
資源依存大国
「白書」によると、日本の石油や石炭などの一次エネルギー自給率は2020年にわずか11%でした。米国106%、カナダ179%、英国75%、フランス55%、ドイツ35%、イタリア25%と主要7力国(G7)の中でも突出して低くなっています。(グラフ)
日本は原油および液化天然ガス(LNG)のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。特に、原油は91・7%を中東に頼っており、LNGも豪州やマレーシア、カタールといった特定の産ガス国から調達してきました。ロシアからの原油、LNGの輸入は、それぞれ日本の輸入量全体の3・6%、8・8%を占めます。
「白書」はエネルギー資源の依存大国である日本の現状を「脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー供給構造」だと指摘し、価格高騰問題を論じています。
原油価格などの上昇に伴い、日本の国内企業物価は21年2月に前年同月から9・3%増えました。1980年12月の第2次石油危機(10・4%増)以来の歴史的な上昇率です。輸入物価(円ベース)も同34・0%増え、リーマン・ショック直前の08年8月以来の高水準を記録しました。
ロシアのウクライナ侵略以降、22年3月の日本の電気代、ガス代、ガソリン代は19年1月と比べ約1~3割上昇しており、企業・家計への影響も決して小さくありません。
複合的な要因
「白書」は、世界的なエネルギー価格高騰の背景には複合的な要因があると分析。具体的に、①上流投資不足②エネルギー消費量の回復③電力供給構造の変化④各国の電力需給逼迫⑤欧州の天然ガス貯蔵量減少1の5点を挙げています。
脱炭素の流れを受け、14年以降、化石資源開発への投資が縮小しました。そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大。世界的な経済活動の停滞により、20年の世界の一次エネルギー消費量は4・5%減りました。第2次世界大戦後最大の減少です。その後、経済が回復し始めた21年を境に天然ガスをはじめとしたエネルギー需要が急増したため、需要に対して供給が追い付かない状態となりました。
同時期、世界的に天候不順や災害が多発し風力や水力の発電量が低迷。穴埋めとして主に天然ガスの需要が増えました。日本も21年1月に寒波に見舞われ、燃料が不足して需給が逼迫、LNGと卸電力前日のスポット価格が高騰しました。
そこへ追い打ちをかけたのが、ロシアによるウクライナへの侵略です。再生可能エネルギーを拡大しつつ調整弁として低炭素の天然ガスを使用してきた欧州にとって、ロシア依存が足かせとなり、需給が著しく逼迫し価格も大きく変動。世界的なエネルギー価格の高騰に拍車をかけています。
「白書」は、「エネルギー価格が継続的に高い水準で推移すれば、製品価格の上昇と購買力の低下等を通じて、各国の経済活動の大きな足かせになるのみならず、政治・経済・社会にさらなる悪影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らしています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月10日付掲載
脱炭素の流れを受け、14年以降、化石資源開発への投資が縮小。そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大。世界的な経済活動の停滞により、20年の世界の一次エネルギー消費量は4・5%減。第2次世界大戦後最大の減少。その後、経済が回復し始めた21年を境に天然ガスをはじめとしたエネルギー需要が急増したため、需要に対して供給が追い付かない状態。
「白書」は、「エネルギー価格が継続的に高い水準で推移すれば、製品価格の上昇と購買力の低下等を通じて、各国の経済活動の大きな足かせになるのみならず、政治・経済・社会にさらなる悪影響を及ぼしかねない」と警鐘。
とりわけ、日本のエネルギー自給率11%は異常。100%自給できる自然エネルギーへのシフトが求められます。
ロシアのウクライナ侵略を機に、エネルギー資源を他国に依存する日本の姿が浮き彫りとなりました。経済産業省「エネルギー白書」は、世界的にエネルギー需給が逼迫(ひっぱく)する中、国内のエネルギー価格の上昇はコ過性のものにとどまらない可能性」があると指摘します。
資源依存大国
「白書」によると、日本の石油や石炭などの一次エネルギー自給率は2020年にわずか11%でした。米国106%、カナダ179%、英国75%、フランス55%、ドイツ35%、イタリア25%と主要7力国(G7)の中でも突出して低くなっています。(グラフ)
日本は原油および液化天然ガス(LNG)のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。特に、原油は91・7%を中東に頼っており、LNGも豪州やマレーシア、カタールといった特定の産ガス国から調達してきました。ロシアからの原油、LNGの輸入は、それぞれ日本の輸入量全体の3・6%、8・8%を占めます。
「白書」はエネルギー資源の依存大国である日本の現状を「脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー供給構造」だと指摘し、価格高騰問題を論じています。
原油価格などの上昇に伴い、日本の国内企業物価は21年2月に前年同月から9・3%増えました。1980年12月の第2次石油危機(10・4%増)以来の歴史的な上昇率です。輸入物価(円ベース)も同34・0%増え、リーマン・ショック直前の08年8月以来の高水準を記録しました。
ロシアのウクライナ侵略以降、22年3月の日本の電気代、ガス代、ガソリン代は19年1月と比べ約1~3割上昇しており、企業・家計への影響も決して小さくありません。
複合的な要因
「白書」は、世界的なエネルギー価格高騰の背景には複合的な要因があると分析。具体的に、①上流投資不足②エネルギー消費量の回復③電力供給構造の変化④各国の電力需給逼迫⑤欧州の天然ガス貯蔵量減少1の5点を挙げています。
脱炭素の流れを受け、14年以降、化石資源開発への投資が縮小しました。そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大。世界的な経済活動の停滞により、20年の世界の一次エネルギー消費量は4・5%減りました。第2次世界大戦後最大の減少です。その後、経済が回復し始めた21年を境に天然ガスをはじめとしたエネルギー需要が急増したため、需要に対して供給が追い付かない状態となりました。
同時期、世界的に天候不順や災害が多発し風力や水力の発電量が低迷。穴埋めとして主に天然ガスの需要が増えました。日本も21年1月に寒波に見舞われ、燃料が不足して需給が逼迫、LNGと卸電力前日のスポット価格が高騰しました。
そこへ追い打ちをかけたのが、ロシアによるウクライナへの侵略です。再生可能エネルギーを拡大しつつ調整弁として低炭素の天然ガスを使用してきた欧州にとって、ロシア依存が足かせとなり、需給が著しく逼迫し価格も大きく変動。世界的なエネルギー価格の高騰に拍車をかけています。
「白書」は、「エネルギー価格が継続的に高い水準で推移すれば、製品価格の上昇と購買力の低下等を通じて、各国の経済活動の大きな足かせになるのみならず、政治・経済・社会にさらなる悪影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らしています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月10日付掲載
脱炭素の流れを受け、14年以降、化石資源開発への投資が縮小。そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大。世界的な経済活動の停滞により、20年の世界の一次エネルギー消費量は4・5%減。第2次世界大戦後最大の減少。その後、経済が回復し始めた21年を境に天然ガスをはじめとしたエネルギー需要が急増したため、需要に対して供給が追い付かない状態。
「白書」は、「エネルギー価格が継続的に高い水準で推移すれば、製品価格の上昇と購買力の低下等を通じて、各国の経済活動の大きな足かせになるのみならず、政治・経済・社会にさらなる悪影響を及ぼしかねない」と警鐘。
とりわけ、日本のエネルギー自給率11%は異常。100%自給できる自然エネルギーへのシフトが求められます。