白書が描く経済③ ウクライナ侵略 経済的危機 今後何年にも
今年2月24日に侵攻を開始したロシアのウクライナ侵略について、「防衛白書」は、「わが国としては、欧州と東アジアを含むインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識の下、その戦略的な影響を含め、今後の欧州情勢の変化に注目していく必要がある」「米中の戦略的競争の展開やアジアへの影響を含め、グローバルな国際情勢にも影響を与え得るものである」と強調。動向に注視することを求めています。
「通商白書」は、ロシアに対し、主要7力国(G7)を中心にエネルギー分野などで大規模な経済制裁が展開され、「冷戦後かつてないほどに経済的分断への懸念が高まって」いると指摘。「自国中心主義や経済安全保障の重視」により、「国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性」に言及しました。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の「世界貿易投資報告」は、「ウクライナの経済的な損失は壊滅的」だとして、2022年の実質国内総生産(GDP)伸び率を前年比マイナス35%とした国際通貨基金(IMF)の見通しを紹介。戦闘の終結後も「今後何年にもわたって経済活動を著しく妨げる」としました。また同報告は、ロシアの侵略が「世界経済成長の減速度合いを強め、脆弱(ぜいじゃく)な成長とインフレの高進が長引きかねない状況に入りつつある」とした世界銀行の見通しを引用し、景気後退とインフレが同時に進行する「スタグフレーション」の懸念を指摘しました。
ウクライナのキーウ近郊の村での小麦の収穫=8月1日(ロイター)
金融市場にも
ロシアとウクライナは食料、鉱物、資源の輸出国。IMFはそれら商品を中心に「商品市況価格の高騰を通じて、世界経済と金融市場に大きなショックを与える」と見通します。
19年には、「ひまわり油、サフラワー油及び綿実油」でロシア・ウクライナ両国は世界輸出シェアの55・6%を占めました。国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数では、今年3月の植物油価格指数が過去最高を記録。小麦の先物価格は侵略開始直前に比較して62・7%上昇(3月7日時点)しました。
ロシアのウクライナ侵略後、石油・天然ガスの国際価格が急騰。石油価格の国際的指標の一つである米国産WTI原油が侵攻直前と比べ34・3%上昇(3月8日時点)。天然ガスでは、オランダガス価格(TTF)が同じく2・6倍(3月7日時点)の値をつけました。
「通商白書」は、原油や穀物価格の高騰による「企業活動や国民生活への影響は重大」だとして、「特に新興国及び途上国の貧困層の国民生活に甚大な影響を及ぼす」と警告しています。
家計に大打撃
日本の輸出入に占めるロシア・ウクライナ両国の割合は大きくありません。しかし「通商白書」は、商品市況の高騰が、資源国には交易条件の改善、日本やドイツなど非資源国には交易条件の悪化として作用すると指摘。「所得が非資源国から資源国に流出しやすくなる」として、資源輸入国での家計の購買力低下や企業収益の圧迫につながると指摘しました。
さらに日本では、円安の進行が輸入製品の価格を押し上げています。「通商白書」は、円安の背景について「日米における金利差」、「エネルギー価格の高騰を受けて貿易赤字が定着していること」などがあると指摘。日本の資源やエネルギー、食品の海外依存度の高さと円安の影響があいまって「交易条件の悪化につながっている」との見方を示しました。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月13日付掲載
ロシアとウクライナは食料、鉱物、資源の輸出国。IMFはそれら商品を中心に「商品市況価格の高騰を通じて、世界経済と金融市場に大きなショックを与える」と見通し。
日本の輸出入に占めるロシア・ウクライナ両国の割合は大きくありません。しかし「通商白書」は、商品市況の高騰が、資源国には交易条件の改善、日本やドイツなど非資源国には交易条件の悪化として作用すると指摘。「所得が非資源国から資源国に流出しやすくなる」として、資源輸入国での家計の購買力低下や企業収益の圧迫につながると指摘。
やはり、食糧自給率やエネルギー自給率を高める努力が必要ですね。
今年2月24日に侵攻を開始したロシアのウクライナ侵略について、「防衛白書」は、「わが国としては、欧州と東アジアを含むインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識の下、その戦略的な影響を含め、今後の欧州情勢の変化に注目していく必要がある」「米中の戦略的競争の展開やアジアへの影響を含め、グローバルな国際情勢にも影響を与え得るものである」と強調。動向に注視することを求めています。
「通商白書」は、ロシアに対し、主要7力国(G7)を中心にエネルギー分野などで大規模な経済制裁が展開され、「冷戦後かつてないほどに経済的分断への懸念が高まって」いると指摘。「自国中心主義や経済安全保障の重視」により、「国際経済秩序の歴史的な転換点となる可能性」に言及しました。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の「世界貿易投資報告」は、「ウクライナの経済的な損失は壊滅的」だとして、2022年の実質国内総生産(GDP)伸び率を前年比マイナス35%とした国際通貨基金(IMF)の見通しを紹介。戦闘の終結後も「今後何年にもわたって経済活動を著しく妨げる」としました。また同報告は、ロシアの侵略が「世界経済成長の減速度合いを強め、脆弱(ぜいじゃく)な成長とインフレの高進が長引きかねない状況に入りつつある」とした世界銀行の見通しを引用し、景気後退とインフレが同時に進行する「スタグフレーション」の懸念を指摘しました。
ウクライナのキーウ近郊の村での小麦の収穫=8月1日(ロイター)
金融市場にも
ロシアとウクライナは食料、鉱物、資源の輸出国。IMFはそれら商品を中心に「商品市況価格の高騰を通じて、世界経済と金融市場に大きなショックを与える」と見通します。
19年には、「ひまわり油、サフラワー油及び綿実油」でロシア・ウクライナ両国は世界輸出シェアの55・6%を占めました。国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数では、今年3月の植物油価格指数が過去最高を記録。小麦の先物価格は侵略開始直前に比較して62・7%上昇(3月7日時点)しました。
ロシアのウクライナ侵略後、石油・天然ガスの国際価格が急騰。石油価格の国際的指標の一つである米国産WTI原油が侵攻直前と比べ34・3%上昇(3月8日時点)。天然ガスでは、オランダガス価格(TTF)が同じく2・6倍(3月7日時点)の値をつけました。
「通商白書」は、原油や穀物価格の高騰による「企業活動や国民生活への影響は重大」だとして、「特に新興国及び途上国の貧困層の国民生活に甚大な影響を及ぼす」と警告しています。
家計に大打撃
日本の輸出入に占めるロシア・ウクライナ両国の割合は大きくありません。しかし「通商白書」は、商品市況の高騰が、資源国には交易条件の改善、日本やドイツなど非資源国には交易条件の悪化として作用すると指摘。「所得が非資源国から資源国に流出しやすくなる」として、資源輸入国での家計の購買力低下や企業収益の圧迫につながると指摘しました。
さらに日本では、円安の進行が輸入製品の価格を押し上げています。「通商白書」は、円安の背景について「日米における金利差」、「エネルギー価格の高騰を受けて貿易赤字が定着していること」などがあると指摘。日本の資源やエネルギー、食品の海外依存度の高さと円安の影響があいまって「交易条件の悪化につながっている」との見方を示しました。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年8月13日付掲載
ロシアとウクライナは食料、鉱物、資源の輸出国。IMFはそれら商品を中心に「商品市況価格の高騰を通じて、世界経済と金融市場に大きなショックを与える」と見通し。
日本の輸出入に占めるロシア・ウクライナ両国の割合は大きくありません。しかし「通商白書」は、商品市況の高騰が、資源国には交易条件の改善、日本やドイツなど非資源国には交易条件の悪化として作用すると指摘。「所得が非資源国から資源国に流出しやすくなる」として、資源輸入国での家計の購買力低下や企業収益の圧迫につながると指摘。
やはり、食糧自給率やエネルギー自給率を高める努力が必要ですね。