迫るG20サミット③ 日本経済 低成長で世界のお荷物
100年に1度の世界的な経済金融危機といわれた2008年のリーマン・ショックからまもなく8年。世界経済は低迷した状態が続いています。
中でも日本の国内総生産(GDP)成長率は0%台です。経済協力開発機構(OECD)が6月1日に発表した「経済見通し」によると、16年は実質で0・7%です。米国(1・8%)、ユーロ圏(1・6%)に比べても低成長ぶりは際立っています。
個人消費が低迷
OECDは日本の経済状況について「緩慢な個人消費により、減速してきた」と指摘しています。国内の個人消費が低迷している日本は、世界経済の中でもお荷物になっているのです。
国際通貨基金(IMF)の対日審査報告は「消費者物価のインフレ率2%、実質成長率2%、2020年までの基礎的財政支出の均衡というアベノミクスの野心的な目標は、現在の政策では手が届かなくなっている」と指摘。報告書は「弱い消費、低調な民間投資、低迷する輸出を背景に、成長は弱く、デフレは根強く残っている」としました。
安倍政権による追加的な財政支援策については、「中期的には国内外の需要の弱さ」が払しょくしきれないとして需要不足の問題に注目。また、公的債務が高水準なために、低金利の持続性にも不確実性があるとしました。
金融分野については、「より緩和的でより長期にわたる金融緩和が潜在的なリスクを増加」させると分析。そのうえで、「世界経済に負のスピルオーバー(拡散)をもたらしうることを示唆する」として、世界経済への悪影響に警鐘を鳴らしたのです。
これらの分析からは、国民を犠牲にしたアベノミクスの金融財政政策では、停滞した日本経済を立て直せないことを読み取ることができます。
記者会見する黒田日銀総裁=7月29日、日銀本店(ロイター)
日銀自身の警告
現在の「異次元の金融緩和」のような過度な金融緩和については、当初、日銀自身が警戒感を持っていました。
日銀が消費者物価の2%上昇を目指すインフレ目標を決めたのは13年1月のことでした。当時の総裁は、白川方明氏でした。このとき日銀が発表した付属資料には、現在の黒田東彦総裁の下での際限のない金融緩和を見通したかのような警句が含まれていました。
「持続可能な物価の安定を実現するには、特定の物価上昇率を特定の期限内に達成するといった機械的な金融政策運営は適切ではない」
「原油価格の変動といった供給ショックに対し、金融政策によって短期的に対応しようとすると、経済活動に大きな負荷がかかり、かえって長い目でみた物価安定を実現することが難しくなる」
日銀が保有する国債残高は、異次元緩和で大量に購入したため、16年3月末時点で317兆円です。発行残高全体の33・2%に達しています。3年間で残高、比率ともに2・5倍に増え、銀行、生損保をしのぎ日銀は今や最大の国債保有者になっています。
付属文書はさらに、こうも指摘していました。「万が一にも財政運営に対する市場の信認が低下すると、長期金利が上昇し、ひいては企業の資金調達コストや国債を大量保有する金融機関の経営に多大な悪影響が及ぶ可能性」があると。
異次元緩和による過剰マネーのマグマが空前の規模で蓄積され、世界経済の波乱要因となっています。米国は金利引き上げの時期を探る一方、黒田総裁はさらなる金融緩和に言及しています。
「国際経済協力に関する第一の会合」としての20力国・地域(G20)首脳会議が、新たな経済危機を生み出さないための課題にどう向き合うのか試されています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月2日付掲載
「物価上昇率2%」を最初目標にして経済成長率を引き上げるって考え事態が間違っている。
際限なき金融緩和路線からの脱却が求められている。
100年に1度の世界的な経済金融危機といわれた2008年のリーマン・ショックからまもなく8年。世界経済は低迷した状態が続いています。
中でも日本の国内総生産(GDP)成長率は0%台です。経済協力開発機構(OECD)が6月1日に発表した「経済見通し」によると、16年は実質で0・7%です。米国(1・8%)、ユーロ圏(1・6%)に比べても低成長ぶりは際立っています。
個人消費が低迷
OECDは日本の経済状況について「緩慢な個人消費により、減速してきた」と指摘しています。国内の個人消費が低迷している日本は、世界経済の中でもお荷物になっているのです。
国際通貨基金(IMF)の対日審査報告は「消費者物価のインフレ率2%、実質成長率2%、2020年までの基礎的財政支出の均衡というアベノミクスの野心的な目標は、現在の政策では手が届かなくなっている」と指摘。報告書は「弱い消費、低調な民間投資、低迷する輸出を背景に、成長は弱く、デフレは根強く残っている」としました。
安倍政権による追加的な財政支援策については、「中期的には国内外の需要の弱さ」が払しょくしきれないとして需要不足の問題に注目。また、公的債務が高水準なために、低金利の持続性にも不確実性があるとしました。
金融分野については、「より緩和的でより長期にわたる金融緩和が潜在的なリスクを増加」させると分析。そのうえで、「世界経済に負のスピルオーバー(拡散)をもたらしうることを示唆する」として、世界経済への悪影響に警鐘を鳴らしたのです。
これらの分析からは、国民を犠牲にしたアベノミクスの金融財政政策では、停滞した日本経済を立て直せないことを読み取ることができます。
記者会見する黒田日銀総裁=7月29日、日銀本店(ロイター)
日銀自身の警告
現在の「異次元の金融緩和」のような過度な金融緩和については、当初、日銀自身が警戒感を持っていました。
日銀が消費者物価の2%上昇を目指すインフレ目標を決めたのは13年1月のことでした。当時の総裁は、白川方明氏でした。このとき日銀が発表した付属資料には、現在の黒田東彦総裁の下での際限のない金融緩和を見通したかのような警句が含まれていました。
「持続可能な物価の安定を実現するには、特定の物価上昇率を特定の期限内に達成するといった機械的な金融政策運営は適切ではない」
「原油価格の変動といった供給ショックに対し、金融政策によって短期的に対応しようとすると、経済活動に大きな負荷がかかり、かえって長い目でみた物価安定を実現することが難しくなる」
日銀が保有する国債残高は、異次元緩和で大量に購入したため、16年3月末時点で317兆円です。発行残高全体の33・2%に達しています。3年間で残高、比率ともに2・5倍に増え、銀行、生損保をしのぎ日銀は今や最大の国債保有者になっています。
付属文書はさらに、こうも指摘していました。「万が一にも財政運営に対する市場の信認が低下すると、長期金利が上昇し、ひいては企業の資金調達コストや国債を大量保有する金融機関の経営に多大な悪影響が及ぶ可能性」があると。
異次元緩和による過剰マネーのマグマが空前の規模で蓄積され、世界経済の波乱要因となっています。米国は金利引き上げの時期を探る一方、黒田総裁はさらなる金融緩和に言及しています。
「国際経済協力に関する第一の会合」としての20力国・地域(G20)首脳会議が、新たな経済危機を生み出さないための課題にどう向き合うのか試されています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月2日付掲載
「物価上昇率2%」を最初目標にして経済成長率を引き上げるって考え事態が間違っている。
際限なき金融緩和路線からの脱却が求められている。