きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

アベノミクス崩れたシナリオ③ まわらない「好循環」

2016-09-12 10:42:59 | 経済・産業・中小企業対策など
アベノミクス崩れたシナリオ③ まわらない「好循環」

第2次安倍晋三政権発足直後となる2013年1月11日、記者会見の場で安倍首相は「企業がお金を借りて積極的に投資をして売り上げを伸ばす、これによって雇用や賃金を増やすという好循環を生み出していかなければなりません」と強調しました。それから3年8カ月、「経済の好循環」からは程遠い状況です。
財務省「法人企業統計」に基づき、資本金10億円以上の大企業について、安倍政権発足前の11年度から最新の15年度にかけて、諸指標の推移をみました。経常利益が23兆9800億円から40兆2400億円へと1・68倍に急増するのに伴い内部留保も1・17倍に増加し、初めて300兆円を超えました。一方、1人当たり賃金は553万9100円から561万7400円へと1.01倍の微増にとどまります。



消費税増税中止の署名を呼びかける女性たち=8月24日、東京・巣鴨駅前

国民生活犠牲に
賃金が伸びないことに加え、安倍政権の社会保障削減による負担増と給付減で、家計の判断で使えるお金とされる可処分所得は減少しました。さらに14年4月に強行した消費税増税による物価上昇で家計消費は低迷しました。この結果、14年度、15年度と2年連続で国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が減少しました。戦後初めてのことです。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指した「世界で一番企業が活躍しやすい国」は、企業が栄えるために国民生活を犠牲にすることでした。それは当初掲げた「3本の矢」に露骨に表れています。
「機動的財政運営」は消費税増税を前提に、大型公共事業を増やし、大企業の税負担を減らすものでした。「大胆な金融緩和」は円安と株高で大企業の利益を伸ばす一方で、食料品など輸入品価格を引き上げ国民生活を苦しくしました。「成長戦略」の名で、労働者派遣法を改悪し、「正社員ゼロ」「一生派遣」へと道を開きました。労働基準法の改悪で、「残業代ゼロ」制度の導入を狙います。
「3本の矢」で一時的に企業業績はよくなりましたが、雇用の劣化と所得の伸び悩みで日本経済は停滞しています。政府の『経済財政白書』は15年度版で「『経済の好循環』が着実に回り始めている」と書きました。しかし、16年度版では「経済の好循環を確立していくことが課題」と当初描いた「シナリオ」が崩れてきていることを事実上、認めざるを得ませんでした。




三つのチェンジ
国民を犠牲にして大企業を優遇し、そのおこぼれを期待するという「トリクルダウン」では日本経済はよくなりません。日本共産党が参院選中に掲げた、格差を正し、経済に民主主義を確立するための三つのチェンジが必要です。
①消費税増税を中止し、富裕層や大企業に応分の負担を求める税金の集め方のチェンジ②社会保障や教育、子育てに重点を置く税金の使い方のチェンジ③ブラックな働き方をなくし、非正規から正社員への流れを作るため雇用のルールの強化を図ることや中小企業への支援を強めながら最低賃金の大幅引き上げを目指す働き方のチェンジ―この方向でこそ国民生活が安定し、日本経済も安定的に成長する道が開かれます。
(おわり)(清水渡、山田俊英が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月10日付掲載


結局は、経済にも民主主義を…。日本共産党が参議院選挙で提唱した「3つのチェンジ」が求められています。

アベノミクス 崩れたシナリオ② 物価下落も、家計“素通り”

2016-09-10 15:39:34 | 経済・産業・中小企業対策など
アベノミクス 崩れたシナリオ② 物価下落も、家計“素通り”

「デフレ脱却」を目指して安倍晋三政権と日銀が進めてきた「異次元金融緩和」のシナリオは狂い、物価が下落し始めています。
総務省「消費者物価指数」によると、7月の消費者物価指数は総合で前年同月に比べ0・4%の減。4カ月連続で前年同月を下回りました。前年同月に比べて物価の下落が目立つ費目は7・7%減の光熱・水道代や2・6%減の交通・通信です。家具・家事用品も0・8%減でした。



店先で商品をじっくり選ぶ買い物客=東京都内

食品など負担増
光熱・水道代で下がったのは電気代やガス代です。交通・通信ではガソリンの下落が目立ちます。電気やガス、ガソリンの価格下落は原油価格の下落が大きく影響しています。
家具・家事用品では炊飯器や冷蔵庫など家庭用耐久財が下落しました。ただ、炊飯器や冷蔵庫などモデルチェンジのある製品の場合、実際の価格変動に加えて、モデルチェンジにともなう性能向上を加味して消費者物価指数を算出します。調査対象となっている製品の後継機が同じ価格でも機能向上した場合、以前にはより高価格帯の製品でしか得られなかった機能がより安く購入できることになり、消費者物価指数は下落します。
総合指数が下落する一方で前年同月に比べ上昇した費目もあります。1・6%上昇の教育、1・1%上昇の食料、0・9%上昇の保健医療などです。
教育では高校や大学の学費などを含む授業料等の値上げが目立ちます。7月は1・7%増で64カ月連続で前年同月を上回りました。
食料品価格の上昇はアベノミクスによる「円安加速」と消費税増税の影響です。とりわけ円安の影響は深刻です。日本の場合、食料品の多くは輸入に頼ります。円安によって輸入品価格が上がれば、食料品価格も上昇するからです。
保健医療では診察代など保健医療サービスが前年同月を上回りました。社会保障の削減で医療費の窓口負担が増えていることが背景にあります。




経済低迷に直結
ガソリン代や電気・ガス代などで物価下落の恩恵を受けたとしても、毎日消費する食料品が上昇しているため、家計は楽になりません。しかも電力大手6社は10月の電気料金を引き上げると発表しています。
炊飯器や冷蔵庫はひんぱんに買い替える商品ではありません。しかも実際の価格が安くなっているわけではないので、家計への貢献はほとんどありません。また、学費や診察代は高いからと言って払わないわけにはいかない性格を持ちます。
安倍政権が進めた「円安加速」、消費税増税、社会保障の切り捨てで家計が深刻な打撃を受けたことは明らかです。しかも、家計への打撃は日本経済の低迷に直結します。
2016年4~6月期の国内総生産(GDP)は2次速報値で実質0・2%増にとどまりました。GDPの6割を占める個人消費は同0・2%増とわずかながらも上昇したことになっています。しかし、生活実感に近い名目値で見ると、個人消費は0・1%減です。
国民は生活を切り詰めているのに、それ以上の「物価下落」が、個人消費を実質プラスに押し上げたにすぎないのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月9日付掲載


物価は全体としては下がっているとしても、食料品、医療費や学費などはむしろ増えています。
生活実感としては物価増。生活は苦しくなっている。

アベノミクス 崩れたシナリオ① 異次元緩和 効果なく長期化

2016-09-09 16:37:08 | 経済・産業・中小企業対策など
アベノミクス 崩れたシナリオ① 異次元緩和 効果なく長期化

「これだけ大規模な金融緩和を行っても2%の『物価安定の目標』は実現できていません」
日銀の黒田東彦総裁が5日行った講演は、「量的・質的金融緩和」(異次元の金融緩和)のシナリオが大幅に狂っていることを認めることから始まりました。
アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「第1の矢」として2013年4月に始まったこの政策は、①長期国債の保有残高が年間50兆円増えるペースで買い入れる②不動産投資信託(Jリート)、株価連動型の上場投資信託(ETF)も買い入れる③これによって日銀が民間金融機関に供給するお金の量(マネタリーベース)を2年間で2倍に増やし年2%の物価上昇率を実現する―というものでした。
「異次元の金融緩和」でなぜ景気がよくなるのか。日銀は「三つの経路」を説明していました。
①市場に大量のお金を流せば、金利が下がり、銀行の貸し出しが増える。
②日銀がいろいろな金融資産を買うので、金利が低下し、金融資産のリスクも下がり、投資家や銀行は株や外債に投資するようになる。
③企業や消費者が物価上昇を予想するようになると、上昇前に買っておこうとして投資や消費が増える。



講演する日銀の黒田東彦総裁=9月5日午前、東京都千代田区

物価はマイナス
それから3年半。相次ぐ追加緩和によって、日銀が買い入れる長期国債は年間80兆円に拡大され、マイナス金利も導入されました。しかし、物価上昇率は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数でマイナス0・5%(7月)。個人消費は2年連続で前年割れし、国内総生産(GDP)は4~6月期実質で前期比0・0%増と横ばい。企業の設備投資もマイナスで、銀行の貸し出しは年2%程度しか増えていません。株価はつり上げ政策によって上昇しましたが、国民の暮らしや企業の生産活動など実体経済に関しては、まったく効果がありません。日銀が異次元緩和で銀行に供給したお金は銀行が日銀に持っている当座預金口座に積み上がる一方です。
黒田総裁の講演も、なぜ「2年で2%の物価上昇」を実現できなかったという言い訳に終始しましたが、「外的な要因」によるもので、異次元緩和に限界はないと開き直りました。総裁が挙げたのは、▽原油価格の下落▽14年4月の消費税増税後の個人消費の弱さ▽国際金融市場の不安定な動き―の三つです。
物価統計は総務省が所管していますが、日銀はエネルギー価格を除く物価統計㈲を独自に作成し、エネルギー価格を除けば物価は上がっていると主張しています。しかし、その統計でも目標とする2%に達しません。






異常な国債保有
物価が上昇しないことは、暮らしや中小企業の営業にとってプラスです。問題は、日銀が2%の物価上昇に固執して異次元緩和を長期化させ、追加措置を「ちゅうちょすべきではない」(黒田総裁)としていることです。9月の20~21日に開かれる金融政策決定会合で異次元緩和をさらに拡大する恐れもあります。
異次元緩和の結果、日銀はいまや最大の国債保有者になり、保有する国債は340兆円。名目GDPの7割近くです。異次元緩和が長期化すれば、日銀の抱える政府の借金がGDPを超える可能性があります。日本の財政、金融を危うくしかねない異常事態です。効果がない政策にしがみつくのはやめて、金融政策を転換すべき時に来ています。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月8日付掲載


そもそも、GDPが横ばいなのに物価だけが上がるはずはない。目的と手段のボタンの掛け違い。
異次元の規制緩和はすぐにでもやめるべき。


多国籍企業の税逃れ G20でも論議 包囲網狭まる

2016-09-07 14:35:19 | 国際政治
多国籍企業の税逃れ G20でも論議 包囲網狭まる

多国籍企業がタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる税率の低い国や地域に所得を移し、課税を逃れる行為が世界的な問題になっています。中国・杭州で5日まで開かれた20力国・地域首脳会議(G20サミット)でも議論になりました。(杭州〈中国〉=佐久間亮)


タックスヘイブンを利用した多国籍企業の税逃れは、税による所得の再分配機能を弱めることで貧富の格差を拡大しており、健全な経済成長を阻害する大きな要因の一つとなっています。
多国籍企業による税逃れを防ぐため、経済協力開発機構(OECD)の租税委員会は「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジエクトを立ち上げ、現在、実行段階に移ってきています。
杭州でのG20サミットでは、「世界規模で公正かつ現代的な国際課税システムを達成し、成長を促す」ことが確認されました。同時に、BEPSプロジェクトに未参加の国・地域に対しても参加を呼び掛けました。
G20サミット直前には、欧州連合(EU)の行政府にあたる欧州委員会が、アイルランド政府に対し、米通信機器大手アップルに差別的な税の優遇措置をとっていたとして最大130億ユーロ(約1・5兆円)規模の追徴課税を命じました。同国は、外国企業に優遇措置を設けることで、税逃れの主要な舞台の一つとなってきました。グーグルやアマゾンも、同国に設立した子会社を利用して巨額の税を逃れていたことが明らかになっています。
今年の春には、各国要人によるタックスヘイブン利用を明らかにした「パナマ文書」が公開されました。利用者のなかには中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、英国のキャメロン前首相といったG20構成国の首脳の親族や関係者も含まれていました。
欧州委員会によるアップルへの追徴課税命令は、税逃れに対する包囲網が着実に狭まってきていることを示しています。



アイルランド南部コーク市にあるアップルの子会社(ロイター)

税財政転換こそ
しかし、G20とOECDが進めているBEPSプロジェクトは、タックスヘイブンそのものを廃止する取り組みにはなっていません。各国の課税自主権を理由に、世界的に進む法人税率引き下げ競争に手をつけないという限界を抱えているからです。
G20が議論した持続可能な経済成長を実現するためにも、税・財政の役割を投資や経済成長の促進策に矯小(わいしょう)化してはなりません。本来、税制は所得の再配分、社会的福祉のために不可欠なものです。税金の集め方や使い方を国民本位に転換していくことは世界各国の共通の課題です。
税逃れの秘密の聖地であるタックスヘイブンにメスを入れ、多国籍企業本位にゆがめられてきた税財政を転換することが今こそ必要です。

子会社の扱いに弱点
多国籍企業の税逃れが大規模に行われている背景には、「グローバル・サプライチェーン(世界的供給網)」の構築があります。
大企業は、原料の調達、生産、販売、知的財産の管理などを「最適な国・地域」に配分し、グループ企業間の取引の連鎖で結びつけています。コストの最小化と利益の最大化を図っているのです。税負担の最小化のために行っているのが、「価値創造の場」からタックスヘイブンの子会社へ利益を移転する操作です。
税逃れに批判的な専門家らは、多国籍企業グループの子会社を独立した会社のように扱う限り、タックスヘイブンを利用した税逃れの抜け道は際限なく開発されると指摘します。G20が進めるBEPS対策は、重要な前進であるものの、この点で根本的な弱点を抱えています。
子会社の事業実態を公表させるとともに、グループを単一企業として扱い、各拠点の事業規模に応じた税金を各国に納めさせる仕組みの構築が必要となっています。(杉本恒如)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月6日付掲載


本体の企業で行っている事業を、あたかもタックスヘイブンに置かれている子会社がやっているように見せかけて、税逃れする。
実際に事業をやっている国・地域で課税するという当然の国際的ルールを確立する必要があります。

迫るG20サミット④ 租税回避 多国籍企業にどう対処

2016-09-05 11:16:14 | 国際政治
迫るG20サミット④ 租税回避 多国籍企業にどう対処

欧州連合(EU)の欧州委員会は8月30日、米アップルの法人税に対するアイルランド政府の差別的な優遇措置が違法な補助金にあたるとして、最大130億ユーロ(約1・5兆円)追徴課税するよう指示しました。
特定の企業に対する税優遇措置で、ヨーロッパにおけるアップルの利益に対する法人実効税率は2003年の1%から14年には0・005%へ下落しました。



税逃れについて議論したOECD租税委員会の会合=6月30日、京都市内

12年のG20から
多国籍企業の税逃れへの税源浸食・利益移転(BEPS)対策が、経済協力開発機構(OECD)と20力国・地域(G20)の協力によって取り組まれています。
12年6月19日、メキシコ・ロスカポスでのG20サミットで採択された首脳宣言は、「われわれは、税源浸食と利益移転を防ぐ必要性を再確認し、この分野におけるOECDの継続中の作業を関心をもってフォローする」とうたいます。この宣言を受けて、同月26日~27日に開催されたOECD租税委員会本会合が、BEPSプロジェクトを立ち上げました。G20の合意を実現する技術的受け皿としてOECDプロジェクトが開始されたのです。
12年後半には、スターバックス、グーグル、アマゾン、アップルなどの多国籍企業による租税回避が政治問題化しました。翌年の13年6月にイギリスのロック・アーンで開催されたG8サミットは、「われわれは、税源浸食・利益移転に取り組むため、また、あらゆる多国籍企業が低税率の国・地域に利益を人為的に移転することによって支払う税の総額を削減することを国際的な及び自国の課税ルールが許容又は奨励しないようにするため、共に取り組むことに合意する」としました。
“多国籍企業による税逃れ”という問題に焦点を当てたことは画期的でした。1998年にOECD租税委員会が発表した「有害な税の競争」の報告書と比べても大きな前進でした。同報告書は、タックスヘイブン(租税回避地)についての基本的な要素を挙げ、タックスヘイブンに対する人々の意識を高めたものでした。企業や個人の課税逃れが、税負担を労働や財産、および消費といった分野に移動する傾向を創り出す、などとも指摘していました。しかし、この時の分析は、国際社会が大問題にしている多国籍企業の活動に焦点をあてたものにはなっていませんでした。
13年7月には、「BEPS行動計画」が公表されます。OECD非加盟のG20メンバー8力国が議論に参加しました。15年10月には「最終報告書」が公表されました。
現在、BEPS対策は、実行段階に入っています。多国籍企業の税逃れを防ぐためには、世界のどこかに抜け穴があると実効性はあがりません。BEPS対策には、現在80力国を上回る参加国が近く100力国を超えると見込まれています。

対策には限界が
一方、BEPS対策には限界があります。OECD租税委員会の浅川雅嗣(まさつぐ)議長は、「税率は国家主権の範囲内であり、タックスヘイブンが存在し続けることは前提だ」(6月6日、日本記者クラブでの会見)といいます。つまり、多国籍企業によるタックスヘイブンの利用を阻止することはできないのです。国家が投資を呼び込むために惜しみなく税を優遇するという底辺への競争を防ぐこともありません。
国際協力団体のオックスファムは、極限にまで達している格差をなくすためには、タックスヘイブンの時代を終わらせることが不可欠だと世界の指導者に呼び掛けています。
G20中国・杭州サミットが、この課題にどのような回答を出すのか、間われています。(おわり)(金子豊弘が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月3日付掲載


「税率は国家主権の範囲内であり、タックスヘイブンが存在し続けることは前提」とは仕方ないにしても、実際に生産活動をやっている国・地域で再課税することは可能なはず。