アベノミクス崩れたシナリオ③ まわらない「好循環」
第2次安倍晋三政権発足直後となる2013年1月11日、記者会見の場で安倍首相は「企業がお金を借りて積極的に投資をして売り上げを伸ばす、これによって雇用や賃金を増やすという好循環を生み出していかなければなりません」と強調しました。それから3年8カ月、「経済の好循環」からは程遠い状況です。
財務省「法人企業統計」に基づき、資本金10億円以上の大企業について、安倍政権発足前の11年度から最新の15年度にかけて、諸指標の推移をみました。経常利益が23兆9800億円から40兆2400億円へと1・68倍に急増するのに伴い内部留保も1・17倍に増加し、初めて300兆円を超えました。一方、1人当たり賃金は553万9100円から561万7400円へと1.01倍の微増にとどまります。
消費税増税中止の署名を呼びかける女性たち=8月24日、東京・巣鴨駅前
国民生活犠牲に
賃金が伸びないことに加え、安倍政権の社会保障削減による負担増と給付減で、家計の判断で使えるお金とされる可処分所得は減少しました。さらに14年4月に強行した消費税増税による物価上昇で家計消費は低迷しました。この結果、14年度、15年度と2年連続で国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が減少しました。戦後初めてのことです。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指した「世界で一番企業が活躍しやすい国」は、企業が栄えるために国民生活を犠牲にすることでした。それは当初掲げた「3本の矢」に露骨に表れています。
「機動的財政運営」は消費税増税を前提に、大型公共事業を増やし、大企業の税負担を減らすものでした。「大胆な金融緩和」は円安と株高で大企業の利益を伸ばす一方で、食料品など輸入品価格を引き上げ国民生活を苦しくしました。「成長戦略」の名で、労働者派遣法を改悪し、「正社員ゼロ」「一生派遣」へと道を開きました。労働基準法の改悪で、「残業代ゼロ」制度の導入を狙います。
「3本の矢」で一時的に企業業績はよくなりましたが、雇用の劣化と所得の伸び悩みで日本経済は停滞しています。政府の『経済財政白書』は15年度版で「『経済の好循環』が着実に回り始めている」と書きました。しかし、16年度版では「経済の好循環を確立していくことが課題」と当初描いた「シナリオ」が崩れてきていることを事実上、認めざるを得ませんでした。
三つのチェンジ
国民を犠牲にして大企業を優遇し、そのおこぼれを期待するという「トリクルダウン」では日本経済はよくなりません。日本共産党が参院選中に掲げた、格差を正し、経済に民主主義を確立するための三つのチェンジが必要です。
①消費税増税を中止し、富裕層や大企業に応分の負担を求める税金の集め方のチェンジ②社会保障や教育、子育てに重点を置く税金の使い方のチェンジ③ブラックな働き方をなくし、非正規から正社員への流れを作るため雇用のルールの強化を図ることや中小企業への支援を強めながら最低賃金の大幅引き上げを目指す働き方のチェンジ―この方向でこそ国民生活が安定し、日本経済も安定的に成長する道が開かれます。
(おわり)(清水渡、山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月10日付掲載
結局は、経済にも民主主義を…。日本共産党が参議院選挙で提唱した「3つのチェンジ」が求められています。
第2次安倍晋三政権発足直後となる2013年1月11日、記者会見の場で安倍首相は「企業がお金を借りて積極的に投資をして売り上げを伸ばす、これによって雇用や賃金を増やすという好循環を生み出していかなければなりません」と強調しました。それから3年8カ月、「経済の好循環」からは程遠い状況です。
財務省「法人企業統計」に基づき、資本金10億円以上の大企業について、安倍政権発足前の11年度から最新の15年度にかけて、諸指標の推移をみました。経常利益が23兆9800億円から40兆2400億円へと1・68倍に急増するのに伴い内部留保も1・17倍に増加し、初めて300兆円を超えました。一方、1人当たり賃金は553万9100円から561万7400円へと1.01倍の微増にとどまります。
消費税増税中止の署名を呼びかける女性たち=8月24日、東京・巣鴨駅前
国民生活犠牲に
賃金が伸びないことに加え、安倍政権の社会保障削減による負担増と給付減で、家計の判断で使えるお金とされる可処分所得は減少しました。さらに14年4月に強行した消費税増税による物価上昇で家計消費は低迷しました。この結果、14年度、15年度と2年連続で国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が減少しました。戦後初めてのことです。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が目指した「世界で一番企業が活躍しやすい国」は、企業が栄えるために国民生活を犠牲にすることでした。それは当初掲げた「3本の矢」に露骨に表れています。
「機動的財政運営」は消費税増税を前提に、大型公共事業を増やし、大企業の税負担を減らすものでした。「大胆な金融緩和」は円安と株高で大企業の利益を伸ばす一方で、食料品など輸入品価格を引き上げ国民生活を苦しくしました。「成長戦略」の名で、労働者派遣法を改悪し、「正社員ゼロ」「一生派遣」へと道を開きました。労働基準法の改悪で、「残業代ゼロ」制度の導入を狙います。
「3本の矢」で一時的に企業業績はよくなりましたが、雇用の劣化と所得の伸び悩みで日本経済は停滞しています。政府の『経済財政白書』は15年度版で「『経済の好循環』が着実に回り始めている」と書きました。しかし、16年度版では「経済の好循環を確立していくことが課題」と当初描いた「シナリオ」が崩れてきていることを事実上、認めざるを得ませんでした。
三つのチェンジ
国民を犠牲にして大企業を優遇し、そのおこぼれを期待するという「トリクルダウン」では日本経済はよくなりません。日本共産党が参院選中に掲げた、格差を正し、経済に民主主義を確立するための三つのチェンジが必要です。
①消費税増税を中止し、富裕層や大企業に応分の負担を求める税金の集め方のチェンジ②社会保障や教育、子育てに重点を置く税金の使い方のチェンジ③ブラックな働き方をなくし、非正規から正社員への流れを作るため雇用のルールの強化を図ることや中小企業への支援を強めながら最低賃金の大幅引き上げを目指す働き方のチェンジ―この方向でこそ国民生活が安定し、日本経済も安定的に成長する道が開かれます。
(おわり)(清水渡、山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月10日付掲載
結局は、経済にも民主主義を…。日本共産党が参議院選挙で提唱した「3つのチェンジ」が求められています。