尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

カレル・ゼマン展

2011年07月01日 23時55分55秒 |  〃  (旧作外国映画)
 渋谷区立松濤美術館で「カレル・ゼマン展」を見ました。誰、それ?チェコの昔のアニメ作家です。もともとは渋谷のユーロスペースに映画を見に行って満員で入れなかったので、じゃあこっちに行こうということで。渋谷の東急百貨店本店の文化村通りをそのままずっと通り過ぎて、5分くらいすると右側に案内が出てきます。ここへ行ったのは久しぶり。小さな美術館だけど、涼しくてソファがあって人は少ないから、300円はお得。7月24日まで。

 「トリック映画の前衛」「チェコ・アニメ もうひとりの巨匠」とうたうけれど、これじゃあ知らない人には判りません。もっともアニメの原画やポスターの展示だから、カレル・ゼマン(1910~1989)を知らない人が見ても全然面白くないと思います。チェコは昔からアニメが盛んで、現在もヤン・シュヴァイクマイエルという「戦闘的シュルレアリスト」がいますが、ここでいう巨匠とは人形アニメで有名なイジー・トルンカを指しているでしょう。ナチス・ドイツとスターリン・ソ連に蹂躙された現代史を直接的に表現するのではなく、子供向けのアニメが発展したのは、イラン・イスラム体制下で「児童映画」が盛んになったのと似たような事情があると思います。しかし、カレル・ゼマンにあっては、永遠の少年の夢を生涯撮り続けた天性の想像力が素晴らしく、どのような社会体制にあっても子どもの夢を語り続けたのだろうと思います。何本かを会場で上映しているので、見たい人は時間を調べて行くといいでしょう。

 僕にとっては、カナダのノーマン・マクラレン、ロシアのユーリ・ノルシュテイン、日本の宮崎駿などを超えて、世界で一番好きなアニメ監督。昔風のトリック映画がたまりません。ほとんどがジュール・ヴェルヌなどのSFや民話の映画化。「悪魔の発明」「盗まれた飛行船」などが代表作で、飛行船、恐竜など少年時代に夢中になれるアイテムをノスタルジックに描き出しました。
 宮崎アニメ、特に「紅の豚」「魔女の宅急便」などが好きな人なら絶対おススメ。というより、レイ・ブラッドベリの小説が一番似ている感じがする。ブラッドベリの作品が大好きな人、あの郷愁と抒情がゼマンのアニメに映像化されてると思いませんか?

 ところで、ゼマンの娘、ルドミラ・ゼマンと言う人がカナダに移住して、アニメ、絵本作家として活躍していることは知りませんでした。現在、同時企画としてカナダ大使館で開催されています。
 トルンカが亡くなったのはソ連の侵攻直後の68年。ゼマンが亡くなったのはビロード革命数か月前の89年、というのも奇しき因縁と言う感じです。
コメント (1)
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