選挙にインターネットを使えるようになると、候補者への中傷や誤解の基づく批判が増えるという心配をする人がいる。当然である。実際、今以上に増えるのはごく自然な想定である。投書したり電話したりするのに比べて、インターネットの掲示板に匿名で書きこむ方がずっとハードルが低い。現にいっぱい、中傷的な書き込みがある。選挙期間だけでなく、政治家や政党に関するネガティヴ・キャンペーンのようなものは常に起こっている。
では、どうすればいいのか。監視を強め削除を容易にするとか、罰則を強化していくというのも考えられるけれど、それはなかなか難しいし、一度広まったマイナスの情報は消しがたい。アメリカや韓国ではネット選挙で若い人の関心が高まったというようなことを言う人がいるけど、日本の今の状況では果たしてうまく行くだろうか。「政治問題に自分の考えを持ち、お互いに議論し合う」という選挙運動の前提が日本社会に欠けているのではないか。09年総選挙では自民党が、12年総選挙では民主党が、それぞれ「マイナスのレッテルを貼られる」という社会のムードで選挙結果が決まってしまったとも言える。そういう社会では、いったん候補者にマイナスの書き込みがネットで相次ぐと、それが中傷や誤解であっても当落を左右することもありうるだろう。だからと言って、「マイナス情報を監視しあう」というやり方だけでは、皆がネット選挙を怖がるだけになりかねない。
僕はネットを選挙に使うのは必然だと思っているけど、だからと言ってすごくうまく行くとも思っていない。Facebookやツイッターで、憲法や経済政策などがマジメに議論されることもあまりないだろうと思う。大体ネットでも政治について発言してるのは一部の人で、大多数の人は趣味や家族のことなんかしか投稿していない。だから一部の人はレッテル貼りに熱中するかもしれないが、そういう「強い意見」はスルーされるだけの可能性が高い。むしろ問題なのは「ファッション批評」とか「誤解」「誇張」の方だと思う。ファッションというのは、ネクタイの柄がどうだとか、美人候補かどうかどか、今でもそんなことばかり見てる有権者は結構いる。それが候補者のFacebookに書き込めるようになると、有権者どうしで「候補者のイメージ」論争になり、「ダサい」と決めつけられたら、「そういう人には入れたくないね」と書き込む人がいて、その投稿に「いいね」が殺到する。そうすると、そこまでの気持ちがなかった人でも「この候補者はダサいと思われていて若い人は投票しないらしいから、自分もやめようか」となる。そういうことはありそうな感じがする。
では、どうすればいいのか。それは「ネット熟議」がどうすれば成り立つかと言う問題で、今のところ誰にも解答はない。ただ言えるのは、選挙期間が短いほど、誤解や非本質的な書き込みの影響力が強いと思われることだ。一度訳の分からない誤解が広まると、そのイメージを打ち消すのに時間がかかる。今までは、「選挙にはカネがかかる」=「だから、大組織に支持されないと当選が難しい」=「選挙はできるだけ公営で行い、カネのかからない選挙にしよう」という考えが一般的だった。そういう考えのもと、選挙期間も非常に短くなっている。でも、それには疑問がある。なにより、現実にもうすでに「都議選立候補予定者のポスター」が街には氾濫しているではないか。これは「事実上の事前運動」である。しかし、それが許されるのは何故かと言えば、選挙運動ではなく、政党の政治運動のポスターになっているからだ。「都議選で一票を」などとはポスターに書いてない。大きく政党名と顔写真が載っていて、近づいてよく見ると、(あるのかないのか判らない)演説会のお知らせなどと書いてある。選挙のはるか先の半年後の日付になってるのもあり、ホントにあるのか疑問だけど、そういう集会の告知の政治活動と言うタテマエになってる。
そんなことが許されているんだったら、もうネット上の選挙運動だけでも解禁して欲しいくらいだ。まだ一部候補者が決まってないところもあるようだが、大体は出そろっているようだから。ポスター掲示板が作られ、選挙カーが街を回るのは先でいいけど、ネット上だけで「先に立候補受け付け」を開始してしまうわけである。今までは「選挙運動はカネがかかる」「選挙運動は迷惑もかかる」という発想が強かった。しかし、ネット選挙なら、それほどカネがかからない。そもそも候補者になるくらいの人は、すでにホームページがあることが多い。Facebookやツイッターのアカウントも持ってる人が多いだろう。そこで立候補を宣言して、政策論争を始めるのを認めればいいだけのことである。
今、いったい何日くらい選挙運期間があるのかというと、公職選挙法で以下のように最低日数が決まっている。
衆議院議員=解散の場合、解散から40日以内で、少なくとも12日前に公示。(任期満了の場合はまた別)
具体的に去年の日程を見ると、11月16日に解散、12月5日に公示、16日に投票である。つまり、法で決める最低日数の12日間の選挙運動期間になっている。そこで、他の選挙では、この「少なくとも○○日前に告示」と言う日数を調べてみる。(なお、日本国憲法の天皇の国事行為の中に「総選挙の公示」がある。そのため衆議院選挙は公示というが、その他の任期満了(または前任者辞任、死亡)の選挙は告示と言っている。)
参議院議員=少なくとも17日前に告示
都道府県知事=少なくとも17日前に告示
指定都市の長=少なくとも14日前に告示
都道府県議会議員、指定都市議会の議員=少なくとも9日前に告示
その他の市議会議員及び長=少なくとも7日前に告示
町村議会議員及び長=少なくとも5日前に告示
今、さいたま市長選挙が行われいるが、5日告示で19日投開票。きっかり最低の14日間の運動期間になっている。
しかし、国政をゆだねる国会議員を選ぶ期間が、2~3週間しかなくていいのか。普通、町村より市が広く、さらに都道府県がさらに広いから、広い方が期間が長いのが判るけど、広い北海道や離島の多い沖縄でも均一に「17日間」でいいのだろうか。
選挙が長いと、おカネもかかるが体力も大変。さらにその間、政治判断が停まってしまう。現職が引退し、次を選ぶ選挙なんか、一月も二月もやってると、その間の行政がストップして弊害が大きい。今まではそう思われていたと思う。だけど、選挙期間が短いと、有力支持組織を固めるのに精一杯で、無党派の場合、候補者のことをよく知らないうちに投票日がくる。イメージで投票するのはそういう理由もある。党内の候補者選びの段階からネット選挙で行えば、ずいぶん関心を呼ぶのではないか。
僕はネットを活用する選挙にしていくには、少なくとも国政選挙は1か月、知事も1か月、地方自治体議員の選挙は2週間は欲しいと思う。その間の「選挙カーの演説」が聞きたいわけではない。それはうるさくて迷惑である。だから「ネット上でのみ、先に立候補を受け付ける」という「ネットのみ選挙運動期間」が欲しいという気がするのである。
では、どうすればいいのか。監視を強め削除を容易にするとか、罰則を強化していくというのも考えられるけれど、それはなかなか難しいし、一度広まったマイナスの情報は消しがたい。アメリカや韓国ではネット選挙で若い人の関心が高まったというようなことを言う人がいるけど、日本の今の状況では果たしてうまく行くだろうか。「政治問題に自分の考えを持ち、お互いに議論し合う」という選挙運動の前提が日本社会に欠けているのではないか。09年総選挙では自民党が、12年総選挙では民主党が、それぞれ「マイナスのレッテルを貼られる」という社会のムードで選挙結果が決まってしまったとも言える。そういう社会では、いったん候補者にマイナスの書き込みがネットで相次ぐと、それが中傷や誤解であっても当落を左右することもありうるだろう。だからと言って、「マイナス情報を監視しあう」というやり方だけでは、皆がネット選挙を怖がるだけになりかねない。
僕はネットを選挙に使うのは必然だと思っているけど、だからと言ってすごくうまく行くとも思っていない。Facebookやツイッターで、憲法や経済政策などがマジメに議論されることもあまりないだろうと思う。大体ネットでも政治について発言してるのは一部の人で、大多数の人は趣味や家族のことなんかしか投稿していない。だから一部の人はレッテル貼りに熱中するかもしれないが、そういう「強い意見」はスルーされるだけの可能性が高い。むしろ問題なのは「ファッション批評」とか「誤解」「誇張」の方だと思う。ファッションというのは、ネクタイの柄がどうだとか、美人候補かどうかどか、今でもそんなことばかり見てる有権者は結構いる。それが候補者のFacebookに書き込めるようになると、有権者どうしで「候補者のイメージ」論争になり、「ダサい」と決めつけられたら、「そういう人には入れたくないね」と書き込む人がいて、その投稿に「いいね」が殺到する。そうすると、そこまでの気持ちがなかった人でも「この候補者はダサいと思われていて若い人は投票しないらしいから、自分もやめようか」となる。そういうことはありそうな感じがする。
では、どうすればいいのか。それは「ネット熟議」がどうすれば成り立つかと言う問題で、今のところ誰にも解答はない。ただ言えるのは、選挙期間が短いほど、誤解や非本質的な書き込みの影響力が強いと思われることだ。一度訳の分からない誤解が広まると、そのイメージを打ち消すのに時間がかかる。今までは、「選挙にはカネがかかる」=「だから、大組織に支持されないと当選が難しい」=「選挙はできるだけ公営で行い、カネのかからない選挙にしよう」という考えが一般的だった。そういう考えのもと、選挙期間も非常に短くなっている。でも、それには疑問がある。なにより、現実にもうすでに「都議選立候補予定者のポスター」が街には氾濫しているではないか。これは「事実上の事前運動」である。しかし、それが許されるのは何故かと言えば、選挙運動ではなく、政党の政治運動のポスターになっているからだ。「都議選で一票を」などとはポスターに書いてない。大きく政党名と顔写真が載っていて、近づいてよく見ると、(あるのかないのか判らない)演説会のお知らせなどと書いてある。選挙のはるか先の半年後の日付になってるのもあり、ホントにあるのか疑問だけど、そういう集会の告知の政治活動と言うタテマエになってる。
そんなことが許されているんだったら、もうネット上の選挙運動だけでも解禁して欲しいくらいだ。まだ一部候補者が決まってないところもあるようだが、大体は出そろっているようだから。ポスター掲示板が作られ、選挙カーが街を回るのは先でいいけど、ネット上だけで「先に立候補受け付け」を開始してしまうわけである。今までは「選挙運動はカネがかかる」「選挙運動は迷惑もかかる」という発想が強かった。しかし、ネット選挙なら、それほどカネがかからない。そもそも候補者になるくらいの人は、すでにホームページがあることが多い。Facebookやツイッターのアカウントも持ってる人が多いだろう。そこで立候補を宣言して、政策論争を始めるのを認めればいいだけのことである。
今、いったい何日くらい選挙運期間があるのかというと、公職選挙法で以下のように最低日数が決まっている。
衆議院議員=解散の場合、解散から40日以内で、少なくとも12日前に公示。(任期満了の場合はまた別)
具体的に去年の日程を見ると、11月16日に解散、12月5日に公示、16日に投票である。つまり、法で決める最低日数の12日間の選挙運動期間になっている。そこで、他の選挙では、この「少なくとも○○日前に告示」と言う日数を調べてみる。(なお、日本国憲法の天皇の国事行為の中に「総選挙の公示」がある。そのため衆議院選挙は公示というが、その他の任期満了(または前任者辞任、死亡)の選挙は告示と言っている。)
参議院議員=少なくとも17日前に告示
都道府県知事=少なくとも17日前に告示
指定都市の長=少なくとも14日前に告示
都道府県議会議員、指定都市議会の議員=少なくとも9日前に告示
その他の市議会議員及び長=少なくとも7日前に告示
町村議会議員及び長=少なくとも5日前に告示
今、さいたま市長選挙が行われいるが、5日告示で19日投開票。きっかり最低の14日間の運動期間になっている。
しかし、国政をゆだねる国会議員を選ぶ期間が、2~3週間しかなくていいのか。普通、町村より市が広く、さらに都道府県がさらに広いから、広い方が期間が長いのが判るけど、広い北海道や離島の多い沖縄でも均一に「17日間」でいいのだろうか。
選挙が長いと、おカネもかかるが体力も大変。さらにその間、政治判断が停まってしまう。現職が引退し、次を選ぶ選挙なんか、一月も二月もやってると、その間の行政がストップして弊害が大きい。今まではそう思われていたと思う。だけど、選挙期間が短いと、有力支持組織を固めるのに精一杯で、無党派の場合、候補者のことをよく知らないうちに投票日がくる。イメージで投票するのはそういう理由もある。党内の候補者選びの段階からネット選挙で行えば、ずいぶん関心を呼ぶのではないか。
僕はネットを活用する選挙にしていくには、少なくとも国政選挙は1か月、知事も1か月、地方自治体議員の選挙は2週間は欲しいと思う。その間の「選挙カーの演説」が聞きたいわけではない。それはうるさくて迷惑である。だから「ネット上でのみ、先に立候補を受け付ける」という「ネットのみ選挙運動期間」が欲しいという気がするのである。