尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

供託金はいらない-選挙を変えよう④

2013年05月12日 00時35分41秒 |  〃  (選挙)
 選挙のやり方にインターネットを認めても、それだけでは選挙が身近になったり、皆が関心を持つというようなことにはならない。今までもそうだけど、有力な候補者が立ち激戦になるということが人が一番選挙に行く条件である。有力な現職と弱小候補だけの選挙では、結果は見えているから関心の低い人は選挙に行かない。

 だから多くの人が政治に関心を持ち、選挙の投票率が高くなるには、選挙運動を変える(選挙運動の規制緩和)も大切だけど、多くの人が立候補しやすい制度になっていることが大切だ。それには二つの問題がある。現在フルタイムでなんらかの仕事をしている場合、仕事と選挙運動は両立しない。というか、仕事と議員活動は両立しない。しかし、選挙に当選するとは決まってないから、立候補の前に退職してしまうと、落選した時に困る。「選挙休職制度」が望まれるが、政党から立候補するときには、なかなか難しい。でも、「無所属」で「市町村議会議員」に立候補するときは、無条件に選挙運動期間は無給休職できる制度があると良い。まあ、それはともかく、選挙運動で変えるべきところはもっといっぱいあるのだが、その前に緊急性を持つのは、供託金の問題だと思う。

 供託金とは何かと言うと、立候補するにはカネがかかるのだ。もっとも、当選するか、しなくても一定以上の得票をすれば返してくれる。だから何のためにある制度かと言えば、むやみやたらに立候補するのを止めるという意味がある。立候補すれば政見が印刷されて配られるから、ある程度制限がないとむやみやたらに立候補して困るという気もする。東京知事選なんか、いつもおなじみの「泡沫候補」が何人も出る。それがタダになれば、もう個人的な恨みとか、「誰々さん、結婚してください」とか、政治には何の関係もないことを言いたいだけの「候補」が乱立するかもしれない。そういう候補のためにポスター掲示板を大きくしたり、政見を印刷して配るというのは、確かに税金のムダと言える。

 だから、国政選挙と知事選挙は、ある程度の供託金、またはそれに代わる制度があってもいいとは思う。でも、それにしても、今の金額設定はベラボ-としか言いようがない。ウィキペディアによれば、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどには供託金制度はない。イギリスが発祥らしいが、約9万円だとある。韓国が約150万、マレーシアが約90万とあり、これが高い方である。が、日本は世界の中で比較を絶した、チョー高額供託金になっている。もう、ビックリである。具体的に書けば、以下のようになる。公職選挙法92条である。

1  衆議院(小選挙区選出)議員の選挙   300万円
2  参議院(選挙区選出)議員の選挙    300万円
3  都道府県の議会の議員の選挙       60万円
4  都道府県知事の選挙          300万円
5  指定都市の議会の議員の選挙       50万円
6  指定都市の長の選挙          240万円
7  指定都市以外の市の議会の議員の選挙   30万円
8  指定都市以外の市の長の選挙      100万円
9  町村長の選挙   
  ここまでしか書いてないから、町村議員選挙は供託金がないのである。
 
 これに加えて、92条の2項、3項で、衆参の比例代表区に立候補する政党の規定がある。これが、恐るべきことに、一人当たり600万円である。(衆院で小選挙区と重複立候補するときは300万円。)

 この金額では、大政党は別として、無所属で国政選挙に出るのはとても大変である。そういう組織がない人は出なくていいと言えばそれまでだが、原発問題などを個人で訴えたいという人が衆参の選挙にいていいと思う。でも300万円かかるし、多分戻ってこない。若い人が市議会議員に立候補しようと思っても、30万はかなりのネックになるだろう。もっとも親や親類、同窓の友人なんかが支援してくれれば、それほど大変でもない金額だけど。そういう支持がある人だけが出ればいいとも思うが、もっと低くすれば若い人がすぐ出られる。というか、町村議会の場合、供託金はないんだから、市議会もなくていいのではないか。そうすれば、若い世代を政治の場に近づける一策になるだろう。
 
 で、供託金は具体的は法務局に現金または国債などを納める。細かくは「供託」というお金を預ける制度があり、それによっている。このお金は当選するか、有効投票総数の10分の1を超える得票をした候補には返還される。(衆議院小選挙区の場合。)他の選挙、または比例区の場合などで細かい決まりがある。(小選挙区、知事、市町村長などは当選者が一人なので、有効得票の10分の1になる。他の選挙は当選者が複数いる場合があるので、別に決まりが作られる。)
 
 昨年の衆議院選挙の東京13区で見てみる。(僕の選挙区)
 ここでは前回は民主で当選した平山泰朗と言う議員が立候補せず、前回は比例当選だった自民党の鴨下一郎が圧勝した。以下、維新、民主、共産、未来と言う順番で、合計23万179票だった。だから、供託金没収は、23017票以下となる。共産党候補が23091票で、かろうじて没収を免れ、最下位の日本未来の党の候補は没収された。つまり、共産党はギリギリ没収免除か、没収かという場合がある。しかし、自民党や民主党になると、ほとんど戻ってくることが事前に予想できる。

 2010年参院選で、民主党は45人も比例代表区に候補を立てた。(もうみな忘れていると思うけど、その中には、庄野真代、岡崎友紀、池谷幸雄、桂きん枝などがいた。)ひとり600万だから、6000000×45=270000000で2億7千万円にもなる。当選者は16人(これは第一党である)だが、当選者の2倍を超えた候補者の分の供託金は戻ってこないから、7800万ほど没収されたはずである。自民党も35人の候補者をたて、当選は12人だったから、6600万を没収されたと思う。大体の政党は、ある程度候補をたてて少しでも得票を集めようとする。だからたくさんの候補を立てるので、民主、自民だけでなく、みんなの党、公明、共産、社民なども皆たくさん没収されている。今やなき国民新党なんか7人たてて誰も当選しなかったから、4200万円没収である。一体、有力政党にそうやって国庫に寄与させて、なんか意味があるのだろうか。僕には全く意味が分からない。
 
 国政選挙(個人)や知事は国会に議席がある政党の候補はなし、新政党や無所属で出る場合は10万。国政選挙の比例区は、ひとりあたり20万。都道府県議会議員、指定都市市長などは10万。市町村議会議員は、指定都市も含めて供託金なし。と言うあたりでいいのではないか。

 と思うが、全く考え方を変えて、選挙区の有権者の推薦名簿を500人つける(知事選などの場合は人口比に応じて数千人)などと言うあり方に変えることもありかも知れない。この場合、選挙運動を全く変えることになる。「事前運動」はOKである。というか、選挙運動の前に「立候補運動」、私に一票をではなく、私を立候補させてください運動が先にあるわけだ
 (選挙運動の話は終わりにして、選挙制度や一票の価値に関する誤解を先に書いておきたい。)
コメント
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