都知事選が終わった。臨時国会が始まり、新しく当選した参議院議員が登院したニュースが流れたが、東京都民からすれば連続した選挙づくしで、参院選もずっと昔という感じだ。火曜の朝刊に各市区町村の得票が掲載されると思う。それを待って分析してみようかと思っていたのだけど、それを見るまでもない小池百合子の圧勝なので、サッサと書いてしまいたい。
まずは与党側の問題。今回は自民党選出の衆議院議員だった小池百合子が早々と出馬を表明。それに対して、自民党都連は冷たく対応して、別の候補として元総務相、元岩手県知事の増田寛也を擁立した。安倍内閣は「女性活躍社会」と掲げているのに、重要閣僚も務め知名度抜群の小池百合子ではなぜダメなんだと、まずこの時点で多くの女性有権者をして「小池びいき」にさせた。
僕は最初から「今回は小池百合子が相当取る」と思ったし、周囲にも言っていた。まあ、ここまで圧勝するとは思ってなかったが、何となくの選挙勘だけど、小池有利というムードはずっとあった。途中で小池有利が報道されたので、明らかに勢いが付いた。増田、鳥越陣営の方にミスがあったとも言える。東京の選挙(特に知事選)は「政党の枠組み」だけで勝てるようなものではない。増田陣営も鳥越陣営も「自分たちが見える票」を固めようとした。だけど、東京は「見えない有権者」の方が圧倒的に多い。ある意味、政策以上に「イメージ選挙」にならざるを得ない。良し悪しの問題ではなく。
選挙特番で自民党都連の石原伸晃に対して、池上彰がズバリ「なぜ小池さんを推薦しなかったんですか」と直撃していた。それに対して、「推薦願を自ら取り下げたので」と答えたので、「そう来ましたか」みたいに返していたのが印象的だった。自ら取り下げる前に、「取り下げざるを得なくさせる」「取り下げないでいても推薦は得られない」という状況があった。そこを聞いていたわけだけど。では、本当になぜ推薦しなかったのだろうか。どうせなら知名度の高い小池に乗ってしまえばいいではないか。と多くの人は思ったのではないだろうか。
僕が考えるに、その第一は「国会議員以外を探そうとした」ということである。最初は桜井俊前総務事務次官を擁立しようとした。話題性(いうまでもなく、アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親)もあり、官僚出身の手堅さも期待できるということである。しかし、桜井氏は総務省でも電波行政一筋で、旧自治省入省の地方自治官僚ではなかった。子どもの仕事をジャマしてどうすると断り続けたのは潔かった。なぜ政治家ではダメなのか。それは多かれ少なかれ、誰しも政治資金を突かれれば「絶対に問題がないとは言えない」ということだったと思う。すでに小池百合子の政治資金をめぐっても、週刊誌にチラホラ出ているようだ。週刊文春が今度は小池百合子スキャンダルを取り上げる日が来ないとは言えない。
さらに第二の問題として、小池百合子の「外様性」もあるのではないか。東京は実は相当に「保守」的な政治風土の地域である。というか、組織にとらえきれない大量の「浮動票」があるけど、それらの票はたまたま東京に住んでいる人も多く、地元に愛着がない。でも、各地域にずっと住み続けている商工業者がいるし、最近は若い人もずっと住み続けて地元意識があったりする。国政選挙では「無党派票」が出るときもあるが、区議選、市議選なんかの投票率は低い。そして昔からの有力者が各地域の政治権力を握り続けている。ひとたび「風」が吹けば与野党逆転の先駆けとなるが、今は圧倒的に「保守」が優勢である。
そんな風土の中に、小池百合子は2005年に突然「刺客」として飛び込んできた。もともと芦屋の人で兵庫県から衆議院に出ていた。必ずしも溶け込めていなかったのだろうと思う。そういう「外様性」もあって、長年東京で活動してきた有力議員からすれば、結構目障りな新参者だったのかもしれない。掟破りの出馬宣言に始まり、小泉郵政選挙仕込みの「劇場型選挙」を繰り広げた。ますます反感を買っただろうが、自民党の締め付けも保守系無党派有権者(一番多い)には逆効果だった。自民党の行動は、小池への追い風になるようなことばかりしていた。
一方、元岩手県知事の増田寛也の方が、実はずっと「東京人」である。父親が岩手選出の参議院議員だった縁で、小沢一郎に担がれて新進党から県知事選に出た。だけど、都立戸山高校から東大卒で、東京で育っている。建設官僚から岩手県知事と、確かに「地方行政のプロ」である。だけど、二宮尊徳じゃあるまいし、自由選挙をしている時代に、二つ以上の都道府県知事になることができるのだろうか。今までに東京都知事選に、浅野(宮城県)、東国原(宮崎県)、松沢(神奈川県)、増田(岩手県)と立候補したが、いずれも落選している。他には例はないと思う。「地元に精通している」というイメージと、他県で知事をしたという経歴は矛盾する。
増田氏に関しては、知名度の問題もあったけど、それ以上に「利益相反」が大きかったと思う。総務相時代は、東京都の税源を減らして全国へ回すという臨時措置を取った。今まで「地方創生」のような仕事をしてきて、今度は都知事で五輪のトップですかということだ。特に、2015年6月に発表された日本創成会議の座長として、「消滅可能性都市」として豊島区が挙げられていたことは大きかった。豊島区は小池の選挙区で、圧倒的に票が入っている。
ところで、小池百合子は「反党行為」として除名処分が下るのだろうか。多分、そういうことはないだろう。ここまで圧勝した人を処分できない。「勝てば官軍」である。実は安倍首相は一度も増田支援に入らなかった。告示日にはモンゴルに外遊で、帰ったら山梨の別荘でゴルフ三昧。その間に小池優勢報道があり、多分あえて誰の応援もしなかった。鳥越でなければ小池でいいやという暗黙のサインだろう。もうすぐ修復されるはずである。
当初は「冒頭解散」などと都議会を脅していたが、この時点では地方自治の仕組みに無知であることを露呈していた。だけど、これだけ圧勝したので、都議会を解散する必要はなくなると思われる。だが、圧勝したことにより、今後「女帝」として都庁に君臨するのではないだろうか。より上の首相に任命されただけの大臣に比べ、知事の権限ははるかに大きい。そうなると、やはり人間は権力者になってしまうものだ。そこでスキャンダルが報じられると、また任期途中で知事選ということもあり得なくはない。それとも頭を低くして五輪まで猫をかぶって続けられるか。安倍首相の任期延長がありそうな状況になってきて、もう日本初の女性首相は無理だろう。となると、今度は自民とよりを戻して都議会を円滑に運営できるように気配りして、「2020年東京五輪の時の女性知事」を何としてもやり遂げるのか。
小池百合子の政治姿勢、政治信条がかなり右翼的であることは、選挙途中から市民運動圏の人々がかなり発信してきたと思う。憲法の考え方なども安倍首相と同じ、歴史観なども同様、「日本会議」との関連も強いということだが、そういう「運動圏」の情報が届く、動かせる層は圧倒的に少ない。強権的な教育行政も変わらないのではないか。僕は以前から「舛添を辞めさせて、かえって舛添以下的知事を誕生させる結果にならないか」と言ってきた。僕にはどうも、その恐れも否定できないようにと思える。今の時点で選挙をすれば、こういうこともあるということだ。(一気に野党側の方も書くつもりだったけど、長くなってしまったので明日に。)
まずは与党側の問題。今回は自民党選出の衆議院議員だった小池百合子が早々と出馬を表明。それに対して、自民党都連は冷たく対応して、別の候補として元総務相、元岩手県知事の増田寛也を擁立した。安倍内閣は「女性活躍社会」と掲げているのに、重要閣僚も務め知名度抜群の小池百合子ではなぜダメなんだと、まずこの時点で多くの女性有権者をして「小池びいき」にさせた。
僕は最初から「今回は小池百合子が相当取る」と思ったし、周囲にも言っていた。まあ、ここまで圧勝するとは思ってなかったが、何となくの選挙勘だけど、小池有利というムードはずっとあった。途中で小池有利が報道されたので、明らかに勢いが付いた。増田、鳥越陣営の方にミスがあったとも言える。東京の選挙(特に知事選)は「政党の枠組み」だけで勝てるようなものではない。増田陣営も鳥越陣営も「自分たちが見える票」を固めようとした。だけど、東京は「見えない有権者」の方が圧倒的に多い。ある意味、政策以上に「イメージ選挙」にならざるを得ない。良し悪しの問題ではなく。
選挙特番で自民党都連の石原伸晃に対して、池上彰がズバリ「なぜ小池さんを推薦しなかったんですか」と直撃していた。それに対して、「推薦願を自ら取り下げたので」と答えたので、「そう来ましたか」みたいに返していたのが印象的だった。自ら取り下げる前に、「取り下げざるを得なくさせる」「取り下げないでいても推薦は得られない」という状況があった。そこを聞いていたわけだけど。では、本当になぜ推薦しなかったのだろうか。どうせなら知名度の高い小池に乗ってしまえばいいではないか。と多くの人は思ったのではないだろうか。
僕が考えるに、その第一は「国会議員以外を探そうとした」ということである。最初は桜井俊前総務事務次官を擁立しようとした。話題性(いうまでもなく、アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親)もあり、官僚出身の手堅さも期待できるということである。しかし、桜井氏は総務省でも電波行政一筋で、旧自治省入省の地方自治官僚ではなかった。子どもの仕事をジャマしてどうすると断り続けたのは潔かった。なぜ政治家ではダメなのか。それは多かれ少なかれ、誰しも政治資金を突かれれば「絶対に問題がないとは言えない」ということだったと思う。すでに小池百合子の政治資金をめぐっても、週刊誌にチラホラ出ているようだ。週刊文春が今度は小池百合子スキャンダルを取り上げる日が来ないとは言えない。
さらに第二の問題として、小池百合子の「外様性」もあるのではないか。東京は実は相当に「保守」的な政治風土の地域である。というか、組織にとらえきれない大量の「浮動票」があるけど、それらの票はたまたま東京に住んでいる人も多く、地元に愛着がない。でも、各地域にずっと住み続けている商工業者がいるし、最近は若い人もずっと住み続けて地元意識があったりする。国政選挙では「無党派票」が出るときもあるが、区議選、市議選なんかの投票率は低い。そして昔からの有力者が各地域の政治権力を握り続けている。ひとたび「風」が吹けば与野党逆転の先駆けとなるが、今は圧倒的に「保守」が優勢である。
そんな風土の中に、小池百合子は2005年に突然「刺客」として飛び込んできた。もともと芦屋の人で兵庫県から衆議院に出ていた。必ずしも溶け込めていなかったのだろうと思う。そういう「外様性」もあって、長年東京で活動してきた有力議員からすれば、結構目障りな新参者だったのかもしれない。掟破りの出馬宣言に始まり、小泉郵政選挙仕込みの「劇場型選挙」を繰り広げた。ますます反感を買っただろうが、自民党の締め付けも保守系無党派有権者(一番多い)には逆効果だった。自民党の行動は、小池への追い風になるようなことばかりしていた。
一方、元岩手県知事の増田寛也の方が、実はずっと「東京人」である。父親が岩手選出の参議院議員だった縁で、小沢一郎に担がれて新進党から県知事選に出た。だけど、都立戸山高校から東大卒で、東京で育っている。建設官僚から岩手県知事と、確かに「地方行政のプロ」である。だけど、二宮尊徳じゃあるまいし、自由選挙をしている時代に、二つ以上の都道府県知事になることができるのだろうか。今までに東京都知事選に、浅野(宮城県)、東国原(宮崎県)、松沢(神奈川県)、増田(岩手県)と立候補したが、いずれも落選している。他には例はないと思う。「地元に精通している」というイメージと、他県で知事をしたという経歴は矛盾する。
増田氏に関しては、知名度の問題もあったけど、それ以上に「利益相反」が大きかったと思う。総務相時代は、東京都の税源を減らして全国へ回すという臨時措置を取った。今まで「地方創生」のような仕事をしてきて、今度は都知事で五輪のトップですかということだ。特に、2015年6月に発表された日本創成会議の座長として、「消滅可能性都市」として豊島区が挙げられていたことは大きかった。豊島区は小池の選挙区で、圧倒的に票が入っている。
ところで、小池百合子は「反党行為」として除名処分が下るのだろうか。多分、そういうことはないだろう。ここまで圧勝した人を処分できない。「勝てば官軍」である。実は安倍首相は一度も増田支援に入らなかった。告示日にはモンゴルに外遊で、帰ったら山梨の別荘でゴルフ三昧。その間に小池優勢報道があり、多分あえて誰の応援もしなかった。鳥越でなければ小池でいいやという暗黙のサインだろう。もうすぐ修復されるはずである。
当初は「冒頭解散」などと都議会を脅していたが、この時点では地方自治の仕組みに無知であることを露呈していた。だけど、これだけ圧勝したので、都議会を解散する必要はなくなると思われる。だが、圧勝したことにより、今後「女帝」として都庁に君臨するのではないだろうか。より上の首相に任命されただけの大臣に比べ、知事の権限ははるかに大きい。そうなると、やはり人間は権力者になってしまうものだ。そこでスキャンダルが報じられると、また任期途中で知事選ということもあり得なくはない。それとも頭を低くして五輪まで猫をかぶって続けられるか。安倍首相の任期延長がありそうな状況になってきて、もう日本初の女性首相は無理だろう。となると、今度は自民とよりを戻して都議会を円滑に運営できるように気配りして、「2020年東京五輪の時の女性知事」を何としてもやり遂げるのか。
小池百合子の政治姿勢、政治信条がかなり右翼的であることは、選挙途中から市民運動圏の人々がかなり発信してきたと思う。憲法の考え方なども安倍首相と同じ、歴史観なども同様、「日本会議」との関連も強いということだが、そういう「運動圏」の情報が届く、動かせる層は圧倒的に少ない。強権的な教育行政も変わらないのではないか。僕は以前から「舛添を辞めさせて、かえって舛添以下的知事を誕生させる結果にならないか」と言ってきた。僕にはどうも、その恐れも否定できないようにと思える。今の時点で選挙をすれば、こういうこともあるということだ。(一気に野党側の方も書くつもりだったけど、長くなってしまったので明日に。)