あらゆる問題をすべて書くのは、時間的にも能力的にもムリ。だから書いてないことはいっぱいあるけど、たとえば「沖縄問題」などは、自分独自の見解ではなく新聞の社説みたいな事しか書けないから、そういう時はタテマエみたいな記事は書かないことにしている。(だけど、現地の状況はほぼ毎日各種ブログや県紙のホームページで見ている。)「天皇の生前譲位問題」も書いてないけど、これは実は「SMAP解散」と同じぐらい、自分には関心がないので書いてない。(だけど、さまざまな人の意見を見ていると、「天皇の歴史」を知らない人が多いようなので、いずれそれを書くかも。)
さて、「第31回リオデジャネイロ・オリンピック」のことも書いてなかった。まあ、競技ごとに書いてても時間ばかりかかるから書いてこなかったけど、見ることは見ている。世界最大のスポーツの祭典なのだから、見ないわけにはいかない。だけど、時差がちょうど12時間あって、柔道もレスリングも、サッカーもバスケも決勝をLIVEで見られない。予選などは見てても、決勝を生で見られないことが多くて、個人的にはいま一つの盛り上がりだった。ちなみに、「リオデジャネイロ」とは「1月の川」という意味。サンパウロに次ぐブラジル第二の都市で、1960年まで首都だった。
さて、日本選手団は五輪史上最多のメダルを獲得したけど、全然予想もされない金メダルがなかった。日本の金は12個で、内訳は柔道3、水泳2、体操2、レスリング4、バドミントン1。バドミントンは初めての金だけど、世界ランキング1位なんだから、金じゃなくてもメダルは想定されていた。柔道、水泳、体操、レスリングを鈴木大地スポーツ庁長官は「御四家」と呼んでいるそうだ。毎回いつもこの4つ以外からの金メダルはほとんどない。(ロンドン五輪のボクシング村田、北京五輪のソフトボール、アテネの陸上、室伏と野口みずき、シドニーの高橋尚子、それ以前になると、1984年のロス五輪の射撃蒲池猛夫までさかのぼる。)今回の目標は14個だったから、吉田沙保里と白井健三の床運動があれば届いていたことになる。
その国その国で得意種目があるわけで、日本が全種目で活躍しなくてもいい。そんなことは無理だし。だけど、「金メダルじゃなくても価値はある」というのもタテマエになりやすい。僕もメダル至上主義を打ち出されると大反対することになるけど、世界中から優れたスポーツ選手が集って競うんだから、誰しも一番になりたいのは当然だろう。そして、ある人は金メダルを取った。銀や銅、あるいは入賞では価値がないかというと、そうではない。そうではないけど、金メダルを取った人は十分に称えたい。
そう思うんだけど、そうするとなんと4回も連続して金メダルを取ったという偉業を成し遂げた人がいる。一人は水泳のマイケル・フェルプスで、200m個人メドレーである。(銀は萩野公介)100mバタフライも4連覇が掛かっていたが、ジョセフ・スクーリングという選手がシンガポール初の金メダルを獲得した。4連覇は今までにもカール・ルイスの走り幅跳びなど3人がいたというが、皆男子種目である。そして、今回初めて、連続して4回金メダルを取った女性が登場した。言うまでもなく、女子レスリングの伊調馨(いちょう・かおり)だ。もう地元の八戸市長などが言い出しているというけど、当然「国民栄誉賞」を授賞しなくてはいけない。僕が言わなくても当然そうなると思うけど、そして政府が出す賞にそれほど大きな価値を感じているわけではないけど、やっぱりそれがふさわしい。
女子レスリングは吉田、伊調ともに、昨年の世界選手権金メダリスト登坂絵莉の金メダルが有望視されていた。一方、昨年銀メダルの川井梨紗子、銅メダルの土性沙羅は二番手とみられていた。だけど、ここで考えておくべき大問題があった。前回五輪の女子は4階級。世界選手権は8階級。今回実施の五輪は6階級だった。世界選手権にあって、五輪にないのは55キロ級と60キロ級だった。そして、今まで吉田沙保里は55キロ級、伊調馨は63キロ級で金を取ってきた。今回伊調は五輪に新設された58キロ級に転じた。そういう意味では、厳密に言えば「同一種目で連続4回の金メダル」と言っていいのかという問題がある。だけど、これは本人の問題ではない。レスリング界の事情による階級変更だから、やはり「連続した4連覇」と言っていいと思う。
ところで、何で女子の階級が変更され2階級がプラスになったのか。覚えている人が多いと思うけど、レスリングは一度五輪種目から消えかかった。古代ギリシャ、ローマから続く種目(男子にある「グレコローマン」とは「ギリシャローマ時代のスタイル」という意味である)がなくなるなどありえないと関係者は油断していたのだろう。日本だけでなく、世界中のレスリング界の大運動もあって、この種目は存続できた。その先頭になった一人が、女子レスリング界のリーダー、吉田沙保里だった。だから、吉田沙保里は単に勝ったとか負けたとか、日本のメダル数がどうのといった問題を超えた、女子レスリングという種目が今五輪にあるということを象徴するような存在だったのである。
レスリングが外されかかったのは、一つには女子種目が少なすぎるという問題もあった。だから女子レスリングは6階級に増やされた。だけど、世界選手権は8階級である。どこで出るか、絶対王者の吉田、伊調を避けるか、あえて挑むか、熾烈な神経戦もあっただろう。日本国内では、二人を避けて他の階級に移った選手もいた。そして、世界選手権55キロ級金メダリストの米国ヘレン・マルーリスはあえて、53キロ級に階級を下げて吉田に挑戦する道を選んだ。そして、昨年の53キロ級銀メダルのソフィア・マットソンという選手ではなく、このマルーリスが吉田沙保里を倒すことになったわけである。
吉田沙保里は、でも「負けたことによって、さらに記憶に残る伝説的選手になった」という感じがする。僕は予選は見ていたのである。他の選手もそうだったけど、予選は非常に強い感じだった。だけど、女子の最初の日、金メダル3つを連続して取った登坂、伊調、土性はみな大逆転だった。後で見てとても信じられないような試合だった。運命のように、最後の最後に大逆転をした。バドミントンの高橋・松友組も最後に大逆転したけど、これは本人たちも言う通り、伊調馨らの大逆転に心理的な励ましを受けていた。だけど、吉田沙保里は最後の最後に信じられないような試合で負けてしまった。最後まで逆転を信じ努力しても、そうなることもあれば、ならないこともある。「C'est la vie」(セ・ラヴィ=これが人生だ)。
ところで、女子レスリングの選手はみな、愛知県にある「至学館大学」の選手である。これは元は「中京女子大学」という大学だった。鹿児島に「志學館大学」と言うのもあるが、こことは違う。また中京大学というのもあるが、こことも違う。学校法人谷岡学園と言って、学長は谷岡郁子。これで思い出す人は何人いるだろうか。2007年に民主党から参議院に当選し、その後離党して「みどりの風」の代表を務めていた、あの人である。そして、この人が女子レスリング強化を主導的に進めてきたようである。でも、本当は代表がもっとばらつく方がいいんだろうと思う。つまり、まだ女子レスリング界は狭い世界だということなんだろうと思う。
さて、「第31回リオデジャネイロ・オリンピック」のことも書いてなかった。まあ、競技ごとに書いてても時間ばかりかかるから書いてこなかったけど、見ることは見ている。世界最大のスポーツの祭典なのだから、見ないわけにはいかない。だけど、時差がちょうど12時間あって、柔道もレスリングも、サッカーもバスケも決勝をLIVEで見られない。予選などは見てても、決勝を生で見られないことが多くて、個人的にはいま一つの盛り上がりだった。ちなみに、「リオデジャネイロ」とは「1月の川」という意味。サンパウロに次ぐブラジル第二の都市で、1960年まで首都だった。
さて、日本選手団は五輪史上最多のメダルを獲得したけど、全然予想もされない金メダルがなかった。日本の金は12個で、内訳は柔道3、水泳2、体操2、レスリング4、バドミントン1。バドミントンは初めての金だけど、世界ランキング1位なんだから、金じゃなくてもメダルは想定されていた。柔道、水泳、体操、レスリングを鈴木大地スポーツ庁長官は「御四家」と呼んでいるそうだ。毎回いつもこの4つ以外からの金メダルはほとんどない。(ロンドン五輪のボクシング村田、北京五輪のソフトボール、アテネの陸上、室伏と野口みずき、シドニーの高橋尚子、それ以前になると、1984年のロス五輪の射撃蒲池猛夫までさかのぼる。)今回の目標は14個だったから、吉田沙保里と白井健三の床運動があれば届いていたことになる。
その国その国で得意種目があるわけで、日本が全種目で活躍しなくてもいい。そんなことは無理だし。だけど、「金メダルじゃなくても価値はある」というのもタテマエになりやすい。僕もメダル至上主義を打ち出されると大反対することになるけど、世界中から優れたスポーツ選手が集って競うんだから、誰しも一番になりたいのは当然だろう。そして、ある人は金メダルを取った。銀や銅、あるいは入賞では価値がないかというと、そうではない。そうではないけど、金メダルを取った人は十分に称えたい。
そう思うんだけど、そうするとなんと4回も連続して金メダルを取ったという偉業を成し遂げた人がいる。一人は水泳のマイケル・フェルプスで、200m個人メドレーである。(銀は萩野公介)100mバタフライも4連覇が掛かっていたが、ジョセフ・スクーリングという選手がシンガポール初の金メダルを獲得した。4連覇は今までにもカール・ルイスの走り幅跳びなど3人がいたというが、皆男子種目である。そして、今回初めて、連続して4回金メダルを取った女性が登場した。言うまでもなく、女子レスリングの伊調馨(いちょう・かおり)だ。もう地元の八戸市長などが言い出しているというけど、当然「国民栄誉賞」を授賞しなくてはいけない。僕が言わなくても当然そうなると思うけど、そして政府が出す賞にそれほど大きな価値を感じているわけではないけど、やっぱりそれがふさわしい。
女子レスリングは吉田、伊調ともに、昨年の世界選手権金メダリスト登坂絵莉の金メダルが有望視されていた。一方、昨年銀メダルの川井梨紗子、銅メダルの土性沙羅は二番手とみられていた。だけど、ここで考えておくべき大問題があった。前回五輪の女子は4階級。世界選手権は8階級。今回実施の五輪は6階級だった。世界選手権にあって、五輪にないのは55キロ級と60キロ級だった。そして、今まで吉田沙保里は55キロ級、伊調馨は63キロ級で金を取ってきた。今回伊調は五輪に新設された58キロ級に転じた。そういう意味では、厳密に言えば「同一種目で連続4回の金メダル」と言っていいのかという問題がある。だけど、これは本人の問題ではない。レスリング界の事情による階級変更だから、やはり「連続した4連覇」と言っていいと思う。
ところで、何で女子の階級が変更され2階級がプラスになったのか。覚えている人が多いと思うけど、レスリングは一度五輪種目から消えかかった。古代ギリシャ、ローマから続く種目(男子にある「グレコローマン」とは「ギリシャローマ時代のスタイル」という意味である)がなくなるなどありえないと関係者は油断していたのだろう。日本だけでなく、世界中のレスリング界の大運動もあって、この種目は存続できた。その先頭になった一人が、女子レスリング界のリーダー、吉田沙保里だった。だから、吉田沙保里は単に勝ったとか負けたとか、日本のメダル数がどうのといった問題を超えた、女子レスリングという種目が今五輪にあるということを象徴するような存在だったのである。
レスリングが外されかかったのは、一つには女子種目が少なすぎるという問題もあった。だから女子レスリングは6階級に増やされた。だけど、世界選手権は8階級である。どこで出るか、絶対王者の吉田、伊調を避けるか、あえて挑むか、熾烈な神経戦もあっただろう。日本国内では、二人を避けて他の階級に移った選手もいた。そして、世界選手権55キロ級金メダリストの米国ヘレン・マルーリスはあえて、53キロ級に階級を下げて吉田に挑戦する道を選んだ。そして、昨年の53キロ級銀メダルのソフィア・マットソンという選手ではなく、このマルーリスが吉田沙保里を倒すことになったわけである。
吉田沙保里は、でも「負けたことによって、さらに記憶に残る伝説的選手になった」という感じがする。僕は予選は見ていたのである。他の選手もそうだったけど、予選は非常に強い感じだった。だけど、女子の最初の日、金メダル3つを連続して取った登坂、伊調、土性はみな大逆転だった。後で見てとても信じられないような試合だった。運命のように、最後の最後に大逆転をした。バドミントンの高橋・松友組も最後に大逆転したけど、これは本人たちも言う通り、伊調馨らの大逆転に心理的な励ましを受けていた。だけど、吉田沙保里は最後の最後に信じられないような試合で負けてしまった。最後まで逆転を信じ努力しても、そうなることもあれば、ならないこともある。「C'est la vie」(セ・ラヴィ=これが人生だ)。
ところで、女子レスリングの選手はみな、愛知県にある「至学館大学」の選手である。これは元は「中京女子大学」という大学だった。鹿児島に「志學館大学」と言うのもあるが、こことは違う。また中京大学というのもあるが、こことも違う。学校法人谷岡学園と言って、学長は谷岡郁子。これで思い出す人は何人いるだろうか。2007年に民主党から参議院に当選し、その後離党して「みどりの風」の代表を務めていた、あの人である。そして、この人が女子レスリング強化を主導的に進めてきたようである。でも、本当は代表がもっとばらつく方がいいんだろうと思う。つまり、まだ女子レスリング界は狭い世界だということなんだろうと思う。