中世の話を長く書きすぎたので、今回は短くして2回に分けることにする。「教育」に関するさまざまな話題を、9月にかけてまとめて書いておきたいと思っている。まずは「教員免許更新制」である。
もっとも何か新しいことがあったわけではない。ちょっとあったけど、それは次回に回して、まずは「原理的問題」を書いておきたい。この教員免許更新制も2011年から実施されているので、6年目を迎えている。1年前には講習を受講しないといけないので、事実上7年目とも言える。55歳の人は管理職や主幹になっていて受講免除の人も多いと思うが、ここまで続いてしまうと全教員の半分以上は「免許更新」の対象になったのではないか。「10年研修」は廃止されるということだったが、政府に動きはないようだから、いまだに「二重苦」が続いている。
もう少しすると、45歳、55歳の教員の2回目、そして「初めから10年期限の免許を取得した教員の35歳の最初の更新」もやってきてしまう。そういう若い教員にとっては、「初めから決まっていたこと」だから、免許更新講習を受けることにもそれほど違和感がないのかもしれない。だけど、その結果「教育の質は向上したのか」と問うと、どうなんだろう。更新制導入後にも、それ以前と同じくというか、むしろより多く、教員の「不祥事」が報じられている気がする。
ある意味で当然のことだろう。「負荷」が大きければ大きくなるほど、「破綻」するものも多くなる。そういうこともあるし、それ以上に「教員免許」は「私的資格」だという「免許更新制」の本質から、教員が「公教育」を担っているという誇りが薄れていってしまう。
時々、「受講した講習が役に立った」という理由で、「更新制はあってもいい」などと主張する人がいる。これこそまさに「本末転倒」の考え方である。更新制の主眼は、講習を受けさせることではない。もし講習が役に立つというなら、「講習を受けて合格した人はそれで免許が更新される」という仕組みになるはずである。そうではなくて、講習だけではダメで、その後に「自己責任」で「私的資格である教員免許」を教育委員会に更新を申請しないといけない。それを忘れたことで、失職して教壇を追われた人が何人もいる。講習は受けていても、それだけではダメなのである。「更新手続き」の方が、更新制度の本質なのである。
当初は教育委員会で講習を行う案もあったけれど、とても請け負いかねるということで、「大学等で行う講習」を受けることに制度が変更された。大学に行くのも久しぶり、大学の先生の話は、いつも受けさせられているつまらない官製研修と違って、教育行政批判もあったりして「案外面白かった」という人もいる。それはそれでいいけど、それなら、「10年に一度、長期休業中に大学で研修する」という制度にすればいいだけである。いくら工夫して頑張っている大学だって、それを受けないと教員資格を失うというほど素晴らしい講習をしているわけでもあるまい。何もしないで更新するわけにはいかないから、大学で受講するという風に作られただけである。
それは結局、「教員免許は私的資格」だという決めつけに行きつく。だから「講習」であって「研修」ではない。だから、出張にはならない。自己負担で行く。「職免」(職務専念義務の免除)は申請できるはずだが、管理職が不勉強、もしくは不親切で、「年休」で受講している人も多いらしい。全国には職場で組合活動がほとんどできていない中学校が非常に多いだろうから、制度のこともよく知らない人が多いかもしれない。講習費と交通費の負担が嫌だというよりも、というか嫌には違いないだろうけど、それ以上に「公教育を担っている」という仕事が「私的」なものだということに納得できないと思う。
運転免許は私的な資格だから、更新するときは休暇を取っていかなくて行けない。教員が運転免許を更新するときに、年休を取っていくのは当然だ。しかし、「それと同じように、教員免許は教員の私的な資格だから、更新するために教育委員会に行くときには、休暇を取っていかなくてはいけない」なんていうのが、当たり前になってしまっていいのか。学校で教師が行っている仕事は、そんな私的な性格のものだったのか。そうだったんだ。次世代の社会を担う人造りを行う、社会的に意義ある立派な仕事ではなかったのである。それが「教員免許更新制の本質」である。
教育基本法を「改正」し、教員免許更新制を導入した第一次安倍内閣。安倍内閣が復活以来、教育行政もすっかり様変わりした。そんな中で、ついに私立小中学校に通う生徒の保護者にも補助金を出すという案が有力になっている。高校の話ではない。本来は全生徒がいけるはずの公立小中学校がある。いじめを避けて転校するなどと言っても、私立から公立に移る例はあっても、公立学校の生徒を私立が受け入れてくる例があるのか。こうして、教員の資格を私的なものにした後では、「学校に行く」と言うことそれ自体も、親の行う私的な行為となっていく。「公教育」という発想は、もう今の政権にはないんだと思う。
もっとも何か新しいことがあったわけではない。ちょっとあったけど、それは次回に回して、まずは「原理的問題」を書いておきたい。この教員免許更新制も2011年から実施されているので、6年目を迎えている。1年前には講習を受講しないといけないので、事実上7年目とも言える。55歳の人は管理職や主幹になっていて受講免除の人も多いと思うが、ここまで続いてしまうと全教員の半分以上は「免許更新」の対象になったのではないか。「10年研修」は廃止されるということだったが、政府に動きはないようだから、いまだに「二重苦」が続いている。
もう少しすると、45歳、55歳の教員の2回目、そして「初めから10年期限の免許を取得した教員の35歳の最初の更新」もやってきてしまう。そういう若い教員にとっては、「初めから決まっていたこと」だから、免許更新講習を受けることにもそれほど違和感がないのかもしれない。だけど、その結果「教育の質は向上したのか」と問うと、どうなんだろう。更新制導入後にも、それ以前と同じくというか、むしろより多く、教員の「不祥事」が報じられている気がする。
ある意味で当然のことだろう。「負荷」が大きければ大きくなるほど、「破綻」するものも多くなる。そういうこともあるし、それ以上に「教員免許」は「私的資格」だという「免許更新制」の本質から、教員が「公教育」を担っているという誇りが薄れていってしまう。
時々、「受講した講習が役に立った」という理由で、「更新制はあってもいい」などと主張する人がいる。これこそまさに「本末転倒」の考え方である。更新制の主眼は、講習を受けさせることではない。もし講習が役に立つというなら、「講習を受けて合格した人はそれで免許が更新される」という仕組みになるはずである。そうではなくて、講習だけではダメで、その後に「自己責任」で「私的資格である教員免許」を教育委員会に更新を申請しないといけない。それを忘れたことで、失職して教壇を追われた人が何人もいる。講習は受けていても、それだけではダメなのである。「更新手続き」の方が、更新制度の本質なのである。
当初は教育委員会で講習を行う案もあったけれど、とても請け負いかねるということで、「大学等で行う講習」を受けることに制度が変更された。大学に行くのも久しぶり、大学の先生の話は、いつも受けさせられているつまらない官製研修と違って、教育行政批判もあったりして「案外面白かった」という人もいる。それはそれでいいけど、それなら、「10年に一度、長期休業中に大学で研修する」という制度にすればいいだけである。いくら工夫して頑張っている大学だって、それを受けないと教員資格を失うというほど素晴らしい講習をしているわけでもあるまい。何もしないで更新するわけにはいかないから、大学で受講するという風に作られただけである。
それは結局、「教員免許は私的資格」だという決めつけに行きつく。だから「講習」であって「研修」ではない。だから、出張にはならない。自己負担で行く。「職免」(職務専念義務の免除)は申請できるはずだが、管理職が不勉強、もしくは不親切で、「年休」で受講している人も多いらしい。全国には職場で組合活動がほとんどできていない中学校が非常に多いだろうから、制度のこともよく知らない人が多いかもしれない。講習費と交通費の負担が嫌だというよりも、というか嫌には違いないだろうけど、それ以上に「公教育を担っている」という仕事が「私的」なものだということに納得できないと思う。
運転免許は私的な資格だから、更新するときは休暇を取っていかなくて行けない。教員が運転免許を更新するときに、年休を取っていくのは当然だ。しかし、「それと同じように、教員免許は教員の私的な資格だから、更新するために教育委員会に行くときには、休暇を取っていかなくてはいけない」なんていうのが、当たり前になってしまっていいのか。学校で教師が行っている仕事は、そんな私的な性格のものだったのか。そうだったんだ。次世代の社会を担う人造りを行う、社会的に意義ある立派な仕事ではなかったのである。それが「教員免許更新制の本質」である。
教育基本法を「改正」し、教員免許更新制を導入した第一次安倍内閣。安倍内閣が復活以来、教育行政もすっかり様変わりした。そんな中で、ついに私立小中学校に通う生徒の保護者にも補助金を出すという案が有力になっている。高校の話ではない。本来は全生徒がいけるはずの公立小中学校がある。いじめを避けて転校するなどと言っても、私立から公立に移る例はあっても、公立学校の生徒を私立が受け入れてくる例があるのか。こうして、教員の資格を私的なものにした後では、「学校に行く」と言うことそれ自体も、親の行う私的な行為となっていく。「公教育」という発想は、もう今の政権にはないんだと思う。