尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

限りなく怪しい下村氏の「加計学園闇献金」問題

2017年07月01日 22時58分56秒 | 政治
 今週の「週刊文春」が下村博文元文科相が加計学園から200万円の「闇献金」を受けたと報じた。現在、下村氏は自民党東京都連会長だから、都議選中に報道するのは選挙妨害だと反発している。ちょっとこの問題を考えてみたいけれど、どう見ても怪しいと思う。

 週刊文春オンラインから引用すると、以下のようになる。
「下村博文元文科相(63)が、加計学園から200万円の違法な献金を受けた疑いがあることがわかった。「週刊文春」が入手した下村事務所の内部文書で判明した。下村事務所が作成した<2013年博友会パーティー入金状況>によると、<9月27日 学校 加計学園 1,000,000>と記載されている。博友会とは、当時、文部科学大臣だった下村氏の後援会であり、この年の10月、大規模な資金集めパーティーを開いていた。また、翌年の<2014年博友会パーティー入金状況>には、10月10日付で<学校 山中一郎 加計学園 1,000,000>と記載されていた。山中氏は当時、加計学園の秘書室長を務めており、政界との窓口となっていた。」

 下村氏によれば、2013年と2014年に、山中という加計の秘書室長が100万円ずつ2回を下村氏側に運んでいたことは事実だという。政治資金規正法では、20万円を超えるパーティー券購入は政治資金収支報告書に記載しなくてはいけない。だけど、その時の100万円は、実は11の個人・企業が出したものをまとめて持ってきたもので、そのような領収書を出しているという。だから、違法な措置ではないということらしいんだけど、これはどう考えてもおかしいだろう。

 下村氏は、2012年12月26日から2015年10月6日まで、3年近くも文部科学大臣を務めていた。東京五輪・パラリンピック担当などの他、「教育再生担当」などという役目もあった。安倍首相と同じ年齢で、東京11区(板橋区)から当選7回を続けている。自民党内でも右派で知られていて、安倍氏との関係は深い。そういう重要な地位にある下村氏だから、純粋に「政治家下村博文」を支持しようとパーティ券を買う人も、まあそれなりにいないわけでもないだろう。

 でも、そういう個人や企業が11集まって、お金がピタリと100万円になったということがあるだろうか。それも2回続けて。誰かが仕切ってお金集めをしない限り、こういうことは起こらない。職場などで義援金や、香典、祝い金などを集めた経験は誰でもあるだろう。それぞれが出す基準が示され、足りない分を上司なんかが多く出してピッタリした金額にそろえる。そういうことが多いんじゃないか。そうすると、政治資金パーティの「あっせん」にあたり、名前の報告が必要だという。

 そういう風に加計学園秘書室長が仕切ったのかもしれないけど、さらに言えば多分それも違うだろう。パーティ券そのものはいくらするんだろうか。パーティに出れば、飲食の用意があって出した分の対価はある。でも収支トントンでは開いた意味がないから、ある程度高めに設定される。その上、出席しない人の分を含めて何人かの分をまとめて買う人もいる。そういうことなんだろうと思う。東京新聞(7月1日付)によれば、パーティ券は大体1万円か2万円が多いという話。

 そう考えてくると、「1枚2万円のパーティ券を50人分まとめ買いした」と見る方が、むしろ自然ではないだろうか。そのうえで政治資金規正法に引っかからないように、11の個人・企業が出したように領収書を作ってもらうということである。そうじゃないと言うなら、誰がパーティ券を買ったのか明らかにするしかない。支持する政治家を応援しようと「浄財」を出したんだから、個人のプライバシーなどという問題は起こらないはずだ。「疑惑」を一掃したいなら、それしかない。

 問題は「学校法人加計学園」は政治資金を出すことができないということである。それは言うまでもなく、国から補助金を受けているからである。政治資金規正法第23条の2に以下の規定がある。「国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付の決定(中略)を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日(中略)までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。」

 加計学園グループは、姉の加計美也子氏が経営する「順正学園」(吉備国際大学等)と弟の加計孝太郎氏が経営する「加計学園」に分かれている。そのうち加計学園グループを見てみると、岡山理科大学倉敷芸術科学大学千葉科学大学などの他、専門学校や附属の中高などがある。(千葉県銚子市にある千葉科学大は2004年に開校し、10周年に際して加計氏が「安倍君を連れて来よう」と言って、アベ君が訪れたというところである。)

 それではそれらの大学に、どれほどの補助金が支給されているのだろうか。それは判るだろうかと思ったら、「日本私立学校振興・共済事業団」のホームページに、「私立大学等経常費補助金」が出ていた。その中の「平成28年」「大学」をクリックすると、多い順番に掲載されている。早稲田、東海、慶応、日大、立命館…といった具合で、日大までは80億円以上がつぎ込まれている。

 その74番目が「岡山理科大学」で、一般補助、特別補助合わせて約8億円。190位に「千葉科学大学」で、約3億6千万円。266位が「倉敷芸術科学大学」で、約2億6千万円。このように、他の私学と同様に加計学園グループに属する大学も国からの補助金を受けて運営されている。だから、当然のこととして、法人として政治献金を行うことはできない。

 そして、もちろん形の上では下村氏のパーティ券購入も、法人ではなく個人が行っているわけである。だけど、それを法人の秘書室長が持ってきている。これは「グレーゾーン」というしかない。大学そのものではなくても、大学の経営陣に属する人物が政治献金のとりまとめをする(したとして)。それは限りなく、税金が政治家に還流するというのに近くないか

 それに、加計学園としては、岡山理科大学に、2016年度から教育学部、2017年度から経営学部、2018年度から獣医学部(予定)と増設中で、ここ数年でどんどん拡大している。教育学部の新設を認可した時の文科相は下村氏である。特に何を頼むという目的ではなくても、文科相を務める有力政治家のパーティには是非とも参加したい立場だっただろう。実際の参加希望者が持ち寄って、端数が出ているというなら別だけど、2回とも100万円キッチリというところに、どうも僕は法に触れるような実態がなかったかと思ってしまうのである。
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安倍「お友達内閣」をどう考えるべきか

2017年07月01日 00時01分29秒 |  〃  (安倍政権論)
 2012年12月に復権していて以来、第2次、第3次と長期政権を続ける安倍晋三内閣。今までも何回も触れているけれど、その「お友達内閣」性をどう評価するべきなのか。安倍氏は1954年9月21日生まれなので、2006年9月26日に小泉内閣の後を受けて内閣総理大臣に指名されたときは、まだ52歳になったばかりだった。これは日本の政界においては「若い」と言われる年代だけど、安倍氏は小泉後継に名を挙げた。父の安倍晋太郎は、首相を目前にして病気に倒れたので、待っていては自分も病気で総理を逃しかねないと思ったと言われている。

 そのため第一次安倍内閣は、準備不足、性急さ、仲間内で固めた偏りなどが指摘され、「お友達内閣」などと揶揄されたわけである。その後、2007年の参院選に敗北し、9月になって首相を辞任。続く福田康夫内閣も1年で辞任し、麻生太郎内閣となるも、2009年に民主党政権が誕生する。そして、2012年12月の総選挙で自民・公明の連立内閣が復活する。安倍氏は2012年9月の総裁選では、最初2位だった。そういう経過もあり、当初の第2次安倍内閣は、幹事長に石破茂を配するなど、それなりに党内融和を図っているように見えたわけである。

 ところが、次第に「本性を現す」というか、自分に近い人だけを重用するという態度が露骨になってきた。小池都知事に関して書いたときに触れたように、稲田、高市氏などは何度も重要ポストに使われるのに、小池氏はポストが回ってこない。そういう人事をどう理解するべきだろうか。菅官房長官などに言わせると、「閣僚人事は総理の専管事項」の一言で済まされてしまう。何か安倍首相に深い配慮があるかのようだけど、今になると誰もそう思う人はいないだろう。要するに「ひいき」なのである。

 最近稲田防衛相が、ちょっと信じられない「失言」をした。都議選で自民党候補の応援演説で、「防衛省、自衛隊、防衛大臣としてお願いしたい」と言ったというのである。いま「失言」にカッコを付けたけど、それはこれが多分「失言」(不都合なこと、まちがったことなどをうっかり言ってしまうこと)ではないからである。だから本人は「誤解を与える発言」と言い張っている。でも「誤解」のしようがない発言だろう。それなのに安倍首相はかばい続けて交代させない。

 ちょっと前に今村復興相という人が、これはホントの「失言」をしたときはすぐに交代させられた。今村氏の発言は論外だけど、法には触れない。稲田氏の発言は「違法性」がある。ちなみに、教育公務員は選挙前になると「政治的中立性を疑われないように注意せよ」というお達しを毎回厳しく言われる。職員室のどっかにも貼られているんじゃないか。自民党などの右派勢力がうるさいから、教育委員会もピリピリする。防衛省、自衛隊ではそういう通達は出ないのだろうか。今回の発言が論外で違法だということは、毎回選挙ごとに言われてきた身には自明というしかない。

 でも、多分総理は稲田防衛相を変えないだろうなと事前に思った。そういう人なのである。もうよく判っている。「泣いて馬謖を斬る」ができない。自分に近い人にこそ、厳しい接し方をすることがトップに立つ人には求められる。今回、間髪を入れずに稲田防衛相を更迭していたら、逆に支持が少し回復したのではないだろうか。でも、まあ予想通り稲田氏は内閣改造までは留まることになりそうだ。

 そういう「お友達内閣」性をどう考えればいいのか。僕にも最終的な結論はないんだけど、最近よく判ってきたのは「失意の時期の安倍氏を支えた人々への恩義意識」である。小池氏がポストを得られず、稲田、高市氏らが重用される。あるいは今回の加計問題で名があがる、下村博文、萩生田光一らも同様に考えれば判る。安倍氏の総裁選立候補に、率先して支持した麻生氏を副総理で処遇し続ける。総裁選の実務を仕切った菅官房長官も同様。これが案外大きいと思う。

 マスコミも同様である。先に読売新聞で改憲への意欲を表明し、国会でも「読売新聞を熟読せよ」と暴論を吐いた。いつも内閣を支持してくれる読売新聞への恩返しかと思うが、ではもう一つの新聞はどうするのかと思ったりもした。そうしたら、6月24日に神戸で「正論」の懇談会発足の会に出席して「怪気炎」を上げた。なんでも秋の臨時国会で自民党の改憲案を出すとか。それに獣医学科大学も全国に展開するんだとか。その内容の問題性は別に書くとして、「正論」というのは、産経新聞が出している右派論壇紙だから、これでちゃんと産経にも恩義を果たしたわけである。

 もう一つ、ある意味、「本気」なのかもしれないということである。どういう意味かというと、単なる「ひいき」ではなく、自分たちの思想に近い人々を優遇することは正しいと本気で信じ込んでいるのではないかということである。アメリカでは金持ちが自分たちの住む街にゲートを作って警備員を置き、外部から隔絶された環境で暮らすというようなことがあるそうだ。日本でも「自己責任」「規制緩和」がもう20年近く言われ続けている。本気で信じ込む人々が出てくる方が自然である。

 小さい時から恵まれた私立の一貫校でしか過ごしていない人々が安倍内閣のほとんどである。自分たちが「自己責任」によってではなく、恵まれた階層性によって現在の地位についているのに、そのことが理解できない。自分の周りの友人に配慮するのは「美徳」である。「教育勅語」にも「朋友相信じ」とあるではないか。どこかからお金をもらって政治を曲げたのではない。友人にちょっと配慮してあげただけである。そこらあたりが本音ではないのか。今僕が思うのはそういうことである。
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