都議選の話と直接は関係ないんだけど、その頃の報道で知ったことを書いておきたい。今回の都議選は「都民ファースト」が席巻したわけだが、唯一「都民ファースト」の公認候補が落選したのが「島部」だった。伊豆諸島と小笠原諸島で一人選出だけど、自民現職が8804票、「都民」新人が4100票、共産党候補が1225票と、現職都議がダブルスコアで圧勝した。
その最大の理由は、その後新聞に出ている「党派別・選挙区別得票数」を見れば一目瞭然である。現職は伊豆大島の出身であるのに対し、「都民」新人は八丈島出身だった。だから、八丈島では2127対1637と「都民」新人が勝っている。でも、大島では3458対605、新島では1126対316 と追いつけないほどの大差で現職が圧勝しているのだ。つまり、出身島による地縁意識が、有権者の投票先決定の一番の理由だったことが想像できる。
もちろん、それだけでない様々な理由もあるだろうが、とにかく「ただ一人の落選」ということで結構ニュースに取り上げられていた。それを見ていたら、最後に小池知事の直接応援を受けるはずが、なんと八丈島行きの飛行機が濃霧のためフライトが欠航になってしまったのだそうだ。そのため候補者本人が投票日に自分の地盤に帰れなくなったという。本人は知事の応援があったら、もっと八丈で差を付けられたと思いたいんだろう。都知事の応援があったら、確かにもう少し得票していたかもしれないが、まあ当選圏には届かないだろう。だが、この話に「離島の厳しさ」が示されてもいる。
朝日新聞都内版6月26日付の「2017 都議選 東京の足元」というシリーズ記事に「悩み多い島の声 あまり届かず」「五輪は蚊帳の外 物価高く進学も負担に」という記事があった。そこには交通不便、輸送コスト高の事情がくわしく出ている。野菜も肉も高いし、ガソリンも高い。通院も進学も大変だというのである。最後に資料として全部載せておくが、伊豆・小笠原諸島には、有人島は11あり、自治体は2町7村が置かれている。その中で、高校があるのは6つ(大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、小笠原父島)だから、他の5島の中学生は、高校進学段階で他へ出ないといけない。
ところで、離島は人口も少なく、さらに少子化で学校の生徒は少ない。先に見た自民の現職都議のホームページを見ると、出身校は九段高校とあるから高校段階で都心に出たのである。そして同志社大学卒とあるから、大学進学を考えるとそういう選択をする生徒も多いんだろう。ということで、都教委発表の各高校の入選倍率を見れば判るけど、島しょ部の各高校は倍率が1倍を大きく下回っている状態である。じゃあ、その余裕ある教室をどうすればいいのか。
そこで各地を見てみると、「離島留学」とか「山村留学」といった工夫をしているところもある。都会では不登校になったりする生徒もいる。競争も激しく、それが重荷になることもある。自然に恵まれた環境の中で、伸び伸びと高校生活を送りたいという希望者もいるだろう。そういう生徒を受け入れようというわけである。たまたま7月7日付東京新聞に、「離島の高校 進学は正解」という高校生の投書が載っていた。広島県の大崎上島というところだという。同じ日の佐藤優氏のコラムにも、沖縄にある久米島高校の留学案内が紹介されている。(この時期に毎年書いている。)
さて、実は東京の島の高校も、昨年から「島留学」を始めている。神津高校で1名と八丈高校で2名の受け入れである。島でホームステイ先を募って、そこから通う。昔は東京の普通科高校は、決められた学区内の高校以外を受験することはできなかった。ある時期から、「学区撤廃」と言って、どこの高校も受けられることになった。石原時代の「競争的教育政策」ということだろう。だけど、島の高校だけは別で、区部・多磨地区に住む高校生が島の高校を受けることだけはできなかったのである。(親と一緒に転居する予定がある場合は別。)
ところで、この「島留学」に高校のない島の中学生が応募できないというのである。先の朝日新聞記事によれば、「『高校を選べる都心の子にチャンスがあって、高校がない島の子はだめなんて』と青ヶ島村の片岡俊彦教育長らは都教委に見直しを求めている。」と出ている。これは全くその通りだろう。高校のない島の中学生こそ、定員を割っている近くの島の高校で優先的に受け入れるべきもんなのではないだろうか。それは「島留学」という趣旨とは違うのかもしれないけど。
僕は東京都の中学、高校で何十年も働いてきたけど、正直言ってこういう問題は全く知らなかった。教員採用に際して、あるいは折々の異動の時期に、「島への異動」を促される。(あるいは高校の場合、定時制高校への。)そういう時も、大島や八丈島などは行ったこともあってイメージできるんだけど、それ以外の島はよく知らないというのが実際のところである。「青ヶ島の子どもたち」は東京の教員が必ず意識していないといけないことなんじゃないだろうかと、辞めてから書くのもなんだけど、改めて思った次第。多分知らない人が多いと思うから、書き残しておきたい。
東京都の「島嶼部」(とうしょぶ)は、伊豆諸島と小笠原諸島がある。伊豆諸島というぐらいだから、元は伊豆の国で、明治以後は一時静岡県だったときもあるが、1878年に東京府に移管された。小笠原諸島は1880年に東京府の所属となったが、戦争でアメリカ領とされ、1868年の返還後に東京都の所属になった。
自治体と有人島、及び学校の事情は以下のとおり。
【大島支庁】
・大島町 伊豆大島 小学校3、中学校3、高校2
・利島村 利島(としま) 小学校、中学校
・新島村 新島 小学校、中学校、高校
式根島 小学校、中学校
・神津島村 神津島(こうづしま) 小学校、中学校、高校
【三宅支庁】
・三宅村 三宅島 小学校、中学校、高校
・御蔵島村 御蔵島(みくらじま) 小学校、中学校
【八丈支庁】
・八丈町 八丈島 小学校3、中学校3、高校
・青ヶ島村 青ヶ島 小学校、中学校
【小笠原支庁】
・小笠原村 父島 小学校、中学校、高校
母島 小学校、中学校
他にも硫黄島、南鳥島などには自衛隊や気象庁なんかの人はいるけど、民間人は住んでないから学校はない。住民が住んでいる島では、義務教育である小学校、中学校は置かれている。東京都の学校調査を見ると、2018年5月1日時点で、青ヶ島小学校は全校5人、中学では利島、御蔵島、青ヶ島、母島では全校で一けたの数字の生徒数である。
その最大の理由は、その後新聞に出ている「党派別・選挙区別得票数」を見れば一目瞭然である。現職は伊豆大島の出身であるのに対し、「都民」新人は八丈島出身だった。だから、八丈島では2127対1637と「都民」新人が勝っている。でも、大島では3458対605、新島では1126対316 と追いつけないほどの大差で現職が圧勝しているのだ。つまり、出身島による地縁意識が、有権者の投票先決定の一番の理由だったことが想像できる。
もちろん、それだけでない様々な理由もあるだろうが、とにかく「ただ一人の落選」ということで結構ニュースに取り上げられていた。それを見ていたら、最後に小池知事の直接応援を受けるはずが、なんと八丈島行きの飛行機が濃霧のためフライトが欠航になってしまったのだそうだ。そのため候補者本人が投票日に自分の地盤に帰れなくなったという。本人は知事の応援があったら、もっと八丈で差を付けられたと思いたいんだろう。都知事の応援があったら、確かにもう少し得票していたかもしれないが、まあ当選圏には届かないだろう。だが、この話に「離島の厳しさ」が示されてもいる。
朝日新聞都内版6月26日付の「2017 都議選 東京の足元」というシリーズ記事に「悩み多い島の声 あまり届かず」「五輪は蚊帳の外 物価高く進学も負担に」という記事があった。そこには交通不便、輸送コスト高の事情がくわしく出ている。野菜も肉も高いし、ガソリンも高い。通院も進学も大変だというのである。最後に資料として全部載せておくが、伊豆・小笠原諸島には、有人島は11あり、自治体は2町7村が置かれている。その中で、高校があるのは6つ(大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、小笠原父島)だから、他の5島の中学生は、高校進学段階で他へ出ないといけない。
ところで、離島は人口も少なく、さらに少子化で学校の生徒は少ない。先に見た自民の現職都議のホームページを見ると、出身校は九段高校とあるから高校段階で都心に出たのである。そして同志社大学卒とあるから、大学進学を考えるとそういう選択をする生徒も多いんだろう。ということで、都教委発表の各高校の入選倍率を見れば判るけど、島しょ部の各高校は倍率が1倍を大きく下回っている状態である。じゃあ、その余裕ある教室をどうすればいいのか。
そこで各地を見てみると、「離島留学」とか「山村留学」といった工夫をしているところもある。都会では不登校になったりする生徒もいる。競争も激しく、それが重荷になることもある。自然に恵まれた環境の中で、伸び伸びと高校生活を送りたいという希望者もいるだろう。そういう生徒を受け入れようというわけである。たまたま7月7日付東京新聞に、「離島の高校 進学は正解」という高校生の投書が載っていた。広島県の大崎上島というところだという。同じ日の佐藤優氏のコラムにも、沖縄にある久米島高校の留学案内が紹介されている。(この時期に毎年書いている。)
さて、実は東京の島の高校も、昨年から「島留学」を始めている。神津高校で1名と八丈高校で2名の受け入れである。島でホームステイ先を募って、そこから通う。昔は東京の普通科高校は、決められた学区内の高校以外を受験することはできなかった。ある時期から、「学区撤廃」と言って、どこの高校も受けられることになった。石原時代の「競争的教育政策」ということだろう。だけど、島の高校だけは別で、区部・多磨地区に住む高校生が島の高校を受けることだけはできなかったのである。(親と一緒に転居する予定がある場合は別。)
ところで、この「島留学」に高校のない島の中学生が応募できないというのである。先の朝日新聞記事によれば、「『高校を選べる都心の子にチャンスがあって、高校がない島の子はだめなんて』と青ヶ島村の片岡俊彦教育長らは都教委に見直しを求めている。」と出ている。これは全くその通りだろう。高校のない島の中学生こそ、定員を割っている近くの島の高校で優先的に受け入れるべきもんなのではないだろうか。それは「島留学」という趣旨とは違うのかもしれないけど。
僕は東京都の中学、高校で何十年も働いてきたけど、正直言ってこういう問題は全く知らなかった。教員採用に際して、あるいは折々の異動の時期に、「島への異動」を促される。(あるいは高校の場合、定時制高校への。)そういう時も、大島や八丈島などは行ったこともあってイメージできるんだけど、それ以外の島はよく知らないというのが実際のところである。「青ヶ島の子どもたち」は東京の教員が必ず意識していないといけないことなんじゃないだろうかと、辞めてから書くのもなんだけど、改めて思った次第。多分知らない人が多いと思うから、書き残しておきたい。
東京都の「島嶼部」(とうしょぶ)は、伊豆諸島と小笠原諸島がある。伊豆諸島というぐらいだから、元は伊豆の国で、明治以後は一時静岡県だったときもあるが、1878年に東京府に移管された。小笠原諸島は1880年に東京府の所属となったが、戦争でアメリカ領とされ、1868年の返還後に東京都の所属になった。
自治体と有人島、及び学校の事情は以下のとおり。
【大島支庁】
・大島町 伊豆大島 小学校3、中学校3、高校2
・利島村 利島(としま) 小学校、中学校
・新島村 新島 小学校、中学校、高校
式根島 小学校、中学校
・神津島村 神津島(こうづしま) 小学校、中学校、高校
【三宅支庁】
・三宅村 三宅島 小学校、中学校、高校
・御蔵島村 御蔵島(みくらじま) 小学校、中学校
【八丈支庁】
・八丈町 八丈島 小学校3、中学校3、高校
・青ヶ島村 青ヶ島 小学校、中学校
【小笠原支庁】
・小笠原村 父島 小学校、中学校、高校
母島 小学校、中学校
他にも硫黄島、南鳥島などには自衛隊や気象庁なんかの人はいるけど、民間人は住んでないから学校はない。住民が住んでいる島では、義務教育である小学校、中学校は置かれている。東京都の学校調査を見ると、2018年5月1日時点で、青ヶ島小学校は全校5人、中学では利島、御蔵島、青ヶ島、母島では全校で一けたの数字の生徒数である。