ケニアに「二頭のゾウが争うとき、傷つくのは草」ということわざがあるという。(東京新聞5月22日こちら特報部「八方ふさがり安倍外交」より。)これはまさに米中の経済摩擦を考えるときにふさわしい言葉だろう。ちょっと調べてみると、「トランプ政権は5月10日に、中国からの輸入品2000億ドル相当分に対する追加関税率を、10%から25%に引き上げる制裁措置を発動した。これを受けて、中国政府は13日に、600億ドル相当の米国製品への関税率を、5~10%から最大25%へと引き上げる報復措置を発表した。さらに同日に米国政府も、約3000億ドル相当の中国からの輸入品に最大で25%の関税を上乗せする案を発表した。米中は再び報復関税の応酬の様相となってしまった。」(ダイアモンド・オンライン、木内登英「米中貿易戦争で世界は分裂、日本はどう対処すべきか」太字引用者。)
(象の喧嘩)
さらに通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies、華為技術)をめぐって、トランプ大統領が排除の動きを見せた。「アメリカ企業が安全保障上の脅威がある外国企業から通信機器を調達することを禁止」という大統領令に署名したのである。そして、アメリカ合衆国商務省産業安全保障局は、ファーウェイを同局が作成するエンティティ・リスト(禁輸措置対象リスト)に掲載し、アメリカ製ハイテク部品やソフトウェアの供給を事実上禁止する措置を発表した。(ウィキペディアによる。)さらにグーグルはファーウェイにAndroidの提供を一時停止するとし、日本でもファーウェイ社製のスマホが発売延期になるなど影響が広がっている。
いや困ったことだなあ。日本のGDPにも大分影響がありそうだし、株価も下がっている。もともと米中の首脳間にある程度の妥協が成立すると思われていた。トランプ大統領は「ディール」(取引)という発想が大好きで、強烈な政策を打ち出せば相手も折れてくると思っているのかもしれない。経済問題だけだったらそれもあるかもしれないが、国家間の争いになればメンツをかけたナショナリズムの争いになりやすい。中国は米国債を世界で一番保有しているから、国内には「投げ売りしちゃえ」という意見も出ているという。投げ売りは世界経済の破滅につながるから、どこかで妥協すると通常は思うわけだが、通常の経験則が通用するかは判らない。(なお、日本も世界2位の巨額の米国債を持っている。)
(トランプ大統領と習近平国家主席)
尖閣問題で日中関係が悪化したとき、日本人が拘束されたといったニュースが流れた。ファーウェイ問題でも副会長がカナダで逮捕されたときにカナダ人の拘束というニュースがあった。今のところ、中国国内でアメリカ人が拘束されたとか、マクドナルドにデモ隊が押しかけたといったニュースは流れていない。中国当局も事態が悪化しないようにしているんだなと思う。実際そんなことが起きたら、アメリカの反発の強さは予想できない。だが長期的に見て、アメリカ企業は中国市場で大きなマイナスを背負ったのではないか。こんなことがあったら、危なくて中国と付き合うのも大変だけど、同じことがアメリカにも言える。中国もやがて人口減になるが、それでも世界最大の消費市場がまだしばらくは成長し続けると思われるから、中国に背を向けることもできない。
「脅し」で物事を解決しようとするトランプ流が世界ではびこるとしたら困ったことだ。関税をアップするというのも、つまりはアメリカの消費者の負担が増えることだし、アメリカの輸入業者にも大きな負担となる。こういうやり方は今は否定されているだろう。一方、中国が「知的財産権」の侵害をしている事例が多いことも間違いない。ファーウェイ製のスマホが「スパイ」をしているかどうかは僕は判らないけれど、ファーウェイが次世代の5Gと呼ばれる通信技術開発で独占的地位を築くとしたら、やはり問題も起きるんだろうと思う。しかし、どうもそれが避けがたいのかもしれない。そうなると米中それぞれが別個の技術を発展させて、世界がアメリカ陣営と中国陣営に二分されかねない。
その時に世界の国はどういう行動を取るんだろうか。日本はどうすればいいのか。はっきりしているのは、米中双方ともに日本は手を切れないという厳然たる事実だ。アメリカが自国中心主義を強める中、アメリカにのみ依存することはアジアの国々には難しい。当面中国の「一帯一路」に、問題はあると思いつつも付き合うしかないという選択をする国がかなり多くなると思う。それはアメリカの長期的衰退につながる。トランプ政権が続投するかどうか判らないが、そういう問題とは別に、何十年というスパンで考えたときに、一体中国はどうなるのか。
経済的に中国が成長を続けても、他国と同じような「中間層の成長による社会の民主化」が進展しない。「中国の独自性」への疲れも諸外国にはあるだろう。「アメリカの独自性」もあるし、そう考えると「世界は付き合いづらい」とも思うが、じゃあ判りきった中で暮らしていては日本も衰退する。いや、もう衰退しつつあるというのが事実だろう。とにかく世界がこれからどうなるかの大問題を「考えるヒント」が、米中摩擦にはたくさんある。じっくり見て、じっくり考えていかないといけないだろう。
(象の喧嘩)
さらに通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies、華為技術)をめぐって、トランプ大統領が排除の動きを見せた。「アメリカ企業が安全保障上の脅威がある外国企業から通信機器を調達することを禁止」という大統領令に署名したのである。そして、アメリカ合衆国商務省産業安全保障局は、ファーウェイを同局が作成するエンティティ・リスト(禁輸措置対象リスト)に掲載し、アメリカ製ハイテク部品やソフトウェアの供給を事実上禁止する措置を発表した。(ウィキペディアによる。)さらにグーグルはファーウェイにAndroidの提供を一時停止するとし、日本でもファーウェイ社製のスマホが発売延期になるなど影響が広がっている。
いや困ったことだなあ。日本のGDPにも大分影響がありそうだし、株価も下がっている。もともと米中の首脳間にある程度の妥協が成立すると思われていた。トランプ大統領は「ディール」(取引)という発想が大好きで、強烈な政策を打ち出せば相手も折れてくると思っているのかもしれない。経済問題だけだったらそれもあるかもしれないが、国家間の争いになればメンツをかけたナショナリズムの争いになりやすい。中国は米国債を世界で一番保有しているから、国内には「投げ売りしちゃえ」という意見も出ているという。投げ売りは世界経済の破滅につながるから、どこかで妥協すると通常は思うわけだが、通常の経験則が通用するかは判らない。(なお、日本も世界2位の巨額の米国債を持っている。)
(トランプ大統領と習近平国家主席)
尖閣問題で日中関係が悪化したとき、日本人が拘束されたといったニュースが流れた。ファーウェイ問題でも副会長がカナダで逮捕されたときにカナダ人の拘束というニュースがあった。今のところ、中国国内でアメリカ人が拘束されたとか、マクドナルドにデモ隊が押しかけたといったニュースは流れていない。中国当局も事態が悪化しないようにしているんだなと思う。実際そんなことが起きたら、アメリカの反発の強さは予想できない。だが長期的に見て、アメリカ企業は中国市場で大きなマイナスを背負ったのではないか。こんなことがあったら、危なくて中国と付き合うのも大変だけど、同じことがアメリカにも言える。中国もやがて人口減になるが、それでも世界最大の消費市場がまだしばらくは成長し続けると思われるから、中国に背を向けることもできない。
「脅し」で物事を解決しようとするトランプ流が世界ではびこるとしたら困ったことだ。関税をアップするというのも、つまりはアメリカの消費者の負担が増えることだし、アメリカの輸入業者にも大きな負担となる。こういうやり方は今は否定されているだろう。一方、中国が「知的財産権」の侵害をしている事例が多いことも間違いない。ファーウェイ製のスマホが「スパイ」をしているかどうかは僕は判らないけれど、ファーウェイが次世代の5Gと呼ばれる通信技術開発で独占的地位を築くとしたら、やはり問題も起きるんだろうと思う。しかし、どうもそれが避けがたいのかもしれない。そうなると米中それぞれが別個の技術を発展させて、世界がアメリカ陣営と中国陣営に二分されかねない。
その時に世界の国はどういう行動を取るんだろうか。日本はどうすればいいのか。はっきりしているのは、米中双方ともに日本は手を切れないという厳然たる事実だ。アメリカが自国中心主義を強める中、アメリカにのみ依存することはアジアの国々には難しい。当面中国の「一帯一路」に、問題はあると思いつつも付き合うしかないという選択をする国がかなり多くなると思う。それはアメリカの長期的衰退につながる。トランプ政権が続投するかどうか判らないが、そういう問題とは別に、何十年というスパンで考えたときに、一体中国はどうなるのか。
経済的に中国が成長を続けても、他国と同じような「中間層の成長による社会の民主化」が進展しない。「中国の独自性」への疲れも諸外国にはあるだろう。「アメリカの独自性」もあるし、そう考えると「世界は付き合いづらい」とも思うが、じゃあ判りきった中で暮らしていては日本も衰退する。いや、もう衰退しつつあるというのが事実だろう。とにかく世界がこれからどうなるかの大問題を「考えるヒント」が、米中摩擦にはたくさんある。じっくり見て、じっくり考えていかないといけないだろう。