尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「ミサイル防衛」と「分散システム化」ーミサイル攻撃をどう考えるか②

2022年11月19日 22時55分13秒 |  〃  (国際問題)
 ロシアは何故執拗にウクライナにミサイルを撃ちこむのだろうか。季節的に平原が湿地化するので軍の展開が難しく、完全に冬になって凍結するまで戦車などを動かせないとも聞く。その間も発電所などを狙って、ウクライナの抵抗意識をくじこうとするのだろう。ロシアのミサイル保有量が尽きたという説もあったが、どうなっているのかは判らない。ロシアは経済大国だから、経済制裁があっても数年間は戦争継続が可能だろう。だがいくらミサイル攻撃を受けても、ウクライナの抵抗意思はくじけない

 これは当然と言えば当然で、ミサイルはピンポイントで何かの施設を破壊出来るが、社会そのもの、国家組織そのものは破壊出来ないのである。イスラエルはかつて湾岸戦争時にイラクのミサイル攻撃を受けたが、アメリカの要請に応じてあえて反撃しなかった。そこでイスラエルが出て来ると、イスラエル対アラブ諸国という構図になってしまうからである。イスラエルは今もガザ地区からミサイル攻撃を受けることがあるが、ほとんどが迎撃されている。小さくて持ち運べるミサイルもあって、ミサイルは今では小国、あるいは国家ではない武装組織の武器となっている。

 日本付近では最近「北朝鮮」によるミサイル発射実験が相次いでいる。日本上空に掛かりそうなときは「Jアラート」なる警報が鳴り渡るらしい。最近では日本を通過した後に警報が出たと問題化したケースがある。また「排他的経済水域」に着弾した場合は、特に大きく報道されている。この問題はちょっと冷静に考えてみる方が良い。長距離弾道ミサイルの開発は国連安保理決議違反で、非難されるべきである。だけど、ミサイルが頭上に落ちてくるかのような恐怖は意識過剰だろう。
 
 1998年に日本上空を初めて通過したとき以来、今にもミサイルが落ちてくるかのように恐怖心をあおる人が出てきた。もちろん、そんなことは起こらない。100%ないと言えないけれど、それを言えば頭上に隕石が落ちてくる確率と同じレベルだろう。そもそも「領空」のはるか上を通る「ロフテッド軌道」を通るミサイルや、領海ではない「排他的経済水域」に落ちるミサイルを、そのことを理由に非難できるのかは疑問だ。(もちろん「領海」や「領空」に掛かれば主権侵害である。なお「国際海峡」を外国艦船が通過するのは問題ない。)
(ロフテッド軌道)
 僕が言いたいのは「北朝鮮」は独自の思惑でミサイル発射を続けていて、その行為は問題だとしても、今にも日本(あるいは日本国内の米軍基地)を攻撃する意図があるわけではないということだ。「北朝鮮」のミサイルがもし日本に落ちたら、政権が崩壊の危機に陥るだろう。意図せぬ故障で被害が出ても、そんなミサイルはどこにも評価されない。もしどこかの国のミサイルが日本国内に着弾すれば、それは被害を出して大問題だけど、すぐ日本社会が破滅するわけではない。今回は「北朝鮮」の目的をどう考えるか、国内の人権問題をいかに考えるかはテーマじゃないので省略する。

 僕が今回考えたいのは、「北朝鮮のミサイルが心配」だから、アメリカの「ミサイル防衛システム」を整備しなくてはならないという主張である。それが実際に意味があるのかをウクライナの現実で考えるべきだろう。ウクライナはロシアのミサイルをどの程度防げているのだろうか。それは5割から7割程度だという。ないよりはずっと良いが、100%には遠い数字である。なぜ100%にならないかは、迎撃ミサイルの量的な問題と同時に、いつどこに撃つかの情報の問題、さらに迎撃するウクライナ軍の成熟度など様々な要因が絡んでいる。南北も東西も広い日本で、100%近い迎撃を求めるなら膨大な負担が生じるのは間違いない。
(日本のミサイル防衛体制)
 ミサイルが落ちてくる確率に比べれば、大地震が襲う可能性は100%なんだから、そちらの方が優先だろう。それに「大地震」と「ミサイル着弾」には同じ問題がある。社会生活を維持するためのインフラ設備が破壊されたら大変だという点である。ロシアもそこを狙って攻撃し、ウクライナの発電所が大被害を受けているという。原発や火力発電所が被害を受けて、節電を強いられたのは記憶に新しい。一点集中型の大施設は効率上は良い点があるが、災害大国である日本では危険性も大きいのである。

 日本の安全保障面の危険は、対外的な戦争以上に、地震、津波、水害、土砂崩れなどの大災害である。災害をゼロにすることは出来ない。だが「社会システムを分散化させる」ことで影響を少なく出来る。エネルギーの「地産地消」を進めると言っても良い。日本においては「ミサイル防衛」より優先度が高いはずだ。(なお、「マイナンバーカード」はパソコンやスマホが使えること=電気が通じることを前提に成り立っている。もし大地震で一週間電気が停まってしまえば、スマホは切れてしまって自己証明も不可能になる。その意味でも保険証や運転免許証は一体化しない方が良い。逆に紙ベースの保険証や預金通帳が流されたり焼けることもありうるから、デジタル化を進めておくのも意味がある。)
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