都知事選について、改めてデータに基づき考えたい。当選した小池百合子の得票率は42.77%だった。従って過半数は得ていない。(前回2020年はほぼ6割の得票で、過半数を大きく超えていた。なお、21世紀の都知事選では、2003、2007年の石原慎太郎、2012年の猪瀬直樹が過半数を獲得している。)日本の選挙には「決選投票制度」がないので、これで当選である。
それはいいんだけど、法定得票(有効投票数の1割)を越えたのは(言うまでもなく)3人だけだった。多数が出ていても、4位の田母神俊雄は27万票弱、全体の4%である。以下、10万票を超えた人が3人いる。それはそれなりに重いんだろうが、選挙情勢的には無視して良い。そこで上位3人を見ると、2位石丸伸二が得票率24.3%、3位蓮舫が得票率18.81%だった。合計すると43.11%になり、若干小池票を上回る。具体的に票数を見ると、小池(2,918,015)、石丸(1,658,363.406)、蓮舫(1,283,262)となる。石丸+蓮舫=2,941,625.406票となる。
まあ、二人合わせれば2万票ちょっと上回るわけだけど、これはまあ誤差の範囲である。有力二人合わせて、やっと現職とほぼ同じなのである。知事選後、「石丸候補は何故躍進したのか」「蓮舫候補は何故3位に終わったのか」はいろんな人がいろいろ語っているけれど、本当に検証するべきなのは「前回より減ったものの、小池知事は何故圧勝出来たのか」の方だろう。それを解明せずにあれこれ語っても、2位にはなれても東京で当選出来ない。
(東京各地)
東京と言っても広い。各地域には大きな違いがある。それを考えるために、何かいい地図がないかなと検索したところ、東京都企業立地相談センターという部署の地図が見つかった。そこでは各地域が色分けされている。23区部は「都心・副都心」「城東」「城南」「城西」「城北」の5つのエリアに分かれている。多摩地区は「北多摩」「南多摩」「西多摩」の3エリア。それに加えて「島しょ」エリアがあり、全部で9つになる。ここで考えたいのは、各エリアで各候補の得票がどう違うのかである。
とは言うものの、全部見るのは大変だ。幾つかを抽出して、「小池票」と「石丸+蓮舫票」を比べてみる。どういう意味があるのかというと、小池知事の支持傾向に地域差があるのかがそれでつかめると思うのである。一票単位で比べるのは面倒なので、千票単位で四捨五入する。先に見たように、全都的には「小池票」=「石丸+蓮舫票」になっている。では、まず国会議事堂、首相官邸がある千代田区を見てみる。小池(1万3千)、石丸(9千)、蓮舫(5千)で、ほぼ全都の傾向と同じである。
人口が最大の世田谷区(城西地区)を見ると、小池(18万7百)、石丸(13万4千6百)、蓮舫(9万8千7百)なので、小池票は一番なんだけど2位、3位を足すと5万票近く離されている。同じ城西地区の杉並区(小池=11万3千、石丸=7万7千、蓮舫=6万6千)や中野区(小池=6万4千、石丸=3万9千、蓮舫=3万4千)も似たような傾向にある。これは多摩地区の隣接市も同じで、武蔵野市(小池=3万、石丸=2万、蓮舫=1万8千)、三鷹市(小池=3万9千、石丸=2万6千、蓮舫=2万2千)なども同傾向である。
この城西、北多摩地区には「野党系首長」が多い。選挙前に都内52の区市町村長が小池氏に知事選出馬要請を行った。それに加わらなかった首長も10人いるが、世田谷、中野、杉並、立川、小金井などほぼ城西、北多摩地区の区長、市長である。2021年衆院選で、立憲民主党候補が小選挙区で当選したり、あるいは比例区で復活当選したのも同じ地域が多い。つまり、もともとこの地区では非自民系の有権者が多いのである。
では先の地域分けの「城東地区」を見てみる。僕が住んでる足立区は小池(14万8千)、石丸(7万)、蓮舫(5万2千)で、2位、3位を足しても現職に2万6千票も及ばない。ここでは都議補選も行われ、千票も差が付かなかったが14万票で立憲民主党候補が当選した。つまり小池支持者でも、都議補選では自民党に入れなかった人が相当いた。だけど、知事選では小池と書くのである。
続いて足立の隣の葛飾区を見ると、小池=9万8千、石丸=5万3千、蓮舫=3万7千。その南の江戸川区では、小池=14万4千、石丸=7万4千、蓮舫=4万8千。城東地区でも、江東区や台東区では少し両者の票が上回る。しかし、それは「二人合わせれば」ということで、小池を抜いてトップになれるということではない。それにしても、ここで判るのは東京の一番東にあたる城東地区では、石丸票と蓮舫票の差が非常に大きい。先の中野区や三鷹市などを見れば歴然としている。
面倒なので他の地区は検討しない。僕がここで書きたかったのは、城西、北多摩地区などに住んでいる非自民系の人は、小池知事が盤石ではないという肌感覚を持っていたのではないかということだ。当初石丸候補がこれほど取るとは予想されてなく、もし無党派票が蓮舫候補に集中すれば「勝機あり」と見えていたのではないか。しかし、城東地区に住んでいる自分から見れば、「小池に勝つのは難しいだろう」という肌感覚になる。そして蓮舫陣営の運動は城東地区であまり展開されなかった(と思う)。
そして、野党系リーダーばかりでなく、野党系「文化人」や「市民運動家」、マスコミ関係者などもおおよそ「城西地区」に住んでいる。そこの感覚で発信するから、城東地区には浸透しないのではないか。非自民系の弱い地域で、地道な運動を行う以外に勝機はない。そして、実はこの選挙データは経済的、文化的な「都内格差」に基づいていると僕は考えている。そこを検証しない限り、東京は変わらないままだろう。(なお選挙のデータは各市区の選挙管理委員会のホームページに出ている。また新聞では、選挙直後の火曜日朝刊の地方版に掲載されている。)
それはいいんだけど、法定得票(有効投票数の1割)を越えたのは(言うまでもなく)3人だけだった。多数が出ていても、4位の田母神俊雄は27万票弱、全体の4%である。以下、10万票を超えた人が3人いる。それはそれなりに重いんだろうが、選挙情勢的には無視して良い。そこで上位3人を見ると、2位石丸伸二が得票率24.3%、3位蓮舫が得票率18.81%だった。合計すると43.11%になり、若干小池票を上回る。具体的に票数を見ると、小池(2,918,015)、石丸(1,658,363.406)、蓮舫(1,283,262)となる。石丸+蓮舫=2,941,625.406票となる。
まあ、二人合わせれば2万票ちょっと上回るわけだけど、これはまあ誤差の範囲である。有力二人合わせて、やっと現職とほぼ同じなのである。知事選後、「石丸候補は何故躍進したのか」「蓮舫候補は何故3位に終わったのか」はいろんな人がいろいろ語っているけれど、本当に検証するべきなのは「前回より減ったものの、小池知事は何故圧勝出来たのか」の方だろう。それを解明せずにあれこれ語っても、2位にはなれても東京で当選出来ない。
(東京各地)
東京と言っても広い。各地域には大きな違いがある。それを考えるために、何かいい地図がないかなと検索したところ、東京都企業立地相談センターという部署の地図が見つかった。そこでは各地域が色分けされている。23区部は「都心・副都心」「城東」「城南」「城西」「城北」の5つのエリアに分かれている。多摩地区は「北多摩」「南多摩」「西多摩」の3エリア。それに加えて「島しょ」エリアがあり、全部で9つになる。ここで考えたいのは、各エリアで各候補の得票がどう違うのかである。
とは言うものの、全部見るのは大変だ。幾つかを抽出して、「小池票」と「石丸+蓮舫票」を比べてみる。どういう意味があるのかというと、小池知事の支持傾向に地域差があるのかがそれでつかめると思うのである。一票単位で比べるのは面倒なので、千票単位で四捨五入する。先に見たように、全都的には「小池票」=「石丸+蓮舫票」になっている。では、まず国会議事堂、首相官邸がある千代田区を見てみる。小池(1万3千)、石丸(9千)、蓮舫(5千)で、ほぼ全都の傾向と同じである。
人口が最大の世田谷区(城西地区)を見ると、小池(18万7百)、石丸(13万4千6百)、蓮舫(9万8千7百)なので、小池票は一番なんだけど2位、3位を足すと5万票近く離されている。同じ城西地区の杉並区(小池=11万3千、石丸=7万7千、蓮舫=6万6千)や中野区(小池=6万4千、石丸=3万9千、蓮舫=3万4千)も似たような傾向にある。これは多摩地区の隣接市も同じで、武蔵野市(小池=3万、石丸=2万、蓮舫=1万8千)、三鷹市(小池=3万9千、石丸=2万6千、蓮舫=2万2千)なども同傾向である。
この城西、北多摩地区には「野党系首長」が多い。選挙前に都内52の区市町村長が小池氏に知事選出馬要請を行った。それに加わらなかった首長も10人いるが、世田谷、中野、杉並、立川、小金井などほぼ城西、北多摩地区の区長、市長である。2021年衆院選で、立憲民主党候補が小選挙区で当選したり、あるいは比例区で復活当選したのも同じ地域が多い。つまり、もともとこの地区では非自民系の有権者が多いのである。
では先の地域分けの「城東地区」を見てみる。僕が住んでる足立区は小池(14万8千)、石丸(7万)、蓮舫(5万2千)で、2位、3位を足しても現職に2万6千票も及ばない。ここでは都議補選も行われ、千票も差が付かなかったが14万票で立憲民主党候補が当選した。つまり小池支持者でも、都議補選では自民党に入れなかった人が相当いた。だけど、知事選では小池と書くのである。
続いて足立の隣の葛飾区を見ると、小池=9万8千、石丸=5万3千、蓮舫=3万7千。その南の江戸川区では、小池=14万4千、石丸=7万4千、蓮舫=4万8千。城東地区でも、江東区や台東区では少し両者の票が上回る。しかし、それは「二人合わせれば」ということで、小池を抜いてトップになれるということではない。それにしても、ここで判るのは東京の一番東にあたる城東地区では、石丸票と蓮舫票の差が非常に大きい。先の中野区や三鷹市などを見れば歴然としている。
面倒なので他の地区は検討しない。僕がここで書きたかったのは、城西、北多摩地区などに住んでいる非自民系の人は、小池知事が盤石ではないという肌感覚を持っていたのではないかということだ。当初石丸候補がこれほど取るとは予想されてなく、もし無党派票が蓮舫候補に集中すれば「勝機あり」と見えていたのではないか。しかし、城東地区に住んでいる自分から見れば、「小池に勝つのは難しいだろう」という肌感覚になる。そして蓮舫陣営の運動は城東地区であまり展開されなかった(と思う)。
そして、野党系リーダーばかりでなく、野党系「文化人」や「市民運動家」、マスコミ関係者などもおおよそ「城西地区」に住んでいる。そこの感覚で発信するから、城東地区には浸透しないのではないか。非自民系の弱い地域で、地道な運動を行う以外に勝機はない。そして、実はこの選挙データは経済的、文化的な「都内格差」に基づいていると僕は考えている。そこを検証しない限り、東京は変わらないままだろう。(なお選挙のデータは各市区の選挙管理委員会のホームページに出ている。また新聞では、選挙直後の火曜日朝刊の地方版に掲載されている。)