尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

他の知事・市長経験者は当選しないー過去の都知事選で判ること

2024年07月26日 22時17分46秒 |  〃  (選挙)
 都知事選のデータを見ていて気付いたこと。今さら都知事選について何を書くのかと思うだろうが、今年の都知事選ではなく過去から見えてくるデータに関心がある。「東京」を繁栄した首都のように思っている人が多いかもしれないが、この町は決して住みやすい町ではない。そのことは今は書かないけど、「東京都制」を何とかして欲しいと思う。「東京都解体」「東京市復活」を掲げて知事選に立候補する人はいないだろうか。暑すぎて映画館に行く気も起こらないので、少し過去の話を。

 今まで都知事選で現職が落選したことがない。これは今回の選挙中も指摘されたことだが、では過去最高得票の落選者は誰か。それは1975年の石原慎太郎候補の2,336,359票である。この時の当選者は3選を決めた美濃部亮吉知事で、2,688,566票だった。かなり迫っていたのである。この時の記憶が高齢の保守系有権者に残っていて、それが1999年の当選につながったのではないか。

 次が1967年の松下正寿候補の2,063,752票。自民、民社が推薦したが、社会、共産推薦の美濃部亮吉候補に競り負けた。美濃部氏は2,200,389票だったから、わずか14万票程度の差だった。落選候補が200万票を越えたのは、この2回だけである。この時は公明党が独自候補を立て、60万票ほどを獲得した。つまり1967年に「革新都政」が成立した最大の原因は、公明党が自民党に付かなかったことである。ちなみに1975年には公明党は美濃部3選を支持したが、79年からは基本的に自民党に同調している。
(過去の主な都知事)
 半世紀前の過去はともかくとして、その後美濃部知事(3期)、鈴木俊一知事(4期)を経て、1995年には青島幸男知事が当選した。当時は「自民、社会、さきがけ」の村山富市内閣だったこともあり、自民、社会などの主要政党がこぞって石原信雄氏(元内閣官房副長官)を推したことに、青島氏が反発して立候補したのである。結局都政に足場がない青島知事は大した業績も残せないまま1期で去った。この経験から、石丸伸二氏には「都議会にはどう対応するのか」を問う必要があった。

 今回の石丸伸二氏のように、他の場所で知事や市長を務めた人が立候補したことはかなり多い。例えば2011年知事選に出た東国原英夫候補である。石原慎太郎知事が4選を決めたが、東国原氏も1,690,669票を獲得し次点だった。(全体の28%。)この時は東日本大震災直後で、選挙運動も盛り上がらないまま現職が当選した。東国原氏は直前まで宮崎県知事を務めていた。しかし、1月にあった知事選に出馬せず、都知事選に立候補したのである。
(2011年都知事選)
 その前に、2007年には石原知事の対抗馬として、前宮城県知事の浅野史郞氏が民主党など野党に支援されて立候補したことがある。後の東国原氏とほぼ同数の1,693,323票を獲得している。2012年には前神奈川県知事の松沢成文氏(現参議院議員)が出馬したが、3位で敗れている。2016年に小池百合子氏が当選したとき、自民党は小池氏ではなく元岩手県知事の増田寛也氏(現日本郵政社長)を推したが、1,793,453票で敗れた。(小池氏は290万票ほど。)古くは1963年に東知事の対抗馬として前兵庫県知事の阪本勝氏が出ているが、こうしてみると当選した人は誰もいない。

 市長経験者としては、1995年に前出雲市長の岩國哲人氏が立候補したが、3位で敗れた。ついでに書くと、2007年には元足立区長の吉田万三氏が出たこともある。保守分裂のため当選した共産党系区長である。この時も共産党推薦で立候補して、63万票近くを獲得している。そして、2024年の石丸伸二氏ということになる。こうしてみると、与党系で出ても、野党系で出ても、完全無党派で出ても、他の自治体トップの経験者は当選出来ないという「法則」があるということか。

 都知事選では200万票を越える得票がないと当選出来ない。今まで他の自治体トップ経験者は160、170万票程度しか取れていない。2016年の増田氏のケースで判るように、何で東京の国会議員がいっぱいいるのに東京以外の人を知事にするのかと反発が出て来る。野党系の場合、野党支持者はまとめられても、無党派層に浸透するのが難しい。今回の石丸氏もずいぶん得票したが、当選には遠かった。「知名度」とともに、なんで地方の市長が東京の知事になりたいのという素朴な疑問を越えられないということか。

 今後も他の自治体トップでは難しいと思う。全都的に支持を得るには、他県、他市のトップだった過去が足を引っ張るのかもしれない。東京の有権者に違和感を感じさせるということではないか。今まで誰も言ってないと思うので、ちょっと書いてみた次第。
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