尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

レバノンの通信機器爆発事件ー「テロ国家」イスラエル

2024年09月22日 21時44分30秒 |  〃  (国際問題)
 2024年9月17日に、レバノンで「ポケットベル」(ポケベル)が同時多発的に爆発する事件があった。翌日には「トランシーバー」の爆発も起こった。合計で37人が死亡、およそ3000人がけがをしたと報道されている。これはレバノンで活動するシーア派系イスラム主義組織ヒズボラ(ヒズボッラー)を狙ったものとされる。ヒズボラはスマホを使うとGPSで位置を突きとめられるとして、数ヶ月前に内部に禁止令を出したと言われる。しかし、こんなことになるとは誰も予想せず、子どもにも死者が出ているようだ。どこで爆発が起きるか事前に判らないから、町中で爆発して周りの人々にも多くの被害を出したようだ。
(ポケベルが爆発)
 ポケベルは90年代日本で大ヒットした商品で、当時の女子高生は皆使っていた。僕も生徒を呼び出すのに使ったことがあるが、今や知らない人も多いんじゃないかと思う。ケータイ電話の普及によって使う人が少なくなっていって、通信会社によるサービスは2017年に終了しているという。一部で行政組織など特別に「無線呼び出し」システムを残しているところもあるらしいが、まあ日本では終わった技術だろう。こういう風な使い方もあるのかと思ったが、「一斉に爆発」とは恐ろしいテロ事件である。誰か指導者を特定して狙うのではなく、「無差別テロ」が計画段階から想定されている。
(トランシーバーが爆発)
 これほど大規模で巧妙な「テロ」事件を計画、遂行できるのは、もちろんイスラエルだけだろう。他の国家に行う能力があったとしても、「動機」「機会」がないだろう。イスラエルは否定も肯定もしていないし、今後もそういう対応を続けるはずである。しかし、他に考えられらない以上、これは「イスラエルの国家テロ事件」とみなさざるを得ない。その前に7月31日にイランの首都テヘランでハマス最高幹部ハニヤ氏が暗殺される事件が起こった。ハニヤ氏はイランに永住していたのではなく、大統領就任式典参加のためイランに滞在していた。この事件の詳細も不明な点が多いが、どうしてこういうことが可能なのか。

 イスラエルのモサド(諜報特務庁)はかねてより「世界最強」と言われているが、それにしてもちょっと考えがたいレベルに達している。恐らく僕が生きている間には真相は明かされないと思うが、その事件内容の評価はさておき何があったのかは知りたいものだ。ポケベルは台湾の会社(ゴールド・アポロ)のものだが、その会社はハンガリーの会社(BACコンサルティング)とライセンス契約を結びブランド使用を許可していたという。そのBACコンサルティングという会社は実体があるかどうか不明で、謎めいている。一方トランシーバーは大阪に本社を置く日本の通信機器メーカー「アイコム」が製造したものというが、同社は10年前に製造を中止している。一方で同社の模造品は世界中に流通しているとのことで、こちらも謎めいている。
(「15年前から計画」と報道)
 そこで「15年前から計画されていた」という推測もなされている。そこら辺は不明だが、少なくとも1年で出来るものじゃないだろう。つまり、ハマスの奇襲攻撃、イスラエルのガザ攻撃戦争が起こったため、この事件が計画されたのではない。それ以前から何年もかけて準備されてきたのである。恐らく世界各地に「幽霊企業」や「マネーロンダリング銀行」などを多数用意してあるんだと思う。それにしてもヒズボラに納入するポケベルやトランシーバーに爆発物を仕込むという作業を誰がどこでどのように行ったのだろう。一人じゃ無理だが、多すぎても不審を招く。どこから洩れるか判らないし、ヒズボラに確実に納める方法は見当も付かない。
(ヒズボラは報復を宣言)
 国連安保理では20日、緊急会合が開かれた。出席したレバノンのハビブ外相は、イスラエルによる無差別な攻撃だとしたうえで「イスラエルはこのテロ攻撃によって軍人と民間人を区別するという国際人道法の原則に違反した」と述べたという。一方、イスラエル側はヒズボラがレバノンで「国家内国家」となり、イスラエルに攻撃を仕掛けていると非難した。それは間違いないが、今回の事件と直接関係しない。もちろんイスラエルは爆発事件の「実行犯」であると認めていないのだから、事件に対して触れるはずがない。もともと民間人に犠牲を出すことを目的とした作戦なんだから、今回の事件は明らかな国際法違反である。

 ガザでの報復攻撃、ヨルダン川西岸地区での異常な強圧的姿勢、それらにも見ることができるが、イスラエルの場合単に「やりすぎ」とか「派生的犠牲者」などと言って済まされない。やってることは「テロ国家」と評するしかない。モサドは首相直属組織で、要するにネタニヤフ首相の承認なくしては作戦を実施出来ない。ネタニヤフ政権が交代したとしても本質は変わらないだろうが、それでもネタニヤフ自身に個人的責任がある。それとともに、数年前からイスラエルとの「防衛協力」を日本政府や大企業が模索してきた事実である。だがイスラエルとの協力には問題が多いことが明らかだ。どんなテロ事件に利用されるか判らないし、そもそも倫理的に許されない。日本政府、企業への監視も必要だ。

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