尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイス』、ますます面白い3作目

2024年10月10日 22時18分20秒 | 映画 (新作日本映画)
 阪元裕吾監督・脚本の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開中。今まで書いてないが、同名の長編シリーズ映画の第3作である。高石あかり伊澤彩織の若い女性2人が何と殺し屋をやってる奇想天外な設定である。まだ28歳の阪元裕吾(1996~)が作っていて、第1作『ベイビーわるきゅーれ』(2021)、第2作『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023)に続く第3作。前2作は小さな上映から始まって評判になったが、まだ自分たちで楽しく作ってます感が強かった。第3作は池松壮亮前田敦子をゲストに迎えるまでになり、娯楽アクション映画として見逃せない出来映えになっている。

 杉本ちさと高石あかり、2002~)と深川まひろ伊澤彩織、1994~)は、シリーズ当初は卒業間近の女子高生だった。しかし、社会に適合できない二人は「殺し屋」という裏の顔を持っていた。「殺し屋協会」に所属して、依頼に応じてプロの手腕で殺しを行う。しかし、この2人は社会性に乏しく、公共料金の振込みとかそういうことが出来ないのである。高石あかりの方が8歳も年下だが、映画では伊澤彩織の方が年下でコミュニケーション障害という設定になっている。だから「ちさと」が対外的に対応するが、伊澤彩織は本業がスタントなので「まひろ」が最終盤にアクションを披露することが多い。
(右=高石、左=伊澤)
 今回は初の「出張」で、宮崎にやってくる。「依頼案件」はさっさと片付けて、宮崎牛を食べたいな。いけない、「まひろ」はちょうど二十歳になるのに、「ちさと」はお祝いを忘れてた。なんてノンビリムードが一変するのが、「依頼」をこなすために宮崎県庁舎に行った時だった。この県庁舎が効果的で、ちょうど日曜で人がいないことになっている。ターゲットを探していくと、別人が殺そうとしていた。それが協会に所属せずフリーで活動する殺し屋、冬村かえで池松壮亮)だった。いつもジャマになる冬村は協会から抹殺指令が出て、協会に所属する地元の入鹿みなみ前田敦子)と七瀬大谷主水)も加わる。みなみはいちいち2人に突っかかり、険悪ムードの中4人はターゲットと冬村を探し回る。
(冬村かえで=池松壮亮)
 この宮崎という設定で、シーガイアなども効果的に出て来る。宮崎県庁舎本館は1932年建設で、国の登録有形文化財に指定されている。観光地としても知られているらしい。あらすじを細かく書く必要はないだろう。ただ冬村は今までで一番の強敵で、4人で当たっているのになかなか倒せない。最後はまひろと一騎打ちになるが、見事なアクションにしびれる。「ちさと」「まひろ」コンビがボソボソとガールズトークするのも、ますます磨きが掛かってきた。ただ単に面白く見られる映画だが、たまにはこういうのも見ないと。人気俳優が客演するだけのシリーズに育って、今後の展開も楽しみだ。
(宮崎県庁舎本館)
 最近公開されたアメリカ映画『ヒットマン』はニセ殺し屋映画だが、その中に日活映画『拳銃(コルト)は俺のパスポート』(1967)が引用されていてビックリした。同年には『殺しの烙印』(鈴木清順監督)も作られている。日本は伝説的「殺し屋映画」を作ってきた伝統がある。「殺し屋ランキング」とか「殺し屋協会」とか奇想天外な設定が出来るのは、日本には銃が少ないからだろう。日本は世界的に「殺人事件発生率」が非常に低い社会だが、だからこそあり得ない設定を楽しむファンタジーが可能なんだろう。今後もこのシリーズがますますハチャメチャに発展していくことを期待したい。

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