2024年10月の訃報2回目。2回目は著作がある人を中心に、その他の人、海外の訃報を合わせて。まず、美術評論家の高階秀爾(たかしな・しゅうじ)が10月17日死去、92歳。東大名誉教授、国立西洋美術館館長(92~2000)、大原美術館長(2002~23)など、数多くの役職を務めた。文化勲章受章。というエラい人で著作もいっぱいあるんんだけど、読んだことがない。そもそも美術評論は読まないけど、朝日新聞に時々掲載されていた「美の季想」というエッセイも難しくてよく理解出来なかった。1967年に江藤淳と遠山一行と創刊した「季刊芸術」も、ちょっと自分と違うなと思わせたかも。岩波新書の『名画を見る眼』が昨年カラー化されてベストセラーになってるから、これはいずれ読みたいと思ってる。69年に出て、合計82万部出たという。
漫画家の楳図(うめず)かずおが10月28日死去、88歳。死因は胃がんだった。この人も書くことがなくて困ってしまう。一つも読んだことがないのである。そもそも漫画をそんなに読まないが、ある程度読んでる人もいる。僕が大人になってから活躍した人ならともかく、名前だけは子どもの頃から知っていた。でも読んでないのは「恐怖マンガ」だったからだと思う。実は僕は映画でも小説でもホラー系はほとんど知らないのである。(ものすごく怖がりなんじゃなくて、何が怖いのか感じないことが多いので。)紹介によれば、代表作は『漂流教室』『まことちゃん』『わたしは真悟』などで、ギャグ漫画『まことちゃん』は「グワシ」「なのら」などの流行語を生んだ。そう言われると思い出すような。2007年に吉祥寺の自宅を改装し赤白ボーダーラインを入れた時に、近隣住民から景観を乱すと訴えられた。(訴えは棄却。)2018年にフランス・アングレーム国際漫画賞遺産賞受賞。
児童文学作家の中川李枝子が10月14日死去、89歳。『ぐりとぐら』(1963)の著者である。これは僕も持っている。もともと都内の保育園の保育士で、仕事の傍ら創作を開始、1962年に『いやいやえん』でデビューした。絵は妹の大村百合子(後、山脇姓)が担当し、『ぐりとぐら』シリーズは現在までに250刷、571万部のベストセラーになっているという。また『となりのトトロ』の主題歌「さんぽ」の歌詞も手掛けている。2013年に姉妹で菊池寛賞受賞。
弁護士の大谷恭子が10月11日死去、74歳。多分社会的に重要、あるいは大きく報じられた人を先に書いたけど、一番思い出にあって驚いたのはこの人の訃報だった。78年に弁護士登録して、多くの難事件を弁護した。連合赤軍事件の永田洋子(ひろこ)や、「連続射殺魔事件」の永山則夫などである。永山則夫の弁護人を務めるのは本当に大変だったと思う。1999年に『死刑事件弁護人ー永山則夫とともに』という本を出していて、97年の死刑執行後に書かれた必読本。永山に関しては『それでも彼を死刑にしますかー網走からペルーへ永山則夫の遙かなる旅』も書いている。永山子ども基金の代表を長く務めて、ペルーの働く子どもたちへの支援を行った。2016年には虐待や性暴力で苦しむ若い女性を支援する『若草プロジェクト』を発足させ代表理事を務めた。他の著書に『共生の法律学』『共生社会のリーガルベース:差別と闘う現場から』などがある。
自然地理学者で、三重大学名誉教授の目崎茂和が10月15日死去、78歳。大谷弁護士を知っていても、この目崎教授は知らない人が多いと思う。サンゴ礁研究の第一人者で、世界自然保護基金ジャパン評議員を務めるなど、自然保護運動に関わった。特に沖縄県石垣島の新空港建設で白保地区のサンゴ礁保護運動で重要な役割を果たした。88年の『石垣島・白保サンゴの海』でJCJ奨励賞を受けた。80年代に白保サンゴ礁保護の集会に参加した人は、目崎氏の明快な講演に目を開かれたと思う。辺野古への基地移転問題でも現地調査をした。なお目崎氏は浅草出身で、都立白鴎高校卒業。同窓だったと初めて知った。
・体操女子メキシコ五輪代表で、体操指導者の塚原千恵子が9月1日死去、77歳。夫は金メダル5個の塚原光男、アテネ五輪団体優勝の塚原直也は息子。多くの選手を育成したが、18年には塚原夫妻のパワハラが問題となった(認められないという結論が出た)。社会思想史学者で、国立歴史民俗博物館名誉教授の安田常雄が9月12日死去、78歳。『日本ファシズムと民衆運動』など。
・再審無罪となった免田栄さんの妻、免田玉枝が18日死去、88歳。東宝映画で着ぐるみなどの造形を担当した美術造形家、村瀬継蔵が14日死去、89歳。『モスラ』『キングコング対ゴジラ』などの造形助手として制作に関わった。大映の『大怪獣ガメラ』『大魔神』シリーズなども手掛け、東宝から独立して会社を作って東アジアでも活躍。「仮面ライダー」なども手掛けた。2024年日本アカデミー賞特別賞受賞。絵本作家のせなけいこが23日死去、92歳。『ねないこ だれだ』(1969)で知られた。
・東京電力元会長の勝俣恒久が21日死去、84歳。2002年に東電社長、08年に会長を務めた。原発不祥事で退任した前任者から社長を引き継ぎ、柏崎刈羽原発の不祥事で社長を退き会長となった。そして会長時代に福島第一原発事故が起きたのである。16年に業務上過失致死傷で強制起訴されたが、23年1月に東京高裁で無罪判決を受け、指定弁護士による上告中だった。また株主代表訴訟では旧経営陣4人に13兆円の支払いを命じる判決が東京地裁で22年に出て控訴中。
中国の元全人代常務委員長、呉邦国が8日死去、83歳。2003年から13年に全人代常務委員長を務め、共産党内で胡錦濤政権で序列2位だった。またインドの大手財閥タタ・グループの持ち株会社タタ・サンズの名誉会長、ラタン・タタが9日死去、86歳。拡大路線を取り、タタ・グループをインドだけでない世界的企業に押し上げた。元スコットランド自治政府首相のアレックス・サモンドが12日死去、69歳。2007年に首相となり、14年の独立をめぐる住民投票を実現したが、否決の結果辞任した。トルコの宗教家フェトフッラー・ギュレンが20日死去、83歳。イスラム教道徳を基礎にして「寛容」を説く「ギュレン運動」の指導者。かつてはエルドアン大統領の支持母体だったが、エルドアンの強権化にともない関係が悪化した。2016年のクーデタ未遂では背後にギュレン運動があるとして激しく対立した。事件当時病気治療を目的にアメリカに滞在中で、アメリカに引き渡しを求めたがアメリカで死去。
・映画監督のポール・モリセイが28日死去、90歳。『悪魔のはらわた』『処女の生血』の監督である。
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