『マエストロ: その音楽と愛と』という映画を一部映画館で上映しているけど、知らない人が多いと思う。これはブラッドリー・クーパー監督がアメリカの大音楽家レナード・バーンスタインの生涯を見事に描き上げた傑作映画だ。だけどNetflix製作で、配信前の特別上映なので、そういう場合はほとんど宣伝しないのである。最近発表されたゴールデングローブ賞の候補発表では、作品(ドラマ部門)、主演女優、主演男優、監督賞の各部門にノミネートされている。劇場で見られる機会を逃すのは惜しい名作。
レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein、1918~1990)はアメリカの音楽界に現れた初の巨匠(マエストロ)である。指揮者、作曲家、ピアニストであり、特にクラシックの作曲や指揮を中心に活躍したが、ミュージカル『ウエストサイド物語』や映画『波止場』の作曲なども彼である。単なる「指揮者」や「作曲家」ではなく、自ら「音楽家」と称した人だった。僕ももちろん名前はずっと前から知っていたが、何度も来日公演しているのに行かなかった。若い頃はけっこうクラシックのコンサートに行ってたが、やっぱりカラヤンやベームに行ったのである。ニューヨーク・フィルじゃなくてウィーン・フィルなどに。
(レナード・バーンスタイン本人)
バーンスタインはアメリカ生まれのユダヤ人で、映画の中でも「バーンズ」に変えるべきだとか言われている。1943年にニューヨーク・フィルの副指揮者になり、11月にたまたま病気になったブルーノ・ワルターの代演を行い、ラジオ放送でセンセーションを呼んだという。その有名なエピソードも描かれるが、その頃の話はモノクロ映像。脚本、監督とともに自ら主演しているブラッドリー・クーパーが本人かと見紛う大熱演である。それはアカデミー賞2度受賞のカズ・ヒロ(辻 一弘)の特殊メイクの素晴らしさでもある。もともと大熱演型の指揮者だったというが、若い頃から晩年までまで見事に演じているのに驚嘆。
(指揮するバーンスタイン=映画)
しかし、ブラッドリー・クーパー以上に印象的だったのは、妻フェリシアを演じたキャリー・マリガンである。チリ出身の舞台女優だったフェリシアと出会った時、すでにバーンスタインは結婚していた。(詳しくは描かれないが、すでに関係は破綻していたらしい。)すぐに2人は恋に落ち、3人の子どもが生まれる。しかし、フェリシアが常に悩んでいたのは夫レニーの同性愛だった。夫は身近なところに常に「友人以上の」男性がいて、イチャイチャしていたのである。まだバイセクシャルが容認される時代じゃなく、周囲や子どものためにフェリシアはずっと隠し通す。しかし、次第に二人の関係は悪化していくのである。
(知り合った頃の二人)
その有様を美しい風景(バーンスタインの住む家がすごい)の中で描き出す。歓喜と苦悩を見事に演じたキャリー・マリガンは有力な演技賞候補だと思う。今まで『17歳のカルテ』『プロミシング・ヤング・ウーマン』で2度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたが、今度は受賞するかもしれない。バーンスタイン役のブラッドリー・クーパーも、『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』『アメリカン・スナイパー』『アリー/スター誕生』と今まで4度もアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。この2人の演技合戦が実に素晴らしいのである。
(フェリシア本人)
フェリシアは子どもが大きくなり、再び舞台への情熱を取り戻す。そのフェリシアが先に病魔に倒れるのである。レニーはものすごいヘヴィー・スモーカーでフェリシアも喫煙者だったらしい。肺がんになったのでタバコの影響を否定出来ないと思う。しかし、それでも妻のそばでタバコを吸っている。それは当時の事実に基づいているんだろうし、そんなものだったんだろうけど、ひどい時代だったなあと思った。フェリシアが倒れる前、心血を注いでいた「荘厳ミサ曲」が完成して初公演を迎える。再現されたものだと知ってるわけだが凄い迫力で、フェリシアも訪れ何度も抱き合った成功を喜ぶ。感動的な名シーンだ。
(レニーとフェリシア)
二人が背中をもたれあう場面が2回ある。それがとても心に沁みる。そして映画ではずっとバーンスタインの音楽が使われる。同じユダヤ系ということで本人も愛好していたというマーラーが流れると、見ている側にも幸福な感情があふれてくる。マーティン・スコセッシとスティーヴン・スピルバーグが製作に加わっている。『アリー/スター誕生』でも組んだマシュー・リバティークの撮影も見事だった。12月20日に配信予定。
レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein、1918~1990)はアメリカの音楽界に現れた初の巨匠(マエストロ)である。指揮者、作曲家、ピアニストであり、特にクラシックの作曲や指揮を中心に活躍したが、ミュージカル『ウエストサイド物語』や映画『波止場』の作曲なども彼である。単なる「指揮者」や「作曲家」ではなく、自ら「音楽家」と称した人だった。僕ももちろん名前はずっと前から知っていたが、何度も来日公演しているのに行かなかった。若い頃はけっこうクラシックのコンサートに行ってたが、やっぱりカラヤンやベームに行ったのである。ニューヨーク・フィルじゃなくてウィーン・フィルなどに。
(レナード・バーンスタイン本人)
バーンスタインはアメリカ生まれのユダヤ人で、映画の中でも「バーンズ」に変えるべきだとか言われている。1943年にニューヨーク・フィルの副指揮者になり、11月にたまたま病気になったブルーノ・ワルターの代演を行い、ラジオ放送でセンセーションを呼んだという。その有名なエピソードも描かれるが、その頃の話はモノクロ映像。脚本、監督とともに自ら主演しているブラッドリー・クーパーが本人かと見紛う大熱演である。それはアカデミー賞2度受賞のカズ・ヒロ(辻 一弘)の特殊メイクの素晴らしさでもある。もともと大熱演型の指揮者だったというが、若い頃から晩年までまで見事に演じているのに驚嘆。
(指揮するバーンスタイン=映画)
しかし、ブラッドリー・クーパー以上に印象的だったのは、妻フェリシアを演じたキャリー・マリガンである。チリ出身の舞台女優だったフェリシアと出会った時、すでにバーンスタインは結婚していた。(詳しくは描かれないが、すでに関係は破綻していたらしい。)すぐに2人は恋に落ち、3人の子どもが生まれる。しかし、フェリシアが常に悩んでいたのは夫レニーの同性愛だった。夫は身近なところに常に「友人以上の」男性がいて、イチャイチャしていたのである。まだバイセクシャルが容認される時代じゃなく、周囲や子どものためにフェリシアはずっと隠し通す。しかし、次第に二人の関係は悪化していくのである。
(知り合った頃の二人)
その有様を美しい風景(バーンスタインの住む家がすごい)の中で描き出す。歓喜と苦悩を見事に演じたキャリー・マリガンは有力な演技賞候補だと思う。今まで『17歳のカルテ』『プロミシング・ヤング・ウーマン』で2度アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたが、今度は受賞するかもしれない。バーンスタイン役のブラッドリー・クーパーも、『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・ハッスル』『アメリカン・スナイパー』『アリー/スター誕生』と今まで4度もアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。この2人の演技合戦が実に素晴らしいのである。
(フェリシア本人)
フェリシアは子どもが大きくなり、再び舞台への情熱を取り戻す。そのフェリシアが先に病魔に倒れるのである。レニーはものすごいヘヴィー・スモーカーでフェリシアも喫煙者だったらしい。肺がんになったのでタバコの影響を否定出来ないと思う。しかし、それでも妻のそばでタバコを吸っている。それは当時の事実に基づいているんだろうし、そんなものだったんだろうけど、ひどい時代だったなあと思った。フェリシアが倒れる前、心血を注いでいた「荘厳ミサ曲」が完成して初公演を迎える。再現されたものだと知ってるわけだが凄い迫力で、フェリシアも訪れ何度も抱き合った成功を喜ぶ。感動的な名シーンだ。
(レニーとフェリシア)
二人が背中をもたれあう場面が2回ある。それがとても心に沁みる。そして映画ではずっとバーンスタインの音楽が使われる。同じユダヤ系ということで本人も愛好していたというマーラーが流れると、見ている側にも幸福な感情があふれてくる。マーティン・スコセッシとスティーヴン・スピルバーグが製作に加わっている。『アリー/スター誕生』でも組んだマシュー・リバティークの撮影も見事だった。12月20日に配信予定。
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