雨の中、池袋HUMAXシネマズ シネマ1で開かれた『真理ちゃん映画祭り2』に行ってきた。6千円もするけど、もう8月に予約していたのである。「真理ちゃん」というのは、天地真理(あまち・まり、1951~)のことで、そう言われても判らない人もいるかもしれない。1971年にデビューして、70年代中頃まで絶大な人気を誇った歌手で、出演映画も何本かある。今回は『愛ってなんだろ』(1973)、『虹をわたって』(1972)の映画2本の上映の他、テレビ番組の歌映像上映、タブレット純×佐藤利明のトークショーもあった。しかし、そういうことより、天地真理本人の舞台あいさつがあったのだ。これは逃せない。
実はそこまで大ファンだったわけではない。探してみたら、シングルレコードは72年の大ヒット曲「ひとりじゃないの」しか持ってない。アグネス・チャンやキャンディーズより少ない。そもそもアイドル系歌謡曲はそんなに持ってなくて、サイモン&ガーファンクルやザ・ビートルズ、あるいはモーツァルトやバッハなどのクラシック、ジャズなど雑多なLPレコードを聴いていた。それでも71年秋に「水色の恋」でデビューした天地真理はよく聞いた。媒体はラジオである。テレビは一家に一台で、夜遅くまで見るわけにいかない。高校生が受験勉強するときの友はラジオの深夜放送だった。だから、当時のヒット曲は詳しいのである。
(「ひとりじゃないの」ジャケット)
まず最初に舞台あいさつ。今日は『愛ってなんだろ』で共演した森田健作とともに天地真理が登壇した。森田健作前千葉県知事は要らないんだけど、さすがに元政治家だけにうまく誉めるのに感心した。本人はさすがに年は取っているが、今も魅力的。ちょっと体調が心配な感じもあるが、今まで何度も苦境を乗り越えてきた人だ。今は娘と孫もいて、ファンクラブは娘さんが手伝っている。今日はどうせ「じいさん」ばかりだろうと思っていたら、まあベースはそうなんだけど、案外女性客が多い。3割か4割はいた。若い人もいないわけではない。広く愛された歌手だったんだなあと思った。
当時のテレビ番組「真理ちゃんシリーズ」から、歌の映像が流された。「アイドルの名を冠したバラエティのルーツ」とチラシにある。木曜夜19時だとあるが、僕はその番組を見ていない。家では主にNHKニュースを見る時間だったんだと思う。ここで聴ける当時の歌は非常に素晴らしい。デビュー当時のキャッチフレーズが「あなたの心の隣にいるソニーの白雪姫」だった。「白雪姫」と言われるような白が似合う衣装に、澄み切った歌声が響き渡る。実は国立音大附属高の声楽家卒で、ジョーン・バエズや森山良子に憧れていた。その後、ヤマハ附属ミュージックスクールで学んでプロを目指していた。天地真理は、60年代までの「大スター」性、70年代以後の親しみやすい「アイドル」性、それに60年代末のフォーク系歌手のそれぞれのイメージをまとっていた。
歌声の素晴らしさとテレビ『時間ですよ』でデビューした親しみやすさが天地真理の持ち味だった。この位置づけに関しては、タブレット純(歌手・芸人)と佐藤利明(娯楽映画研究家)の対談が刺激的だった。一番面白かったのは実はこのトークショー。佐藤さんはとにかく詳しくて、天地真理の最初の映画は本名斎藤真理名義でクレジットされた『めまい』(斉藤耕一監督)だという話に驚いた。書きたいことは多いが、僕が一番驚いたこと。幼い佐藤氏は足立区北東部の花畑団地に住んでいて、最初に買ったLPレコードは竹ノ塚駅前のレコード屋で買った天地真理だった。そこは多分僕が「ひとりじゃないの」を買った店だ。
(タブレット純)(佐藤利明)
広瀬襄監督の『愛ってなんだろ』は天地真理の歌を全面的に見せるための歌謡映画で、映画的には物足りない。共演が森田健作だが、この人気青春スターを使いながら、二人は恋人にならない。天地真理はおもちゃ会社の社員で、同僚と歌のグループを作っている。いろいろあって、森田が作詞作曲した(設定の)「若葉の季節」をテレビで歌う。そこら辺が初々しい魅力で(ファンには)見応えがある。脇役の小松政夫、田中邦衛、佐藤蛾次郎、尾藤イサオ、谷啓など強力な布陣を楽しめる。来年3月に初DVD化。
(映画『愛ってなんだろ』)
それに比べれば『虹をわたって』はずっと面白い。喜劇の名手前田陽一監督の作品で、横浜の水上生活者と山手のお嬢様の交流を描いている。前に銀座シネパトスで見ているが、今回の方が面白く見られた。萩原健一、沢田研二が天地真理の相手役で出て来るから豪華なものである。萩原健一は実際に天地真理を乗せて車を運転しているし、沢田研二は天地真理とヨットに乗る。他にも有島一郎、なべおさみ、岸部シロー、日色ともゑ、左時枝など共演が見事なのは当時の映画に共通している。天地真理をあえて下層世界に投げ込んで働かせるという趣向が生きている。
(映画『虹をわたって』)
休憩込みで5時間半ほどの長丁場。値段もそれなりで疲れたけど、やはり行って良かったなあと思って帰ってこられた一日だった。「2」というから、「1」があったはずだが、それは全然知らなかった。二人のトークショーは盛り上がって、他でまたやりましょうと言っていた。それは是非行きたいな。
実はそこまで大ファンだったわけではない。探してみたら、シングルレコードは72年の大ヒット曲「ひとりじゃないの」しか持ってない。アグネス・チャンやキャンディーズより少ない。そもそもアイドル系歌謡曲はそんなに持ってなくて、サイモン&ガーファンクルやザ・ビートルズ、あるいはモーツァルトやバッハなどのクラシック、ジャズなど雑多なLPレコードを聴いていた。それでも71年秋に「水色の恋」でデビューした天地真理はよく聞いた。媒体はラジオである。テレビは一家に一台で、夜遅くまで見るわけにいかない。高校生が受験勉強するときの友はラジオの深夜放送だった。だから、当時のヒット曲は詳しいのである。
(「ひとりじゃないの」ジャケット)
まず最初に舞台あいさつ。今日は『愛ってなんだろ』で共演した森田健作とともに天地真理が登壇した。森田健作前千葉県知事は要らないんだけど、さすがに元政治家だけにうまく誉めるのに感心した。本人はさすがに年は取っているが、今も魅力的。ちょっと体調が心配な感じもあるが、今まで何度も苦境を乗り越えてきた人だ。今は娘と孫もいて、ファンクラブは娘さんが手伝っている。今日はどうせ「じいさん」ばかりだろうと思っていたら、まあベースはそうなんだけど、案外女性客が多い。3割か4割はいた。若い人もいないわけではない。広く愛された歌手だったんだなあと思った。
当時のテレビ番組「真理ちゃんシリーズ」から、歌の映像が流された。「アイドルの名を冠したバラエティのルーツ」とチラシにある。木曜夜19時だとあるが、僕はその番組を見ていない。家では主にNHKニュースを見る時間だったんだと思う。ここで聴ける当時の歌は非常に素晴らしい。デビュー当時のキャッチフレーズが「あなたの心の隣にいるソニーの白雪姫」だった。「白雪姫」と言われるような白が似合う衣装に、澄み切った歌声が響き渡る。実は国立音大附属高の声楽家卒で、ジョーン・バエズや森山良子に憧れていた。その後、ヤマハ附属ミュージックスクールで学んでプロを目指していた。天地真理は、60年代までの「大スター」性、70年代以後の親しみやすい「アイドル」性、それに60年代末のフォーク系歌手のそれぞれのイメージをまとっていた。
歌声の素晴らしさとテレビ『時間ですよ』でデビューした親しみやすさが天地真理の持ち味だった。この位置づけに関しては、タブレット純(歌手・芸人)と佐藤利明(娯楽映画研究家)の対談が刺激的だった。一番面白かったのは実はこのトークショー。佐藤さんはとにかく詳しくて、天地真理の最初の映画は本名斎藤真理名義でクレジットされた『めまい』(斉藤耕一監督)だという話に驚いた。書きたいことは多いが、僕が一番驚いたこと。幼い佐藤氏は足立区北東部の花畑団地に住んでいて、最初に買ったLPレコードは竹ノ塚駅前のレコード屋で買った天地真理だった。そこは多分僕が「ひとりじゃないの」を買った店だ。
(タブレット純)(佐藤利明)
広瀬襄監督の『愛ってなんだろ』は天地真理の歌を全面的に見せるための歌謡映画で、映画的には物足りない。共演が森田健作だが、この人気青春スターを使いながら、二人は恋人にならない。天地真理はおもちゃ会社の社員で、同僚と歌のグループを作っている。いろいろあって、森田が作詞作曲した(設定の)「若葉の季節」をテレビで歌う。そこら辺が初々しい魅力で(ファンには)見応えがある。脇役の小松政夫、田中邦衛、佐藤蛾次郎、尾藤イサオ、谷啓など強力な布陣を楽しめる。来年3月に初DVD化。
(映画『愛ってなんだろ』)
それに比べれば『虹をわたって』はずっと面白い。喜劇の名手前田陽一監督の作品で、横浜の水上生活者と山手のお嬢様の交流を描いている。前に銀座シネパトスで見ているが、今回の方が面白く見られた。萩原健一、沢田研二が天地真理の相手役で出て来るから豪華なものである。萩原健一は実際に天地真理を乗せて車を運転しているし、沢田研二は天地真理とヨットに乗る。他にも有島一郎、なべおさみ、岸部シロー、日色ともゑ、左時枝など共演が見事なのは当時の映画に共通している。天地真理をあえて下層世界に投げ込んで働かせるという趣向が生きている。
(映画『虹をわたって』)
休憩込みで5時間半ほどの長丁場。値段もそれなりで疲れたけど、やはり行って良かったなあと思って帰ってこられた一日だった。「2」というから、「1」があったはずだが、それは全然知らなかった。二人のトークショーは盛り上がって、他でまたやりましょうと言っていた。それは是非行きたいな。
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