一部映画館で『モンタレー・ポップ』4K版を上映している。題名を見れば判る人もいると思うけど、これは1967年6月16日から18日に行われた「あの伝説のミュージック・フェスティバル」の記録映画である。1968年末にアメリカで公開されたものの、何故か日本では今まで正式に公開されていなかった。このフィルムには、まさに伝説となった何人ものミュージシャン、幾つもの演奏シーンが続々と出て来て、今もなお興奮して見られる映画だ。しかし、それに止まらないまらない社会的意味も持っている。
スコット・マッケンジー『花のサンフランシスコ』という曲がある。“If you're going to San Francisco Be sure to wear some flowers in your hair If you're going to San Francisco You're gonna meet some gentle people there” と始まる。(もし君がサンフランシスコへ行くなら 花で髪を飾って行って もし君がサンフランシスコへ行くなら そこで優しい人たちと出会うだろう)この歌はこのフェスティバルを企画したママス&パパスのジョン・フィリップスが、このフェスティバルのプロモーションのために作った曲なのである。冒頭でこの歌声が流れる時、あっという間に時空を越えてしまう。
モンタレー・ポップ・フェスティバルは、69年のウッドストック音楽祭など大規模音楽フェスティバルの最初のものだった。さらにそれに止まらずアメリカの60年代末のカウンター・カルチャーの象徴にもなった。67年の「サマー・オブ・ラブ」と呼ばれたヒッピー・ムーブメントの絶頂でもあった。ベトナム反戦運動、公民権運動に揺れた60年代アメリカで、「gentle people」が集結したのである。そして、このフィルムはその運動の限界をも記録してしまった。
何より貴重なのは、このフェスティバルがジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスの名前を広めたことである。奇しくも二人は3年後に、同じ27歳で亡くなることになる。ジャニスなど、そのシャウトが非常に評判になって2回出たぐらいである。しかし、こう言っちゃ何だけど、アップにすると早くも肌の荒れが気になるのである。ジミ・ヘンドリックスはイギリスで活躍していたが、このフェスで母国アメリカでも知られるようになった。有名なエレキギターを燃やしてしまうシーンが出て来る。
(ジャニス・ジョプリン)(ジミ・ヘンドリックス)
ギターを壊すと言えば、その前にザ・フーもぶっ壊している。そんなシーンはそれまで誰も見たことがなかったと思う。冒頭にママス&パパス『夢のカリフォルニア』が流れ、サイモン&ガーファンクル『59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)』が出て来る。いや、懐かしいな。全部書いても仕方ないが、ジェファーソン・エアプレイン、エリック・バードン&ジ・アニマルズ、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュとか、ロック界の有名どころが次々と出て来る。
そんな中で特に貴重なのは、オーティス・レディングだ。黒人のソウル歌手であるオーティス・レディングは、異色メンバーである。だけど、映画を見れば一目瞭然、完全に聴衆を虜にしてしまった。僕もこの人はあまり知らなかった。何しろこの年(1967年)の12月10日に自家用飛行機の事故で亡くなってしまったのである。その意味でも、すごく貴重なフィルムなのである。そして歌った『シェイク』、『愛しすぎて』などは全く素晴らしいというしかない。感動的だった。
(オーティス・レディング)
ところで、この映画に登場するミュージシャンは白人が圧倒的に多い。黒人はジミ・ヘンドリックスとオーティス・レディングだけである。観衆の方も圧倒的に白人ばかりである。観衆を映すシーンもいっぱいあるけど、黒人客は10人ぐらいしか写らない。またカップルで来ている客もいっぱいで、それこそ「サマー・オブ・ラブ」なんだけど、それも異性カップルばかりだ。つまり、ヒッピー・ムーブメントの象徴とも言える祭典だったけど、まだ「ヘテロセクシャルの白人」のものだったのである。後に性的指向に寛容な町として知られるサンフランシスコでも、この時点では同性カップルが公然と行動出来なかったのだろう。
(ラヴィ・シャンカール)
アジア系観衆はほぼ出てないけど、映画の最後はラヴィ・シャンカールのシタール演奏である。当時ビートルズへの影響などでインド音楽が注目されていた。中でもラヴィ・シャンカールは世界的に有名になったが、この映画でも圧倒的である。かなり長く出て来て、終了後に観衆はスタンディング・オベーションで応えている。ロックコンサートというのに、この段階では座って聞いている人ばかり。今なら考えられないと思うが、ラヴィ・シャンカールに対しては皆起ち上がったんだから、いかに素晴らしいかが伝わってくる。とにかく歴史的なフィルム。D・A・ペネベイカー監督は、この後ボブ・ディランの『ドント・ルック・バック』、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』などを製作していて、アカデミー名誉賞を受賞している。
スコット・マッケンジー『花のサンフランシスコ』という曲がある。“If you're going to San Francisco Be sure to wear some flowers in your hair If you're going to San Francisco You're gonna meet some gentle people there” と始まる。(もし君がサンフランシスコへ行くなら 花で髪を飾って行って もし君がサンフランシスコへ行くなら そこで優しい人たちと出会うだろう)この歌はこのフェスティバルを企画したママス&パパスのジョン・フィリップスが、このフェスティバルのプロモーションのために作った曲なのである。冒頭でこの歌声が流れる時、あっという間に時空を越えてしまう。
モンタレー・ポップ・フェスティバルは、69年のウッドストック音楽祭など大規模音楽フェスティバルの最初のものだった。さらにそれに止まらずアメリカの60年代末のカウンター・カルチャーの象徴にもなった。67年の「サマー・オブ・ラブ」と呼ばれたヒッピー・ムーブメントの絶頂でもあった。ベトナム反戦運動、公民権運動に揺れた60年代アメリカで、「gentle people」が集結したのである。そして、このフィルムはその運動の限界をも記録してしまった。
何より貴重なのは、このフェスティバルがジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスの名前を広めたことである。奇しくも二人は3年後に、同じ27歳で亡くなることになる。ジャニスなど、そのシャウトが非常に評判になって2回出たぐらいである。しかし、こう言っちゃ何だけど、アップにすると早くも肌の荒れが気になるのである。ジミ・ヘンドリックスはイギリスで活躍していたが、このフェスで母国アメリカでも知られるようになった。有名なエレキギターを燃やしてしまうシーンが出て来る。
(ジャニス・ジョプリン)(ジミ・ヘンドリックス)
ギターを壊すと言えば、その前にザ・フーもぶっ壊している。そんなシーンはそれまで誰も見たことがなかったと思う。冒頭にママス&パパス『夢のカリフォルニア』が流れ、サイモン&ガーファンクル『59番街橋の歌 (フィーリン・グルーヴィー)』が出て来る。いや、懐かしいな。全部書いても仕方ないが、ジェファーソン・エアプレイン、エリック・バードン&ジ・アニマルズ、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュとか、ロック界の有名どころが次々と出て来る。
そんな中で特に貴重なのは、オーティス・レディングだ。黒人のソウル歌手であるオーティス・レディングは、異色メンバーである。だけど、映画を見れば一目瞭然、完全に聴衆を虜にしてしまった。僕もこの人はあまり知らなかった。何しろこの年(1967年)の12月10日に自家用飛行機の事故で亡くなってしまったのである。その意味でも、すごく貴重なフィルムなのである。そして歌った『シェイク』、『愛しすぎて』などは全く素晴らしいというしかない。感動的だった。
(オーティス・レディング)
ところで、この映画に登場するミュージシャンは白人が圧倒的に多い。黒人はジミ・ヘンドリックスとオーティス・レディングだけである。観衆の方も圧倒的に白人ばかりである。観衆を映すシーンもいっぱいあるけど、黒人客は10人ぐらいしか写らない。またカップルで来ている客もいっぱいで、それこそ「サマー・オブ・ラブ」なんだけど、それも異性カップルばかりだ。つまり、ヒッピー・ムーブメントの象徴とも言える祭典だったけど、まだ「ヘテロセクシャルの白人」のものだったのである。後に性的指向に寛容な町として知られるサンフランシスコでも、この時点では同性カップルが公然と行動出来なかったのだろう。
(ラヴィ・シャンカール)
アジア系観衆はほぼ出てないけど、映画の最後はラヴィ・シャンカールのシタール演奏である。当時ビートルズへの影響などでインド音楽が注目されていた。中でもラヴィ・シャンカールは世界的に有名になったが、この映画でも圧倒的である。かなり長く出て来て、終了後に観衆はスタンディング・オベーションで応えている。ロックコンサートというのに、この段階では座って聞いている人ばかり。今なら考えられないと思うが、ラヴィ・シャンカールに対しては皆起ち上がったんだから、いかに素晴らしいかが伝わってくる。とにかく歴史的なフィルム。D・A・ペネベイカー監督は、この後ボブ・ディランの『ドント・ルック・バック』、デヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』などを製作していて、アカデミー名誉賞を受賞している。
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