『モンタレー・ポップ』を見る前に、ドイツのファティ・アキン監督の『RHEINGOLD ラインゴールド』という映画を見ていた。これがものすごく面白くて是非紹介したい。この映画はジャンルとしては犯罪映画だが、主人公が獄中でラッパーとして成功してしまうという展開が興味深い。これは実話だそうで、主人公の前半生を描く。その後はドイツ人なら誰でも知っているから描かなかったという。日本じゃ全然知らないけど、そんな人がいたのである。題名の「ラインゴールド」はワグナーのオペラ「ニーベルンゲンの歌」にある曲の名前で、「ラインの黄金」の意味。黄金をめぐる犯罪映画と音楽映画に掛けてあるんだろう。
ファティ・アキン(1973~)はトルコ系ドイツ人で、その出自をテーマにした映画で知られてきた。『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』『ソウル・キッチン』 『女は二度決断する』などで、若くしてカンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの三大映画祭で受賞したことで知られた。しかし、それら社会性が強い作風の作品は、特にヒットしたわけじゃない。しかし、今回の映画はドイツで大ヒットしたという。確かにすごく面白くて、背景に社会性はあるものの、今回は娯楽に徹した感じの作風である。物語がどんどん展開して、飽きる間もなくスピーディに進行するので目が離せない。
(ファティ・アキン監督)
主人公ジワ・ハジャビはイラン生まれのクルド人で、冒頭は1979年。つまりイスラム革命の年である。彼の父は有名な作曲家で、コンサートで指揮していたところに革命派が乱入して、音楽は反イスラムで止めろという。反論した客は撃たれて死に、客たちは逃げ出す。母はヴァイオリニストとして一緒にいたが、二人はともに逃げる。しかし、革命派はクルド人勢力を攻撃し、妊娠中だった母は一人でジワを産んだ。その後、子どもを連れて、何とイラン・イラク戦争中にイラクに脱出、スパイと疑われて逮捕され拷問される。だから、ジワの最初の記憶は監獄だった。やがて父は有名な作曲家と知られ、フランスへ出国することが認められた。
フランスからドイツへ(音楽ホールが多いと聞いて)移って、ドイツで難民となった。ジワもピアノを習い始めたが、父はコンサートを成功させた後で愛人のもとに奔った。ジワはピアノをやめ、ストリートでつるむ麻薬売人となった。他のグループにボコボコにされたのをきっかけにボクシングを始め、復讐に成功した。そのためクルド語でガター(危険なやつ)と呼ばれるようになった。逮捕状が出てオランダに逃げるが、知人が叔父を紹介してくれる。その人は実はマフィアの頭で、彼には良くしてくれる。タテマエでは音楽学校に通いながら、ジワは本格的な犯罪者になっていく。
(ジワ)
その後、大きなしくじりがあって(そのエピソードは笑える)、借金を負ってしまった。そこで情報をもとになんと死体から金歯を取って運ぶ車を襲撃することになる。その犯罪が上手く行くのかどうかが見どころだが、思わぬことから発覚して世界中を逃亡する。ドイツと犯罪者引き渡し条約を結んでない国を探して、2010年に(内戦直前の)シリアに逃げる。そこでアサド政権に逮捕され拷問されるが、結局ドイツに護送されてしまう。こうしてドイツの囚人となったが、もともと音楽の才能に恵まれていた。そんな彼が何故獄中でラッパーになれたのか。日本の刑務所と違う驚きの展開である。
(獄中でラップを吹き込む)
その間女性には純情で、幼なじみのシリン(イラン人)にずっと熱を上げているが、犯罪者のジワにシリンは冷たい。その恋がどうなるかも興味深い。映画としては、犯罪実行シーンが一番面白く見ごたえがある。そのスリルが受けたんだろう。もともとラップを作っていたが、獄中で作れてしまうのがすごい。それにしてもイラン・イスラム革命はとんでもない災厄だったことが判る。帝政イランには問題も多かったが、少数民族のクルド人でも作曲家として活動出来たのである。ドイツの中東難民事情も垣間見ることが出来るが、やはりいろいろと大変そうである。ただこの映画はそういう社会問題を訴えるよりも、疾走するアクション映画になっている。まあ、僕には次に見た60年代ロックほどラップには熱くなれなかったけど。
ファティ・アキン(1973~)はトルコ系ドイツ人で、その出自をテーマにした映画で知られてきた。『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』『ソウル・キッチン』 『女は二度決断する』などで、若くしてカンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの三大映画祭で受賞したことで知られた。しかし、それら社会性が強い作風の作品は、特にヒットしたわけじゃない。しかし、今回の映画はドイツで大ヒットしたという。確かにすごく面白くて、背景に社会性はあるものの、今回は娯楽に徹した感じの作風である。物語がどんどん展開して、飽きる間もなくスピーディに進行するので目が離せない。
(ファティ・アキン監督)
主人公ジワ・ハジャビはイラン生まれのクルド人で、冒頭は1979年。つまりイスラム革命の年である。彼の父は有名な作曲家で、コンサートで指揮していたところに革命派が乱入して、音楽は反イスラムで止めろという。反論した客は撃たれて死に、客たちは逃げ出す。母はヴァイオリニストとして一緒にいたが、二人はともに逃げる。しかし、革命派はクルド人勢力を攻撃し、妊娠中だった母は一人でジワを産んだ。その後、子どもを連れて、何とイラン・イラク戦争中にイラクに脱出、スパイと疑われて逮捕され拷問される。だから、ジワの最初の記憶は監獄だった。やがて父は有名な作曲家と知られ、フランスへ出国することが認められた。
フランスからドイツへ(音楽ホールが多いと聞いて)移って、ドイツで難民となった。ジワもピアノを習い始めたが、父はコンサートを成功させた後で愛人のもとに奔った。ジワはピアノをやめ、ストリートでつるむ麻薬売人となった。他のグループにボコボコにされたのをきっかけにボクシングを始め、復讐に成功した。そのためクルド語でガター(危険なやつ)と呼ばれるようになった。逮捕状が出てオランダに逃げるが、知人が叔父を紹介してくれる。その人は実はマフィアの頭で、彼には良くしてくれる。タテマエでは音楽学校に通いながら、ジワは本格的な犯罪者になっていく。
(ジワ)
その後、大きなしくじりがあって(そのエピソードは笑える)、借金を負ってしまった。そこで情報をもとになんと死体から金歯を取って運ぶ車を襲撃することになる。その犯罪が上手く行くのかどうかが見どころだが、思わぬことから発覚して世界中を逃亡する。ドイツと犯罪者引き渡し条約を結んでない国を探して、2010年に(内戦直前の)シリアに逃げる。そこでアサド政権に逮捕され拷問されるが、結局ドイツに護送されてしまう。こうしてドイツの囚人となったが、もともと音楽の才能に恵まれていた。そんな彼が何故獄中でラッパーになれたのか。日本の刑務所と違う驚きの展開である。
(獄中でラップを吹き込む)
その間女性には純情で、幼なじみのシリン(イラン人)にずっと熱を上げているが、犯罪者のジワにシリンは冷たい。その恋がどうなるかも興味深い。映画としては、犯罪実行シーンが一番面白く見ごたえがある。そのスリルが受けたんだろう。もともとラップを作っていたが、獄中で作れてしまうのがすごい。それにしてもイラン・イスラム革命はとんでもない災厄だったことが判る。帝政イランには問題も多かったが、少数民族のクルド人でも作曲家として活動出来たのである。ドイツの中東難民事情も垣間見ることが出来るが、やはりいろいろと大変そうである。ただこの映画はそういう社会問題を訴えるよりも、疾走するアクション映画になっている。まあ、僕には次に見た60年代ロックほどラップには熱くなれなかったけど。
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