佐川光晴「俺たちの故郷」は、「おれのおばさん」シリーズの「第一部完結編」と書かれている感動的な物語である。だまされたと思って手に取って欲しい本だけど、第1作「おれのおばさん」から読まないといけない。すぐに読める。話は完全に連続しているので(時系列的に「成長」していくので)、順番に読むべきシリーズ。このシリーズの第1作が出た時はまだブログを始めてなかったけど、第2作「おれたちの青空」、第3作「おれたちの約束」と紹介記事を書いてきた。今回も書かないわけにはいかない。
前に書いた記事から引用するけど、「おれのおばさん」は、「東京の名門私立中学に通う陽介は、父の逮捕をきっかけに一家離散。母の姉、恵子おばさんが切り盛りする札幌の児童養護施設「魴鮄(ほうぼう)舎」に居候することに…。「生きる力が湧いてくる!」と話題沸騰、感動の青春小説。」続く「おれたちの青空」は、「父親が服役中の陽介、虐待の記憶に苦しむスポーツ万能の卓也。魴鮄舎に暮らす仲間も高校受験を迎えている。受験を控えたある大雪の朝、卓也は「家出」を敢行するが…。人気シリーズ第2弾。」ということになる。
第3作の「おれたちの約束」では、主人公たちの世代は中学を卒業し、陽介は仙台の私立進学校に、友人の卓也はバレーボールの推薦で青森の強豪私立校に進学した。そこで起こる多くのドラマ、そして学園祭のさなかに起こった大地震と大津波。この大地震は現実の「3・11」とは時期や時間が違っている。原発事故の問題も出てこない。東北に起こった大地震というところだけは共通している。そのような環境で高校生活が始まった。
今回の作品では高校2年生になっていて、卓也が進学した青森大和高校は春高バレーを2連覇、卓也も日本選抜に選ばれ将来を期待されている。宮城県選抜チームとの震災復興支援のチャリティマッチが企画され、陽介も招待され出かけていく。久しぶりに卓也との再会である。という書き出し。ところが、その夜、魴鮄舎が無くなって今うかもしれないという知らせが届く。札幌市が耐震設計が十分ではない施設を閉鎖していくという方針を伝えてきたというのである。改築には少なくとも2千万円はかかるという。問題はどうも肝心の「おばさん」も継続する意欲を失っているらしいというのである。
施設を出て高校へ進んだ彼らにとって、帰るべき故郷はどこにもない。札幌の魴鮄舎以外にどこにもない。故郷がなくなるかもしれないと思って動揺する陽介と卓也。卓也はバレーにも力が入らず、気持ちも荒れていく。ついにバレー部を辞めるといって宿舎も出てしまう。陽介はどうするべきか…。という展開で、またまた友情と人生に関して、熱い感動の物語が進行していく。確かに、陽介の環境など「出来過ぎ」的な部分が多く、自分はここまで恵まれていない(恵まれている部分もあるけど)と思ってしまう部分も多い。このまま進めていくのも大変なのは判る気がする。ここで一端「中締め」は納得できる。次の一年は、普通に考えたら「受験勉強」だし。
この物語を支えているのは、「おばさん」の存在感である。「おばさん」の人生は、特に2作目で語られている。常に熱い思いで駆け抜けてきた人生だけど、今回振り返ると、漁師をめざし、医者をめざし、演劇をめざし、皆「挫折」してきたのも間違いない。その後にたどり着いた「児童福祉施設」である。だけど、人間そのものの持つド迫力で、恵まれない子供たちの「居場所」を作ってきた。その子供たちの方が、この小説では「おばさん」を引っ張るほどになっている。これが感動で、この小説は今の若い人にも、昔の若い人にも、是非読んで欲しい。「札幌に魴鮄舎があって、そこにおばさんがいる」というのは、もちろんフィクションだけど、それでもそのことを思うだけで生きていく力が湧いてくるようなシリーズである。陽介が大学生になって始まるだろう第二部が待ち遠しい。
前に書いた記事から引用するけど、「おれのおばさん」は、「東京の名門私立中学に通う陽介は、父の逮捕をきっかけに一家離散。母の姉、恵子おばさんが切り盛りする札幌の児童養護施設「魴鮄(ほうぼう)舎」に居候することに…。「生きる力が湧いてくる!」と話題沸騰、感動の青春小説。」続く「おれたちの青空」は、「父親が服役中の陽介、虐待の記憶に苦しむスポーツ万能の卓也。魴鮄舎に暮らす仲間も高校受験を迎えている。受験を控えたある大雪の朝、卓也は「家出」を敢行するが…。人気シリーズ第2弾。」ということになる。
第3作の「おれたちの約束」では、主人公たちの世代は中学を卒業し、陽介は仙台の私立進学校に、友人の卓也はバレーボールの推薦で青森の強豪私立校に進学した。そこで起こる多くのドラマ、そして学園祭のさなかに起こった大地震と大津波。この大地震は現実の「3・11」とは時期や時間が違っている。原発事故の問題も出てこない。東北に起こった大地震というところだけは共通している。そのような環境で高校生活が始まった。
今回の作品では高校2年生になっていて、卓也が進学した青森大和高校は春高バレーを2連覇、卓也も日本選抜に選ばれ将来を期待されている。宮城県選抜チームとの震災復興支援のチャリティマッチが企画され、陽介も招待され出かけていく。久しぶりに卓也との再会である。という書き出し。ところが、その夜、魴鮄舎が無くなって今うかもしれないという知らせが届く。札幌市が耐震設計が十分ではない施設を閉鎖していくという方針を伝えてきたというのである。改築には少なくとも2千万円はかかるという。問題はどうも肝心の「おばさん」も継続する意欲を失っているらしいというのである。
施設を出て高校へ進んだ彼らにとって、帰るべき故郷はどこにもない。札幌の魴鮄舎以外にどこにもない。故郷がなくなるかもしれないと思って動揺する陽介と卓也。卓也はバレーにも力が入らず、気持ちも荒れていく。ついにバレー部を辞めるといって宿舎も出てしまう。陽介はどうするべきか…。という展開で、またまた友情と人生に関して、熱い感動の物語が進行していく。確かに、陽介の環境など「出来過ぎ」的な部分が多く、自分はここまで恵まれていない(恵まれている部分もあるけど)と思ってしまう部分も多い。このまま進めていくのも大変なのは判る気がする。ここで一端「中締め」は納得できる。次の一年は、普通に考えたら「受験勉強」だし。
この物語を支えているのは、「おばさん」の存在感である。「おばさん」の人生は、特に2作目で語られている。常に熱い思いで駆け抜けてきた人生だけど、今回振り返ると、漁師をめざし、医者をめざし、演劇をめざし、皆「挫折」してきたのも間違いない。その後にたどり着いた「児童福祉施設」である。だけど、人間そのものの持つド迫力で、恵まれない子供たちの「居場所」を作ってきた。その子供たちの方が、この小説では「おばさん」を引っ張るほどになっている。これが感動で、この小説は今の若い人にも、昔の若い人にも、是非読んで欲しい。「札幌に魴鮄舎があって、そこにおばさんがいる」というのは、もちろんフィクションだけど、それでもそのことを思うだけで生きていく力が湧いてくるようなシリーズである。陽介が大学生になって始まるだろう第二部が待ち遠しい。