先週の金曜日、2学期最初の「読み聞かせ」があり、3年生のクラスに行ってきました。読んだのは、この本です。
『ウィンクルさんとかもめ』
エリザベス・ローズ 文 ジェラルド・ローズ 絵
ふしみみさを 訳
私がこの絵本を知ったのは今年の6月、海五郎さんのblog「わくわく本」の この記事からでした。図書館へリクエストを出そうかどうか迷っているうちに、今度は、フラニーさんのblog「みどりの船」でも、取り上げられていて‥。この間図書館へ行った時、「新刊」の棚に並んでいるのを、見つけることができました。(よかったです)
表紙をめくったところの見返しは、薄いブルー地に、かもめとさかなの線画が描かれていて、扉部分の絵には、色がついています。本文が始まる1ページ目と2ページ目は、色なし。めくって表われる3,4ページはカラーです。カラー、モノクロ、カラー、モノクロ‥その繰り返しで、色がつけられているところが、一番最初に目を惹かれたところでした。
邦訳されて出版されたのは今年の6月なので、とても新しい絵本ですが、ロンドンで出版されたのは、1960年。とてもとても昔からある絵本なのですね。それを知ってから絵をみたせいか、色あり、色なしの構成が、アンティークのオルゴールを思わせる「おしゃれ」な感じにも、見えてきたりして。(実際、描かれている人たちの服装も「おしゃれ」で、さかなやのジョックは、蝶ネクタイに白いシャツ、縞のエプロンに、帽子をかぶって、魚を売っています!)
自分が読みたくて借りてきた絵本なので、始めは、クラスで読むつもりはありませんでした。
でも、声に出して読んでみたところ、ひとりで読んでいるだけではもったいない「よさ」を感じ始め、それならば、予定に入っている3年生のクラスで読んでみようと思ったのでした。
私は、自分がこういう種類の「おはなし」を読むのが一番好きだなあと、いつも読みながら思うのですが。
すぐれたお話は、その始まり方がとてもしっかりしていて、最初の何行かに(あるいは最初の1ページに)、知っておかなくてはならない情報が、上手にまとめられています。
この話でも、主人公のウィンクルさんが「おんぼろのボートしか持っていない漁師」であることや、「仲間の漁師からは疎んじられていること」「かもめだけがともだち」であることが、漁師たちの会話によって、うまく伝えれています。
そんなあるひ、さかなが ぱたりととれなくなりました。
日常が、「非常事態の毎日」に変わっていく中で、お話は展開していき、もちろん最後は、誰もがほっと胸をなでおろすことができるハッピィーエンドで幕が閉じます。
ロンドン中から消えた魚は戻ってきて(もちろんそれを見つけたのはウィンクルさん)、おんぼろボートはきれいに塗り直されます。そして疎んじていた漁師仲間たちは‥
いまでは みんな むねをはって、こういいます。
「おれは ウィンクルさんと ともだちなんだぞ!」
めでたし、めでたしの最終場面は、日曜日の海辺(色つき)で、とてもきれいです。
3年生の心にはどんなふうに、このおはなしが届いたでしょう。なんで全部のページに色がついてないんだろう?と思った子もいたかもしれませんね。
お願いだから、動物(かもめ)に優しくしようとか、物を大切に(おんぼろボートでも大事にする)とか、どこからも教訓めいたことを引き出さずに、「よかった、よかった」の気持ちだけを覚えていてくれれば‥と思います。