先日「MAKIKYUのページ」で取り上げ、大糸線などを走る長野地区の観光列車「リゾートビューふるさと」ですが、今日は続編として車内の様子などを取り上げたいと思います。
「リゾートビューふるさと」で用いられるHB-E300系は、観光列車用に特化した車両だけあり、指定席としての運用ながらも、特急料金などの優等料金や、グリーン料金などの特別料金を必要とせず、指定席券さえ購入すれば普通乗車券をはじめ、割安な「青春18きっぷ」などでも乗車可能です。
しなしながら設備的には特急車両や、首都圏普通列車のグリーン車などと遜色ない回転式リクライニングシートを装備しており、車内設備面では、一般車両にしては極めて豪華な部類に入ります。
回転式リクライニングシートは、座席自体は特急普通車と同レベルながらも、向かい合わせでの利用でも窮屈さを感じない1200mmピッチで配置され、特急グリーン車に匹敵するスペックを誇ります。
HB-E300系登場以前に運転開始し、既存一般気動車を改造した仙台地区の観光列車用気動車「リゾートみのり」などのJR東日本における観光列車でも、全般的に座席空間のゆとりを重視し、長時間座席に座ったままでも快適に過ごせるように配慮されています。
観光列車の運行で定評あるJR九州では、観光列車の座席間隔こそさほど広くないものの、車内を某デザイナーが「魅せる空間」として徹底的にアレンジし、フリースペースなどを多く確保する傾向にあるのとは対照的ですが、今後もJRグループにおける観光列車運転実績ではJR九州と双璧をなすJR東日本では、この傾向が続くのか気になります。
フリースペースも「リゾートビューふるさと」ではJR九州の観光列車の様に、車内に本棚などを設置するといった変り種こそないものの、運転席背後はミニロビーや車内イベント開催スペースを兼ねた展望席となっており、前方or後方の車窓を楽しめる固定座席の他に、JR東日本ではJR他社と異なり、クロスシートでは余り好んで採用しないものの、観光列車では定番になりつつある「転換式ロングシート」も用意されています。
一方のフリースペースには乗車記念のスタンプと、列車の写真入りとなった押印用台紙が用意されている辺りも観光列車らしく、これもJR東日本の観光列車では定番になっていますが、南小谷行き列車では途中の穂高駅で観光列車らしく、長時間停車(30分弱)を利用した穂高神社への参拝案内もあり、観光列車の乗客が参拝に出向くと、菓子のサービス(スタンプ台紙の左側)があるのは意外でした。
他にも観光列車らしく、記念撮影用の日付入りボードや景色の良好な箇所での徐行運転(写真は徐行区間での車窓です)、車掌などによる放送案内や沿線観光協会など外部人による車内での催しは、JR東日本における観光列車の定番になっているものの、MAKIKYUの個人的な印象としては、今までJR東日本の観光列車はトップダウン型の傾向が強く、現場の乗務員によるソフト面でのサービスはイマイチ…という印象がありました。
しかしながら「リゾートビューふるさと」では「リゾートアテンダント」と称する客室乗務員が、状況に応じた観光案内などを行う他、専用紙製シートを手回しで回す事で、様々な楽曲を流せる特殊なオルゴールを用い、列車名にちなんで「ふるさと」の演奏を行うなど、現場側の乗務員自らが観光列車ならではの旅を盛り立てていたのも評価できる点で、今までのJR東日本における観光列車でソフト面での物足りなさを感じていたMAKIKYUとしては、JR東日本の観光列車も随分進化したと感じたものでした。
(ちなみにMAKIKYUが「リゾートアテンダント」の方から伺った話では、オルゴール演奏は外部人による車内イベントを行った際に、演奏者からの勧めで取り入れ、オルゴールを固定し、マイクに接続する木枠は手製との事です。)
また乗務されていた「リゾートアテンダント」の方は、観光列車の運転実績で定評あるJR九州の観光列車にも、乗客として乗車した事があり、JR九州における客室乗務員のサービスも高く評価していましたが、JR東日本の観光列車はJR九州の観光列車程の派手さはないものの、ハード面では座席のゆとりなどが大きく評価できるだけに、今後「リゾートビューふるさと」以外の観光列車でも現場の創意工夫により、ソフト面でも観光列車運転でJR九州と双璧をなす存在になる事に期待したいと感じたものでした。