先日JR九州が筑肥線の電化区間用に新型電車「305系」を導入する事を公式発表し、既に同社ニュースリリースなどで情報をご覧になられた方も少なくないかと思います。
(まだJR九州のニュースリリースを見ておらず、同社HPへアクセスされたい方は、こちらをクリックして下さい)
筑肥線の電化区間(姪浜~筑前前原~唐津)と、出入庫も兼ねて一部列車が延長運行される唐津線唐津~西唐津間は、電化区間の殆どが交流電化となっているJR九州では異例の「直流電化区間」となっています。
JR九州では国鉄から継承した交直両用の一般型電車・415系電車を今日でも多数走らせ、中にはJR東日本で余剰になった車両を後に購入した編成も含まれています。
しかしながら415系は、交直切替区間が存在する下関へ向かう列車に専属で充当する他は、専ら交流電化区間での運行となっており、中には交直切替区間を走る運用とは全く無縁の、鹿児島地区に転属した車両も存在しています。
そのため直流電化区間の筑肥線は、JR九州の他電化区間とは異なる直流専用車での運行となっており、現在福岡県内区間(筑前深江以東)の一部列車で相互直通運転を行っている福岡市営地下鉄の車両が充当される他は、JR九州に所属する2形式の直流専用車での運行となっています。
その中でも303系と呼ばれる車両は、JR九州発足後に導入され、某有名デザイナーの個性が光るステンレス製車両で、相互直通運転先の福岡市営地下鉄空港線内におけるワンマン運転にも対応しています。
しかしながら多数派を占める103系は、同系の中では最末期に導入された「1500番台」と呼ばれる車両ながらも、国鉄から継承した経年車で、基本設計は何十年も前のモノを踏襲していますので、エネルギー効率も芳しいとは言い難く、福岡市営地下鉄空港線内におけるワンマン運転にも対応していません。
おまけに近年では老朽化も災いしてか、時折車両故障も発生し、相互直通運転先の福岡市営地下鉄線内で車両要因による輸送障害が発生した際には、同局ニュースリリースでも「JR車両」と特記される程の有様ですので、筑肥線用に103系代替用車両の登場情報が流れても驚く事はなく、「やっと公式発表が出た」と感じたものでした。
新型車両305系は、現在発表されている概要を見る限りでは、現在JR九州の交流電化線区用に導入している最新型車両・817系を4扉直流電化区間用に設計変更した様に見受けられ、地下鉄直通用という事もあってか、車体断面はすそ絞りの幅広車体ではなく、ストレート断面になっているのも大きな特徴です。
(画像は導入告知記事から転載したものです)
前面は黒く塗られている事もあり、一見すると817系と大差ない車両の様にも見受けられるのですが、6両固定編成で前面貫通扉は専ら非常用という事もあってか、右側に寄せた配置となっており、灯具類は片側2灯ずつ設けられているヘッドライトの大きさが、同一サイズではなく異なっているのも大きな特徴です。
装いは交流電化線区を走る最新型車両・817系の中でも、一部では「白缶」などとも呼ばれ、最近福岡地区で導入されているロングシート車の2000番台(2両編成・写真)・3000番台(3両編成)と同様の真っ白な装いとなっていますが、ニュースリリースを見る限りでは外見だけでなく、白を基調とした車内も同番台に近似した雰囲気となっています。
しかしドア上には近年大都市圏の鉄道では一般的な装備になりつつあるものの、JR九州ではまだ装備車両が見受けられないLCDモニターによる情報案内装置が設置されています。
ドア脇にはこれまたJR他社では良く見かけるものの、JR九州では見る機会のない押しボタン式ドアスイッチが装備されている様に見受けられ、これらは今後更に導入されるであろう817系などにも採用されていくのか気になる所です。
また「白缶」とも呼ばれる817系2000番台・3000番台の座席は、木材をふんだんに活用し、車両内に様々な柄のモケットが見受けられるなど、非常に特徴的な反面、背もたれの腰が当たる部分には湾曲した板が露出しており、一部では「板切れ」「ベンチ」などと呼ばれるなど、賛否両論が激しく繰り広げられる「好みが大きく分かれる座席」です。
(写真は以前「MAKIKYUのページ」でも取り上げた817系2000番台の車内画像を再掲したもので、首都圏の標準軌某大手私鉄が近年導入している「ブカブカした感触の座席」などに比べれば、個人的にはまだ評価できる部類なのですが…)
MAKIKYUは日頃首都圏に身を置く事もあり、「白缶」とも呼ばれる817系2000番台と3000番台には、それぞれ1度ずつ乗車した程度で、頻繁に乗車機会のある車両ではありません。
白缶の座席に関しては、座面はまだしも背もたれに関しては…と感じ、都市圏における短距離列車なら許容できるとは言えども、長時間乗車には余り適さない印象があります。
(福岡都市圏にお住まいで、日頃白缶によく乗車されている方がこの記事をご覧になっている様でしたら、是非同車座席に関する見解を頂ければと思います)
福岡市営地下鉄空港線~JR筑肥線が運行している博多・天神~筑前前原や唐津間は、高割引回数券設定なども行っている昭和自動車の高速バス(いと・しま号/からつ号)とも競合しており、MAKIKYUもいと・しま号には1度乗車した事がありますが、JRはトイレ付きで定時制に優れているという強みこそあるものの、現状でもオールロングシートで設備面での見劣りが否めないと感じています。
その様な状況において、305系が白缶と同種の「板切れ」「ベンチ」などと呼ばれる「好みが大きく分かれる座席」を採用するとなれば、博多・天神~前原・唐津間などを移動する際に、今まで地下鉄~JRを利用していた客層の中に、この座席を敬遠して昭和自動車の高速バスに流れる事例も出てくるのでは…と感じます。
座席の見た目は白缶に類似している様に見受けられても、305系では木材をふんだんに活用した座席に、JR側が何らかの改良を施してくるのか否かも気になる所です。
個人的には305系の座席は余り期待できなさそうに感じているものの、JR九州は他では類を見ない独創的な車両を多数走らせているだけに、営業開始した暁には是非一度乗車してみたいものです。