平昌オリンピックを見ている。
少なからぬ選手が「見ている人に感動を与えられるような演技がしたい」と発言することに、違和感を感じつづけてきた。
そして実際にどの選手の演技(競技)にも、試合後のインタビューにも「感動」を感じることはなかった。
高梨沙羅選手の場合も、とにかくメダルを取れたことにホッとしたが、「感動」したかと問われれば、感動はなかった。
しかし、昨夜は違った。
私が仕事をする傍らで、女房は「まだ下位のほうだから・・・」とか言って、イモトの出るバラエティー番組を見ていた。
「もうそろそろ小平なんじゃない?」といって、チャンネルを回させると、何と画面はスタートラインに立つ小平を映しているではないか!
危ないところで、見逃すところだった。
スケーティング自体は、言うことはない。一つだけ、「フライングを取られなくてよかった」と思った。
号砲の前に、一瞬、彼女の腕が動いたように見えた。
しかし、感動は試合の後にやって来た。
2位に終わり、3大会連続の金メダルを逃して、打ちしおれていた李相花(イ・サンファ)選手に、小平が滑り寄って、一言二言語りかけた。
イ・サンファは韓国国旗を掲げ、小平奈緒は日本国旗を背中に羽織るように掛けていた。
何を言ったのかはわからないが、小平の言葉に李(イ)はいったん涙で顔を崩し、しかしその後は笑顔に戻った。ずっと。
いつか阻まれる連勝記録であれば、小平に阻まれたことは本望ではなかったか。2人は仲の良いライバルであると、後の報道で知った。
この大会で初めて、いな、最近のスポーツ大会で久しぶりに「感動」した。
挫折を経験した者でなければできない振舞いであろう。小平のような「勝者」にふさわしい振舞いを見て、つくづくスポーツはいいものだと思った。
最近のオリンピックはマスメディアその他の商業主義に毒されて、見苦しい限りで興味を失いつつあったが、捨てたものでもない、と少し思った。
2018・2・19 記
PS そういえば、敗れた羽生善治名人の、藤井さんに対する言葉も好感をもてた。そもそも「さん」づけがいい。