佐賀の旅第4日目(4月21日)のつづき。
佐賀城を後にして、佐賀の中心地を散歩しながら、呉服元町の交差点に出る。
ここから、通り沿いに古い歴史的な建築物が保存された柳町の街並み(「佐賀市歴史民俗館」と呼ばれている)を歩く。
小径に入って最初に目についたのが、赤レンガ、2階建ての洋館。旧古賀銀行である。
1階が「浪漫座」というレストランになっていたので、最初はレトロなレストランかと誤解して通り過ぎてしまった。下の写真は、その浪漫亭の側からみた旧古賀銀行の建物。
その隣りが旧古賀家、古賀銀行の創業者の邸宅である。
立派な門構えで、平屋の住居も立派(※実は二階建てだったらしい)、その庭も立派である。武家屋敷風の町家とある。古賀家はもともとは両替商だったというから、佐賀藩のころから長崎街道に面した佐賀の地は経済的に豊かだったのだろう。しかし、三代目の時に大正恐慌に見舞われ、休業に追い込まれたという。
次も銀行で、「旧三省銀行」という看板と、「三省社」と書いてある銘板が並んでいた。「三省社」は佐賀藩士によって設立され、「銀行類似業務」を行なったと紹介がある。明治期の銀行業のことはわからないが、信用金庫か相互銀行のようなものだろうか。こちらは明治26年に廃業したという。「武士の商法」だったのか。
その次は「旧牛島家」。佐賀城下に残る町家建築の中で最も古い建物とある。この家は商家だったらしく、板の間に座った商人が土間の来客に対応するような作りになっていた。
最後に、さっきは素通りしてしまった「旧古賀銀行」に戻ってきた(冒頭の写真が正面玄関)。レンガ造り、二階建ての堂々たるたたずまいである。
内部も、磨かれた木の床に、マホガニー造り(?想像で書いてます)の階段や手すり、天井からはシャンデリアが下がり、応接セット、グランドピアノなども置かれていて、優雅な雰囲気を醸している。
吹き抜けになった二階の回廊から階下を眺めると、下の写真のようになっている。
12時少し前だったが、この一階の一角で営業している「浪漫座」でランチをとることにした。
ぼくはオムカレーとスープを注文。あまり食べたことのないユニークな盛り付けと、やわらかい味のカレーだった。文明開化時代のレシピだろうか。
本当はこの他にも数軒の古い建築物があるのだが、道端に立つ道しるべによると、この3軒が代表的な建物らしく、旧古賀銀行で十分に堪能したので、あとは省略した。
昼食を終えて、徒歩で佐賀駅にもどる。
「旧長崎街道」という表示のある細い道を抜け、駅に向かう大通りに出る。「大財通り」(おおたから)と書いてあったように思う。
道端に何か所か、銅像が2体ずつ並んでいる。佐賀出身の著名人らしい。森永製菓の創業者と江崎グリコの創業者の像が並んでいたが、写真を誤って消去してしまった。これが一番われわれにもポピュラーな佐賀県人だったのだが。森永の創業者は唐津の出身で、伊万里の駅前にも銅像が立っていた。ぼくが子どもの頃はグリコの本社は佐賀にあったような記憶がある。グリコの懸賞を佐賀宛てに応募した記憶があるのだが。
下村湖人の像を載せておく。初日に吉野ヶ里に向かう車窓からも、下村湖人記念館の案内を見た(なお、左隣りの銅像は田澤義輔)。※下村は(吉野ヶ里に近い)現在の神埼市の出身だった。
下村の「次郎物語」は中学生の頃に児童文学全集の一巻本(リライト版)で読んだが、あまり面白くなかった。しかし、「次郎物語」には思い出がある。中学3年生の時に級友の家に遊びに行って、NHKテレビの夕方の番組で放送されていた「次郎物語」を一緒に見ていたら、友人のお母さんが泣くので(号泣に近かった)困惑したという思い出である。ぼくの記憶に間違いがなければ、1964年にNHKテレビで放映されたはずである。主演は太田博之ではなかったか(当時のこの手のドラマは大体彼が主演だった)。
※心配になってネットで調べると、NHKテレビ「次郎物語」は、確かに1964~5年にかけて100回余にわたって放映された連続ドラマで、主人公役は池田秀一だった。映像もあって、「一人ぽっちの次郎は歩く ゆらゆらゆらゆら陽炎のなか・・・」という主題歌も思い出した(不正確な記憶だったけど)。里子に出された主人公の少年が周囲の人たちからいじめられるのだから、友人のお母さんが泣くわけである。
日ざしがきつい中を佐賀駅に戻り、初日にも入った駅ビル内のコーヒーショップで時間をつぶし、お土産の丸芳露(まるぼうろ)を同じ駅ビル内の北島で買う。子どもの頃に、佐賀の親戚がよく手土産に持ってきてくれた。ぼくの大好物だった。今でも美味しい。
14時40分発のリムジンバスで、佐賀駅前から佐賀空港へ。
15時30分発、ANA981便に乗り、17時30分に羽田着。気流のせいで少し揺れ、到着もやや遅れた。しかも到着ゲートからかなり遠いところに着陸し、バスで移動しなければならなかったので、18時15分の石神井公園行きリムジンに辛うじて間に合って帰宅。
こうしてぼくの “nostalgic journey” 佐賀編(第1回)は終わった。
今回の旅であたりはつけたので、次回は嬉野を中心にレンタカーを借りて回ってみたい。元ゼミ生で唐津出身の学生が、福岡空港から海岸線を走る列車で唐津に入るのが一番景色がいいと言っていたので、次回はそのルートで行ってみよう。
父方の祖母の実家があった彦根も行ってみたい。六角精児の「呑み鉄、日本旅」で近江鉄道の沿線を旅しているのを見たが、風情のある町だった。
2023年4月27日 記