最近のBSミステリーチャンネル(253ch)では、“バーナビー警部”シリーズをやっている。
“バーナビー警部”ものは、やたらと連続殺人が起きたり、どの事件でもバーナビー本人や奥さんや娘が絡んでいたりで、どうしても不自然さを拭いきれないのだが、イギリスの片田舎の風景と、それを背景にして走るクルマを眺めるだけでよいという気持ちで見ている。
バーナビーと部下のトロイが乗っている警察車両らしい紺色のフォードも、“主任警部モース”の真っ赤なジャガーのような不自然さがない。
先週の“バーナビー警部”は、“旧友の縁”という題で、バーナビーの娘の学生時代の旧友の間で起きた連続殺人事件の話だった。
ストーリーは例のとおりだったのだが、バーナビーの娘の乗っているクルマが、シトロエン2CVだった。
以前に見た“モース警部”の中で、大学職員の女性が愛人との密会のモテルに乗りつけたのも2CVだった。イギリスのミステリーでは、シトロエン2CVはどうもそういう記号として描かれるらしい。
外装は、チャールストンというやつと同じだが、えんじ(ピアノ・レッドというらしい)と黒のツートンカラーではなく、なす紺と水色のツートンだった。
シトロエンは、近くチャールストンの復刻版風の“シトロエンC3 プリュリエル”を出すらしいが、こんなカラーも悪くない。
ただし、最近の自動車不況のなかで、こんなクルマが日本で販売されるのかどうかは怪しくなってきたのではないだろうか。
2、3日前も、朝日新聞に「フィアット経営危機」なんて見出しが載っていたし、昨年末以来、ヨーロッパでもクルマが売れないという記事は頻繁に掲載されている。
昨年の11月3日付の朝日新聞には、「欧州自動車 減産相次ぐ」という見出しの記事があった。欧州でも車が売れないので、ルノーやプジョー・シトロエン(PSA)が1~2週間の操業停止を決めたり、VWが2万6000人、BMWが8000人の人員削減を表明したという。
この記事には、ルノーの工場前で、操業停止に抗議する従業員たちが入構しようとする車両をピケを張って阻止する写真がついているのだが、このクルマのフロント・グリルには、しっかりと“VW”のバッジが写っている。
運転しているのがルノーの従業員かどうかは分からないが、ルノー工場に向かう関係者がVWに乗っているとは、まさに「語るに落ちる」ではないか。
日本でも、トヨタの部長クラス(+役員)2000名が、トヨタ車を購入することにしたという報道があったが、「何を今さら」の感がある。
以前、“モーターファン別冊355号 新型ヴィッツのすべて”の開発者座談会の中で、ヴィッツ開発に当たった担当者の紹介欄に、彼らの乗っている愛車が紹介されていたが、チーフ以外は、ゴルフⅤだのランクルなどとなっていて、誰もヴィッツなどには乗っていない。
作った本人たちが乗る気もない車を作っていたのでは、ヴィッツはそこそこ売れるかもしれないが、本当にいいクルマにはならないだろう。
「会議室で作られる」車(沢村慎太朗『スーパーカー誕生』文踊社参照)なのである。開発に携わった人たちは、自分が開発した車に乗って、自分自身でその車をモニターして改良の努力をするべきではないだろうか。
30年来のカローラ愛用者としては、トヨタの部長がセカンド・カーとしてIQを買うよりも、自分の作った車に乗ることのほうが大事なことだと思うのだが・・・。
* 写真は、“バーナビー警部”(ミステリー・チャンネル)に登場したシトロエン2CV。字幕画面にしたため、拉げてshort & wideになってしまった。背が高いのが2CVの特徴なのに・・・。