NHKの朝6時ころのラジオ番組で<きょうは何の日?>というのをやっている。
その日(今日なら8月31日)に起きた歴史的な事件を5、6件、簡単なエピソードを添えて紹介する番組である。
それにならって、1888年のきょう8月31日に起きた歴史的事件から。
牧逸馬『浴槽の花嫁』で紹介した19世紀末ロンドンの<切り裂きジャック>事件の、最初の殺人事件が起きたのが、1888年8月31日(金曜日)だった。
きょう、仁賀克雄『ロンドンの恐怖--切り裂きジャックとその時代』(ハヤカワ文庫、1988年、1994年2刷)を読んでいて、偶然この日付に出会った。
切り裂きジャックはヴィクトリア女王時代のロンドンの貧民街、イースト・エンドで1888年に起きた連続娼婦殺人事件だが、その最初の事件がこの日の午前3時ころに起きたという。
解剖場面で描写される被害者の服装が、きょうの東京の暑さからは想像もできない厚着である。「赤褐色のアルスター・コート、褐色の麻毛混紡のドレス、黒いウールの靴下、フランネルとウールのペチコート各1枚、褐色うねり織りのコルセット1着」とある(44頁)。
訝しく思ったが、著者によると8月の末ともなるとロンドンの夜は涼しく、夜間の気温は11、2度しかない、日本でいえば秋の終わりくらいの寒さを感じるという。
北海道、滝川に住む知人が、1週間ほど前に、滝川は朝晩は肌寒く毛布を掛けてねていると言っていた。北海道とロンドンの緯度は同じくらいだから、同じような「寒さ」なのだろう。
今度はNHKラジオの「世界の気温」を気をつけて聞いてみよう。※注
この日を皮切りに(ちょっとショッキングな比喩か)、同年11月9日に第5の事件が起きるまでに、売春婦を被害者とする惨殺事件が5件連続して発生し、それ以降はぱったりと止むことになる。殺害方法や殺害後の陵虐行為からみて同一犯による犯行と考えられている。
仁賀氏は「日本でただ一人のリッパロロジスト」と紹介文にある。
「切り裂きジャック」をめぐっては多くの著書が書かれているようだが、ぼくは仁賀氏のこの本と牧逸馬のほかには、コリン・ウィルソン(&ロビン・オーデル)の『切り裂きジャックーー世紀末殺人鬼は誰だったのか?』(徳間文庫、1998年)を持っているだけである。
結局犯人が逮捕されなかったために、推理作家や犯罪研究者の想像力を刺激し、様々な憶測による執筆を可能にしたのだろうが、「リッパロロジスト」まで存在するとは恐れ入った。ちなみに「リッパロロジスト」とはコリン・ウィルソンの造語だそうだ。
この本にも引用されているが、この事件はたんなる猟奇的犯罪というだけでなく、ヴィクトリア朝時代を象徴する事件としても関心をもたれているようだ。
明治5年に岩倉使節団の一行が、先進国イギリスの影の部分であるイースト・エンドの貧民街を視察したことが紹介されている(38頁)。自国の恥部も後進国日本に紹介するとは、さすがイギリスである。
8月はMY「怪奇小説月間」ということで、最終日の書き込みにふさわしいかどうか。
この本を最初に読んだのも、1994年8月5日と巻末の余白にメモがあった。
※ 昨夜(正確には今日9月1日の深夜0時台)、0時50分にチェロ(?)が奏でる“ミスター・ロンリー”が流れて“ジェット・ストリーム”(東京FM)が終わったので、チューニングをNHK第1に回すと、ちょうど「世界の天気」をやっていて、きょうのロンドンの気温は「最高気温17℃、最低7℃」と言っていた。午前3時だったら最低気温の7℃に近いだろうから、これくらい衣装を着こんでいてもおかしくはない。(9月1日 追記)
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8月31日ということで、2020年8月31日、きょう限りで閉園した<としまえん>について書こうと思ったが、写真が見つからなかったので、断念した。
昭和30年ころに、近所のおばさんに連れて行ってもらって、ロバだかポニーだかに乗った記憶がある。写真もあったように思う。場末のぬかるみのようなところに粗末な柵が設けられていて、その前で撮った写真だった。恐らく当時の<としまえん>だったと思う。
その後も、子どもが小学生の頃までは何度かプールに泳ぎに行ったが、その後は30年近く行っていない。
ところで、西武線の「豊島園」の駅名はどうなるのだろうか? 東横線の「都立大学」や「学芸大学」のように、大学は移転しても駅名は残るのだろうか。そういえば、小田急線の「向ヶ丘遊園」駅は遊園地がなくなった今でも駅名はそのままである。
豊島園近辺には西武のお偉いさんが住んでいるので、豊島線がなくなることは絶対にないと、豊島園(駅)から通っているおばさんが言っていた。真偽のほどは分からないが。
2020年8月31日 記